ナタリー PowerPush - RAM WIRE

鉄拳と語るパラパラマンガPV制作秘話

デビューシングル「歩み」が映画「僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.」の主題歌に抜擢され、話題になったRAM WIRE。このシングルに続く待望の新作ミニアルバム「名もない毎日」には、何もない平凡な日でも、大切な人がいるだけで幸せなんだという、大切だけど忘れがちなことをしっかりと思い出させてくれるタイトル曲をはじめ、センチメンタルな楽曲を6曲収録している。

この「名もない毎日」のビデオクリップは、パラパラマンガ「振り子」で話題となったお笑い芸人、鉄拳が制作。今回の特集では、実は初対面というRAM WIREと鉄拳の貴重なクロストークをお届けする。

取材・文 / 吉田可奈 撮影 / 高田梓

メンバー全員が号泣した「振り子」がコラボのきっかけに

──RAM WIREの3人と鉄拳さんは、既にもう仲良しなんですよね?

ユーズ(Vo) いや、実は今日が初対面なんですよ。

──ええ!? 記念すべき初対面なんですね。

鉄拳 はい。かなり緊張しています(笑)。

インタビュー風景

──では、その新鮮な空気のまま、対談と行きましょうか。今回は、RAM WIREの「名もない毎日」のビデオクリップを鉄拳さんに依頼したことから2組がリンクしたそうですが、なぜ鉄拳さんにお願いすることになったんですか?

RYLL(Trackmaker, DJ) 鉄拳さんが手がけたパラパラマンガ「振り子」を観て、メンバーみんなが号泣したんですよ。

MONCH(Vo) あのパラパラマンガの中で繰り広げられる物語と、途中で主人公の男性が、愛する人のために時間の振り子を止めようとするシーンがあるんですが、そこに衝撃を受けて、これが才能なんだなって思ったんです。 

──この「振り子」のアイデアは昔からあったものなんですか?

鉄拳 ひとつの動きだけでなく、その中に何かが動いているのがいいなって思ったんです。それなら振り子を時間に例えて、その中で物語を展開させたら面白いかなって思ったんですよね。

ユーズ すっごく、ロマンチックですよね。

鉄拳 いやいや、あれは言ってしまえば結構「あるある」ですよね(笑)。

──それ言っちゃダメでしょ(笑)。

鉄拳 いやいや、ホントに(笑)。「ビー・バップ・ハイスクール」とか、昭和の時代によくあったような話を描いていて……。まあ、ベタだけど、いいものはいいものだな、って思ったんですよ。

MONCH 確かにベタだと思いましたけど(笑)、振り子を主人公のおじいちゃんが必死に止めようとしたところで号泣しました。

インタビュー風景

ユーズ 時間を止めたくても止められない、というところが切ないよね。

──ユーズさんはあんなふうに思ってくれる男性を旦那様にしたいと思いませんか?

ユーズ 思う、思う! あ、でも「振り子」の主人公の男性は奥さんが病気になってから奥さんの大切さに気付いて、更生するんです。それまでは浮気をしたり、家庭を顧みなかったりとひどい感じですよね(笑)。だからそのことに気付いている男性と結婚したいですね(笑)。

──あのやんちゃな男性のリアルな描写は、鉄拳さんに通じるものがあるからこそ、あんなにリアルに描かれていたんですか?

鉄拳 え!? そんなことないですよ! 僕は浮気もしないですし! 彼女もすごく大切にするタイプですよ! ……多分(笑)。僕は、いろんなことに気付いたあとの男性と同じタイプです。僕は優しいです!

初めて聴いたとき、電車の中でボロボロ泣いた

──「名もない毎日」には、鉄拳さんのパラパラマンガのテイストがピッタリ合うと思った上での依頼だったんですね。

RYLL そうですね。とはいえ、かなり「振り子」が話題になっている時期だったので、ダメ元でお願いしたんです。そしたらOKをいただけたので、すごくうれしかったんです。

鉄拳 実は当時、20本くらいのビデオクリップの依頼をいただいていたんですよ。それらの中にももちろん素敵な曲がたくさんあったんですが、この曲はほかのどの曲よりも共感したんですよね。

──鉄拳コンペの優勝者なんですね。

鉄拳 そうです! 優勝です!

RAM WIRE おおおー!

──元々この曲は、どんな思いで作られたんですか?

ユーズ この曲は最近作ったんですが、私たちの普段から思っている軸となる部分を歌っているんです。毎日普通に生活しているだけでも凹むことだらけで、息詰まることも多いんですよね。でも、そんなときに身近で支えてくれる人がいるだけで、実はすごく勇気付けられるし、がんばれるんです。その人たちとの些細な会話だけで救われることも多いんですよ。実は、がんばろうって思いは、すべてそこに尽きると思ったんですよね。

インタビュー風景

鉄拳 僕自身、この曲を聴いたとき、その部分にすごく共感したんです。ため息ついたり、うまくいかないことについて言い訳をしたり……。これはミュージシャンだけじゃなくて、芸人にも当てはまるんですよね。何かにつけて言い訳するんですよ。タイミングが良ければとか、環境が良ければとか。でも、そういうふうに言っている自分の中には嘘がつけない自分もいて、自分で自分をカッコ悪いな、って思うことの連続なんです。だから自分を重ねて聴いたら、電車の中だったのにボロボロと泣いてしまって(笑)。その瞬間に、この歌は僕のパラパラマンガ関係なしに、いい歌だから売れてほしい!って思ったんです。

ユーズ すごくうれしいですね、本当に……!

鉄拳 それに、皆さん今まですごく苦労していると伺っていたんですよ。それは歌詞から伝わってきたし、僕も不遇の時代が長かったので、一緒にがんばりたいと思ったんですよね。

RAM WIRE ……(シーン)。

鉄拳 え? 苦労していますよね(笑)。

ユーズ し、してます、してます! なんか感動しちゃって。

鉄拳 よかった、苦労してない人なのかと思いました(笑)。

CD収録曲
  1. 名もない毎日
  2. Vernally
  3. ALIVE
  4. Lies
  5. 歩み
DVD収録内容
  • 名もない毎日 Music Video
  • 歩み Music Video
RAM WIRE(らむわいやー)

ユーズ(Vo)、MONCH(Vo)、RYLL(Trackmaker, DJ)の3人からなるユニット。2001年、千葉のクラブを拠点にユーズとMONCHの2人で活動を開始し、2005年よりRYLLが加入する。その後はライブや自主制作盤のリリースなどを中心として活動を展開。2008年にはRAM WIREと並行してトラック制作を続けていたRYLLの楽曲が、Spontania feat. JUJUのシングル「君のすべてに」としてリリースされる。これがきっかけとなりRAM WIREも大きな注目を集め、2010年にミニアルバム「Beautiful World」でメジャーデビューを果たす。2011年9月リリースのシングル「歩み」は映画「僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.」の主題歌に起用されてスマッシュヒットした。2012年6月、ミニアルバム「名もない毎日」を発表。タイトル曲のビデオクリップはお笑い芸人・鉄拳によるパラパラマンガで構成され、話題を呼んでいる。

鉄拳(てっけん)

1997年にデビューしたお笑い芸人。スケッチブックに自筆したイラストを用いたネタで人気を呼び、数々のテレビ番組やライブを中心に活動する。卓越したイラストとストーリーテラーとしての腕前を生かしたパラパラマンガ家としても活躍しており、テレビ番組の企画で制作された作品「振り子」はパラパラマンガの域を超えた感動作として海外からも注目を集めた。