音楽ナタリー PowerPush - りぶ

みきとP&大石昌良が解説する“歌い手・りぶ”の進化

ネット発の歌い手として着実に人気と実力を積み重ねてきたりぶが、約1年ぶりとなる3rdアルバム「singing Rib」をリリースした。

今作には大石昌良(Sound Schedule)やフルカワユタカ(ex. DOPING PANDA)、沖井礼二(TWEEDEES、ex. Cymbals)など、りぶが影響を受けたミュージシャンたちが楽曲を提供。さらにはみきとPによる「サリシノハラ」「ヨンジュウナナ」の続編となる「アカイト」や、人気ボカロ曲のカバーに加え、自身が初めて作詞作曲を担当した新曲「singing」も収録される。

ナタリーではアルバムのリリースを記念して、りぶ、みきとP、大石昌良による鼎談を実施。世代や活動のフィールドの異なる三者に、新作について、そして歌い手としてのりぶの成長についてを語り合ってもらった。

取材・文 / 柴那典

実現するべくして実現した組み合わせ

──大石さんは今回のアルバムでりぶさんに初めて曲を提供したわけですけれど、これはどういう経緯で実現したんでしょうか。

大石 知り合いのレコーディングエンジニアさんから話をもらったのが始まりです。「りぶくんっていう歌い手が曲を書いてほしいって言ってるんだけど、大石くん、最近忙しい?」って言われて。「いや、やりますよ! むしろりぶくん知ってますよ!」みたいな話になって。それで今回の「不可侵領域デストロイヤー」っていう曲を書かせていただくことになったんです。

──りぶさんから楽曲提供をお願いしたんですね。

りぶ

りぶ そうですね。もともと高校時代にSound Scheduleを聴いていて、その頃から大石さんのファンだったんです。

大石 で、僕はニコ厨なのでりぶくんのことを知ってたんですよ。歌い手としてトップクラスの人なのも知ってたから、まさか自分にオファーがくるとは!って思って。もちろん、みきとPさんのことも前から知ってました。

みきとP マジですか!?

大石 そうそう。だから今回の鼎談は必然的に実現したと僕的には思ってますね。

環境が大きく変わった2014年

──みきとPさんは1年前に発表した前作「Riboot」のときにナタリーの特集(参照:りぶ「Riboot」リリース記念特集 りぶ×40mP×みきとP鼎談)に登場していただいたんですが、最後に「2014年の抱負は?」と聞いたときに「先のことは考えてない」と言っていて。

みきとP あ、そうだ。そんなこと言ってましたね。

──どうでしょう、それから1年を振り返って。

みきとP 僕自身の2014年は人生の中で一番音楽に没頭していた年でしたね。自分のアルバムも出せたし、「音楽活動だけをする」という夢がようやく叶った1年だったというか。

──りぶさんはどうですか? 2014年はどういう1年でした?

りぶ 僕も環境としては大きく変わった1年だったように思います。1月に2ndアルバムの「Riboot」をリリースして、その後も11月に人生初のワンマンライブをやらせていただいて。活動のステージとしてはインターネットのアンダーグラウンドな感じからメジャー寄りになってはいると思うんですけど、でもやっぱり歌うときの心境は特に変わることはなくて。そういった変わらないという感覚を得た意味でも、いい1年だったなって思います。

──みきとPさんはりぶさんの変化をどう見ていましたか?

みきとP りぶくんに関しては、やっぱりすごく表現の幅が広がってると思いますね。最初に書き下ろした「サリシノハラ」は、今聴くといい意味でシンプルな歌なんです。でも、次の「ヨンジュウナナ」から今回の「アカイト」にかけてどんどん成長していて。りぶくんの“本当の声”が出てる印象があるというか。

りぶ うれしいです、ありがとうございます。

──大石さんも2014年はソロとしての新しいスタートもありましたね。

大石 そうですね、「オーイシマサヨシ」名義でアニメソングを本格的に歌い始めたのがここ最近なので。特に2014年は「月刊少女野崎くん」というアニメのオープニングで「君じゃなきゃダメみたい」という曲の作詞作曲とアレンジをして、それが世の中に広まったのが大きかったですね。それがきっかけでりぶくんからも今回のお話をいただいたんです。

りぶ もともと好きだった大石さんが、最近はアニソンの世界で積極的に活動されているのを知って、僕も曲を作ってもらいたいと思って恐縮しながらオファーさせていただいたという。

りぶとみきとPのルーツにあるSound Schedule

──今回のアルバムでは大石さんだけでなくフルカワユタカさんや沖井礼二さんも曲を提供していますが、これもりぶさんのルーツだった方たちですか?

りぶ まさにそうです。今回のアルバムは特に、自分が高校とか大学のときに聴いていた音楽がよりフィーチャーされている感じですね。1枚目のアルバムはボーカロイド曲が多くて、そもそも書き下ろしの曲も少なかったし、歌い手として活動を始めた頃に受けた衝撃が表れていた感じだったと思います。以降はりぶという歌い手が小中高、大学と自分がどう育ってきたかにフォーカスする作品になってきている気はしますね。自分がこれまで聴いてきた音楽のバックグラウンドがにじんでるというか。

大石 そうそう、初対面のときに「どんな音楽聴いてたの?」って聞いたら、「SUPER BUTTER DOGとか聴いてました」って言うんですよ。「ええっ!? そういう音楽も聴いてたんや!?」って思いましたからね。でも、サウスケを好きだって言ってくれたこともあって、僕が書いてもいいんだって思いました。僕はボカロPじゃないし、ニコニコの文化圏に片足を突っ込んだ新参者だったけれど、りぶくんが新しい世界に誘ってくれたっていう。

みきとP 実は僕のルーツもそうなんですよ。Sound ScheduleもSUPER BUTTER DOGも聴いてたんで。そこはりぶくんと同じですね。

りぶ マジですか? すごいうれしい。

大石 けっこう、ボカロPの人でサウスケ聴いてくれてたって人、多いんですよ。こないだbuzzGさんにも「聴いてました」と言われました。

みきとP あの、実は僕は大石さんとは距離的には近いところにいたんですよ。Sound Scheduleって出身は神戸でしたよね?

