音楽ナタリー Power Push - 三月のパンタシア

ボーカルみあ&コンポーザー証言で紐解く「あのときの歌が聴こえる」の世界

個性の異なるコンポーザーたちが生み出す楽曲群

──みあさんが感じる、すこっぷさん、40mPさん、ゆうゆさん、buzzGさん、n-bunaさんという5人のコンポーザーの方の魅力どんなところでしょうか?

「七千三百とおもちゃのユメ」ビジュアル

すこっぷさんの描く健気でピュアな女の子像がとても好きですね。サウンドにも歌詞にも色濃く出ていて、歌っているときは浄化されていく思いがします。ゆうゆさんが表現する少女性とその哲学的世界観もとても好きですね。端々に見える少女のメランコリックな部分と、繊細なところをすごく独特に描いていて。心がつかまれますね。40mPさんの曲に登場する交わらない思いに葛藤する女の子の心の叫びも胸を打ちます。きらきらしているけど、切なくて素晴らしいです。buzzGさんの曲はとにかくピュアでエモーショナル。少女の青さゆえの勢いというか、あの時期にしか生まれないエネルギーの表現が大好きですね。n-bunaさんは、独特な歌詞世界とエモーショナルなサウンドがたまらなくカッコよくて。触れたら崩れ落ちちゃうような、少し不安定な危うさがあるんです。でもそれがどこか妖艶で。敬愛する素晴らしい方々の曲を歌えて幸せですね。

──「あのときの歌が聴こえる」に収録されている楽曲の歌詞には「君」もしくは「あなた」という自分以外の誰かが必ず登場しています。曲によって対象は異なると思いますが、歌うときにどんな人の顔を思い浮かべていますか?

歌の内容とまったく同じ経験ではないにしても、似た経験をしたときに見つめていた人の顔を浮かべたり、もう思いっ切り妄想の世界の中で、そこにいてほしい人と自分を投影してその中で歌っています。この曲を楽しみにしてくれているリスナーの皆さんにこの感情を伝えたい、というところからイメージ作りが始まって、どんどんそのビジョンが鮮明になっていく感じですね。

夢を見続けさせてくれるプロジェクト

──「あのときの歌が聴こえる」というタイトルにちなんで、もしみあさんが「あのとき(過去)」に戻れるとしたらどのときに戻りますか?

「星の涙」ビジュアル

そうだな……中学生の頃に戻って、ギターの練習を始めたもののFのコードが押さえられなくてあっさり挫折した自分に、続けるように言いたいです(笑)。そしたら今頃ライブで披露できるくらい、ギターがうまくなっていたかもしれないので。

──「あのときの歌が聴こえる」にみあさんがキャッチフレーズを付けるとしたら?

難しいですね……「あなたの物語とつながる空想世界」とか、どうでしょうか? 三月のパンタシアが奏でる終わりと始まりの物語と、あなたの心の中に眠っている物語とが、楽曲を通してつながれたらいいなあという思いを込めて。

──三月のパンタシアの楽曲や世界観には、全体的にノスタルジックで青春の匂いが漂っているように感じられます。みあさんは三月のパンタシアの楽曲や世界観をどのように捉え、解釈していますか?

「ブラックボードイレイザー」ビジュアル

特に思春期の女の子が感じる「三月の春になる前の季節」に流れる淡くて青い感情、その儚さや刹那のきらめきを大切に歌っています。きらきら美しくて、どこか懐かしくて、ふと泣けてくるような。そんな世界観を楽しんでもらえたらいいなという思いで歌っています。

──三月のパンタシアはみあさんにとってどんなプロジェクトですか?

夢を見続けさせてくれるプロジェクトだなと思います。歌うことが好きという気持ちだけで始めて。そんな自分の歌がいつしか誰かの支えにもなれていて。自分の表現したものが誰かのためのものになっていると思うと、胸がいっぱいになるんですよ。本当に夢のように素晴らしいことで、何よりものすごくうれしくて。その喜びを味わいたいからまた歌いたいと思うし、もっともっとたくさんの人とつながっていきたいとも思うんです。だからライブもやりたいし、この夢が叶ってもまた新しい夢ができるだろうし……ずっと夢を見続けていくんだろうなと思っています。

──三月のパンタシアとしての今後の展望や夢を教えてください。

「シークレットハート」ビジュアル

今回これまでの集大成としてのアルバムがリリースできて。これから先は新たなステージに進みたいなと思っています。皆さんと音楽を通じてもっと距離を縮められる機会も増やしたいですね。今みんなであれこれ作戦会議中なので、ぜひ楽しみに待っていてもらえたらと思います。

──最後に音楽ナタリー読者にメッセージをお願いいたします。

最後まで読んでくださってありがとうございます。自分もナタリーのいち読者として、今回特集を組んでもらえたことが本当に光栄です。「あのときの歌が聴こえる」は、最高のアルバムになったと胸を張って言えるような自信作品になりました。ぜひお手に取ってもらえたらうれしいです。よろしくお願いします。

1stアルバム「あのときの歌が聴こえる」 / 2017年3月8日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+Blu-ray Disc] / 4104円 / KSCL-2858~9
通常盤 [CD] / 3240円 / KSCL-2860
CD収録曲
  1. いつかのきみへ
  2. はじまりの速度
  3. day break
  4. フェアリーテイル
  5. イタイ
  6. 青に水底
  7. 群青世界
  8. 七千三百とおもちゃのユメ
  9. 星の涙
  10. ブラックボードイレイザー
  11. シークレットハート
  12. あのときの歌
初回限定盤Blu-ray収録内容
  1. はじまりの速度 -Music Video-
  2. 群青世界 -Music Video-
  3. フェアリーテイル -Music Video-
  4. ブラックボードイレイザー -Lyric Video-
  5. シークレットハート -Lyric Video-
「あのときの歌が聴こえる」収録曲ミュージックビデオ
三月のパンタシア(サンガツノパンタシア)

「終わりと始まりの物語を空想する」をコンセプトに、ボーカルのみあを中心に結成されたプロジェクト。コンポーザーとしてすこっぷ、n-buna、ゆうゆ、40mP、buzzG、イラストレーターとして浅見なつ、loundraw、bob、ノベリストとしてみのりが名を連ねる。2015年8月に活動を開始し、2016年6月にテレビアニメ「キズナイーバー」エンディングテーマであるシングル「はじまりの速度」でメジャーデビュー。2016年12月にOVA「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」のオープニングテーマ「群青世界」を、2017年2月にテレビアニメ「亜人ちゃんは語りたい」のエンディングテーマ「フェアリーテイル」をそれぞれシングルとして発表している。2017年3月にメジャー1stアルバム「あのときの歌が聴こえる」をリリース。