音楽ナタリー Power Push - 平井拓郎(QOOLAND)×三浦隆一(空想委員会)対談

平井拓郎(QOOLAND)

三浦隆一(空想委員会)

インディーズとメジャーシーンで邁進中 それぞれが考える音楽の届け方

クラウドファンディングでファンとの距離が縮まった

──今回の新作「COME TOGETHER」は、歌モノのロックアルバムとしてバランスの取れた作品になりましたね。

平井 ありがとうございます。メンバー全員、満足の1枚になりました。

──今作の話題の1つとして、音楽専門のクラウドファンディングサイト・muevoで制作費の一部を調達したことがあります。クラウドファンディングをしようと思ったきっかけは?

平井 レコード会社との契約を切ったんですよ。なので、制作資金を自分たちで捻出する必要がありますけど、どちらかといえば資金集めというより、「お客さんと一緒に発売日を迎えたい」って気持ちが先立ってました。アルバム制作のためのクラウドファンディングをやると発表した時点で、新作が出るという情報自体が解禁されるわけだし。そこからお客さんと一緒に走っていって、ともに発売日を迎えることで、みんなが喜んでくれるんじゃないかと思ったんですよね。

──一体感が持てるようなイベントに近い考え方であると。

平井 はい。ファンに「私、このアルバムに参加したんだよ」っていう気持ちになってもらいたくて。もちろんクラウドファンディング自体は資金集めのツールなんだけど、変な話、資金は二の次でしたね。支援してくれるファンの気持ちにパワーを与えられたというか。

──目標金額が80万円で結果的に集まった金額は200万円ですが、それだけじゃ制作費のすべてはまかなえないですよね。

平井 もろもろの諸経費を考えると200万では足りないですね。

──アルバムの制作費を調達する場合、おおざっぱに言って3つのやり方がありますね。レコード会社など特定のスポンサーに出してもらう、自分たちだけでまかなう、そして今回のクラウドファンディングのような形。今回のアルバムを作るときの心構えとしてはこれまでと何か違いはありましたか?

平井 そうですね……去年はレコード会社から制作費が出ていたので、作品に向けるエネルギーはクラウドファンディングに比べると劣っていると感じましたね。レコード会社から出すといろんな人間が関わってくるので、それをまとめるのがすごく大変だなって。

──音楽を作ることよりも、さまざまな調整に労力を取られたと。

平井 もちろんお世話になりましたし、いろいろやっていただきましたが、しんどいときもけっこうありました。僕らはレコード会社を離れたあとすぐだったので、新作を作るにあたってクラウドファンディングがタイミング的には丁度よかったなって。

──自前で資金を調達しようという気はなかったんですか。

平井 もちろんその選択肢が根底にはありました。ただ、普通にリリースすることを発表して普通に発売日を迎えるという、従来の自分たちのやってきたやり方で新作を出しても盛り上がりそうなイメージが湧かなくて。今回はそうではなくて、発売日を迎えたときにファンにはこれまで以上にものすごく喜んでほしいと思って。ただ、クラウドファンディングって「他人にすがるな」とか批判的な考えもありますよね。そのへんの気持ちを「セレクト(うーっはーっ!)」って歌で書いてます。どっちかを選んでどっちかを捨てていかなきゃいけないという。

活動を支えるスタッフ、ファンの力

──一方で空想委員会はメジャー契約して活動されてますが、ご自分たちの制作態勢に関しては現状どんな感じですか。

三浦 空想委員会は長いこと自主でやっていて、当時は当たり前ですが自分たちでお金を出し合って作ったものを流通させてました。でもメジャーになったからといって、ただお金を出してもらってるという感覚はないです。担当の人が空想委員会をどう広めるかを真剣にやってもらってるのが伝わるんです。売れたぶんの儲けがあれば会社もうれしいし僕らもうれしい。目的が一致してるので、理想的な態勢だなと思ってやってます。

──自主でやってたときと比べて心構えや制作態勢はそんなに変わらない?