大石 神戸ですね。

みきとP 実は僕ももともと神戸でバンドやってたんですよ。と言っても僕が神戸でバンドを組んでいたのは、Sound Scheduleが神戸で活動していた何年もあとだったんですけど。

大石 え、マジ!? ちょっと待って、はよ言うて、それ(笑)。

──ははは!(笑) 実は大石さんは地元の先輩だったんですね。

みきとP そうなんです。だから今日、すごい緊張してます。

大石 そうなんだ。なんかうれしいな。ほんとね、最近そういうつながりを感じるんですよ。

──大石さんとしても、こういうつながりはやっぱりうれしいですか?

大石 そりゃもう、めちゃくちゃうれしいです。自分が発信したものが次の世代に伝わって、またそれがその次の世代に伝わっていくというのは。ぶっちゃけ14年間、順風満帆に音楽だけやってきたわけではないですけど、それでも音楽を続けてきてよかったなって思いますね。

ニューアルバム「singing Rib」 / 2015年2月4日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD2枚組] / 3240円 / VIZL-773
通常盤 [CD] / 2484円 / VICL-64284
iTunes Storeにて先行配信中!
CD収録曲(共通仕様)
  1. アカイト [作詞・作曲:みきとP]
  2. 不可侵領域デストロイヤー [作詞・作曲:大石昌良]
  3. ダヴィンチの告白 [作詞・作曲:666]
  4. センチメントリバース [作詞・作曲:TOKOTOKO(西沢さんP)]
  5. 恋愛裁判 [作詞・作曲:40mP]
  6. ノストラの終末論 [作詞・作曲:buzzG]
  7. 虎視眈々 [作詞・作曲:梅とら]
  8. 朝焼けの狙撃手 [作詞・作曲:沖井礼二]
  9. ショコラと隕石 [作詞・作曲:monaca:factory]
  10. キミの心拍数 [作詞・作曲:スズム]
  11. 共犯者 [作詞・作曲:カラスヤサボウ]
  12. 独りんぼエンヴィー [作詞・作曲:koyori]
  13. チョコレート・ホリック [作詞・作曲:minato]
  14. エンゼルフィッシュ [作詞・作曲:パトリチェフ]
  15. プラスティックレィディ [作詞・作曲:フルカワユタカ]
  16. singing [作詞・作曲:りぶ]
初回限定盤特典 LIVE CD収録曲
  1. エンヴィキャットウォーク
  2. プロパガンダ
  3. トビウオの夢
  4. 気まぐれスターダム
  5. サリシノハラ
  6. ピエロ
  7. ラストラスト
  8. なれのはて
ワンマンツアー
Rib-on"e" ~「singing Rib」Release Party~
2015年2月24日(火)愛知県 Zepp Nagoya
2015年2月26日(木)大阪府 なんばHatch
2015年3月4日(水)東京都 Zepp Tokyo

チケット一般発売日:2015年2月7日(土)10:00~

インストアイベント
アニメイト 発売記念弾き語りイベント「singing Live」
2015年2月21日(土)福岡県 アニメイト小倉店
2015年2月21日(土)広島県 アニメイト広島店
2015年2月22日(日)大阪府 アニメイト大阪日本橋店
2015年2月22日(日)愛知県 名古屋市内某所
2015年3月1日(日)北海道 ノルベサ 3階イベントスペース
TSUTAYA 発売記念イベント「singing Rib」発売記念トーク&サイン会
2015年2月28日(土)東京都 某所
タワーレコード発売記念イベント「singing Live at CUTUP STUDIO」
2015年2月28日(土)東京都 タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIO

チケット一般発売日:2015年2月7日(土)10:00~

りぶ

動画共有サイトを中心に活躍する男性シンガー。音域の広い透明感のある歌声が特長で、歌唱動画の総再生回数は2000万回以上を記録するなど高い人気を誇る。2014年1月にリリースされた2ndアルバム「Riboot」はオリコンウィークリー2位を獲得し、ネットシーン以外でも着実に知名度を獲得する。2015年2月には3rdアルバム「singing Rib」をリリースした。

みきとP(ミキトピー)

ボーカロイドを使用したオリジナル曲を動画サイトで発表するボカロP。「小夜子」のような心を揺さぶるシリアスなギターロックから、330万再生を超える人気曲「いーあるふぁんくらぶ」のようなアッパーなディスコポップまで、幅広いタイプの作品を発表している。またボカロPとしての活動のほか自身が歌った動画の投稿も行っている。2014年11月には自身2枚目となるオリジナルアルバム「GOOD SCHOOL GIRL」をリリースした。

大石昌良(オオイシマサヨシ)

愛媛県宇和島市出身のシンガーソングライター。大学の軽音楽部の仲間である川原洋二、沖裕志とともに1999年に結成したSound Scheduleでボーカル&ギターを担当する。2006年にSound Scheduleが解散してから、2008年にシングル「ほのかてらす」でソロデビュー。2011年にはSound Scheduleの5年ぶりの復活でも話題を呼んだ。2012年1月に通算3作目のソロアルバム「31 マイスクリーム」、2013年2月に4thアルバム「マジカルミュージックツアー」を発表。