三浦 そうですね。最初に自主でやってたのはよかったと思ってて。お金は無尽蔵にあるわけじゃないって知ってるし。予算内でちゃんとやりたいという意識はありますからね。

平井 メジャーバンドだけど今もインディー感というか自主っぽいイメージがありますよ。

三浦 え、ほんと?(笑)

平井 チープって意味じゃなくて、自分たちがやりたいことをやれてるんだろうなっていう。レコード会社のフィルターみたいなものを感じさせないなあと。

三浦 レコード会社と事務所のパワーバランスがいい感じで保たれてるからだと思うよ。

平井 僕らから見るとそれがすごくうらやましいし、カッコいいと思う部分ですね。言ってみれば、自主の活動の体制を崩さずにメジャーデビューできているわけで。

三浦 メジャーに行くことを目的にやってきたわけじゃないからね、そもそも。自主でやってたときに足りなかった部分をメジャーで補っている感じかな。業務提携みたいな形でね。自主だと圧倒的に宣伝が弱いので、メジャー行きはそこを補ってくれる素晴らしいパートナーが見つかったからってイメージ。

──CDが売れない時代になり、メジャーに行くことのメリットが改めて問われている時代だと思うんですが、宣伝・広告力がその1つ。

三浦隆一(空想委員会)

三浦 そうですね。自分たちを世に広めたいと思ったら、レコード会社にはその道のプロがいるので。その点は自主とは全然違いますね、規模感が。空想委員会に関しては担当の人の「いいバンドなんだから絶対広がる」っていう熱意が伝わってくるし、とてもありがたいですね。

──最終的には人と人との関係性ってとこに落ち着く。

三浦 それがないときついよねえ。

平井 そうですね。

QOOLAND ニューアルバム「COME TOGETHER」2015年12月9日発売 / 下高井戸レコード
[CD] 2376円 / STRD-1002
収録曲
  1. Come Together
  2. Shining Sherry
  3. セレクト(うーっはーっ!!)
  4. ある事無い事
  5. 一つの法則
  6. ループは止まった
  7. 言えない人が言えてたら
  8. 叫んでよ新宿
  9. ラストセンサー
  10. ゆとり教育概論
  11. Today Today Today & Yesterday
QOOLAND(クーランド)

QOOLAND

2011年10月14日に新宿で結成。平井拓郎(Vo, G)、菅ひであき(B, Cho)、タカギ皓平(Dr)、川﨑純(G)からなる4人組ロックバンド。2013年5月に初の全国流通盤となるフルアルバム「それでも弾こうテレキャスター」を自主レーベル・下高井戸レコードからリリースした。同年、アマチュアバンドコンテスト「RO69JACK 2013」でグランプリを獲得。2015年の夏にはクラウドファンディングを使用した「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」を実施。目標額を大きく上回る200万円の資金調達に成功し、フリーライブを行うなどしてファンを喜ばせた。また全国各地で自主企画「大平和祭り」を開催し、Suck a Stew Dry、ircle、LEGO BIG MORL、空想委員会、cinema staff、オワリカラといったバンドを招いての対バンライブを展開。2015年12月9日にクラウドファンディングの資金をもとに制作したファン参加型の2ndフルアルバム「COME TOGETHER」をリリースする。

空想委員会(クウソウイインカイ)

空想委員会

三浦隆一(Vo, G)、佐々木直也(G)、岡田典之(B)からなる3人組ロックバンド。ときに儚く、ときに毒々しい、リアルな歌詞が高い共感を呼んでいる。2011年にリリースしたインディーズデビュー作「恋愛下手の作り方」がタワレコメンに選ばれ、一気に知名度を上げた。その後もハイペースでCDをリリースし、各地のイベントやフェスに出演。2014年2月にはゲスの極み乙女。との共同ツアーを開催して話題を集めた。2014年6月にキングレコードから「種の起源」をリリースし、メジャーデビュー。2015年2月に東京・Zepp DiverCity TOKYOでバンド史上最大規模のワンマンライブを行い、7月にはミニアルバム「GPS」を発表した。その後多数の夏フェス出演を経て、9月には東京・日本武道館でPerfume主催のライブイベント「Perfume FES!! 2015 ~三人祭~」に参加。12月6日に両A面シングル「僕が雪を嫌うわけ / 私が雪を待つ理由<完全限定生産>」を発売する。