ナタリー PowerPush - Perfume Clips

関和亮が語るPV制作の裏側

「I still love U」

──「I still love U」のビデオはどういう経緯で作られたんですか?

関和亮

シングル曲ではないので映像を作る予定はなかったんですけど、アルバムに特典映像として入れたいって言われたんです。まあ特典であれば普通のミュージックビデオを作ってもしょうがないよなって思って。3人からは「白い世界の中で歌う私たちをきれいに撮ってほしい」っていうリクエストがあったので、それはわかりましたと。でも、ただきれいに撮ってもしょうがないよねって言って、「足つぼを押されながら歌うのはどうですか?」って提案したらすごく面白がってくれたんです。何回か撮ったから、けっこう痛かったと思うんですけどね。

──あ、1テイクじゃないんですか。

5、6テイクぐらいやりました。足つぼの先生が「足つぼは押せば押すほど痛くなる」って言ってて(笑)。ほぐれて指が奥まで行くんで、最後はかなり痛かったみたいです。でも怒られはしなかったですね。一応僕が「大丈夫、健康になるから」ってフォローしてたので(笑)。

──足つぼが加わったことで、すごくPerfumeらしい遊び心がある映像になったと思います。

すごくゆるいビデオにしようって3人からアイデアが出て、けっこうゆるい企画がたくさん挙がってきましたよ。「私たちがひたすらひよこを選別してるビデオにしたい」とか(笑)。確かにゆるいけど、オスかメスかの正解がわかりにくいし難しいから却下しました(笑)。3人と打ち合わせしてると、突拍子もないアイデアが出てきたりとか、なるほどって思うことを言われたりするので楽しいですね。

「不自然なガール」

2010年4月14日リリース「不自然なガール / ナチュラルに恋して」通常盤ジャケット

──PVにバックダンサーがいるというのは「不自然なガール」が初めてですよね。

この曲のビジュアルを考えるときに「不自然なことってなんだろう」ってずっと考えていて。ふと「セットが全部人間だったら気持ち悪いな」っていうのを思いついて。例えばこの机が実は生きた人間だったり。最初はそれで1つ部屋を作ろうとしたんですよ。でもそれは大変だなっていうことになって。じゃあ人間が壁の一部を持ってて、そういう人が何十人も出てきて背景を作るっていうのはどうかなって思ったんです。だからダンサーというか、僕的にはセットなんですよ。

──あ、なるほど。

Perfumeって基本的には3人しかステージに出てこなくて、ライブもビデオも3人だけで踊るんですけど、そういう形でダンサーを入れるなら面白いかもって言ってくれて。だからMIKIKO先生とも「Perfumeがダンサーを従えてるように見える振り付けにしない」っていう話をして、先生もそれをすごく気にしてましたね。ダンスというよりマスゲームみたいな感じで。初回限定盤のジャケットにもなってるオブジェは、パネルを折ってたらなんか面白い形ができたので、これいいなと思ってセットを作ってもらいました。

──メンバーの雰囲気はどうだったんですか?

3人も自分以外の人がビデオに出演するのが初めてだったから、チームで一丸になって撮影してましたね。これをやってるときは本当に楽しかったです。このときもみんな「最終的にどうなるんだろう?」って思いながらやってたと思うんですよ。よくみんなやってくれたなって思います。

「VOICE」

2010年8月11日リリース「VOICE」通常盤ジャケット

──「VOICE」もかなり撮影に苦労したと聞きました。

まずメンバーから「いろんなことにチャレンジして、1つずつクリアしていくようなビデオを作りたい」っていう話が出たんです。だからそのまんま、いろんな困難に挑んでもらおうかなと。

──PV撮影をゲーム感覚でやるという。

そうですね。ある意味、罰ゲームなんじゃないかって感じですけど(笑)。その上でちゃんとビデオとして成立するように、いろいろ考えましたね。3人のダンスは止まったときの形がきれいっていう特徴があるので、そこをどういじわるできるかなって考えたときに、あの壁抜けのシーンを思いついたんです。

──あのシーンは難しそうですね。Perfumeじゃないとなかなかできないのでは。

彼女たちなら意外と簡単にできるかなと思ったら、あのワンカットを撮るだけで3時間くらいかかっちゃって。時間も限られてるので「あと3回だけやろう」とか「できなかったら別のものに差し替えます」って言ってたんですよ。ムリなものはムリなので、そこはシビアに。それで最後にやっとできたので、すごくホッとして、あ~ちゃん泣いてましたね(笑)。

──完成した映像だけ観ると、楽々とこなしてるように見えますけどね。

成功してるところだけ映せばどうしてもそうなっちゃいますよね。でもYouTubeが普及してから、観る側のビデオの観方って変わってきたと思うんです。バックグラウンドとかサイドストーリーを読み取ってくれる人が増えたというか。それは昔のミュージックビデオにはなかった感覚で。今はビデオを観た人が「うわ、大変なことしてる!」ってびっくりして、ざわざわと口コミが広がることもあると思うんです。

──なるほど。OK Goが世界的に話題になったのは、まさにそういう流れでしたよね。

そうですね。今、素人のファンの方で、このビデオを完全にコピーした動画をアップしてる人がいるんですよ。振りもまったく同じで。そういうことをやりたくなるって、作ってるほうとしてはすごくうれしいですよね。

「レーザービーム」

──「レーザービーム」は東日本大震災の影響でPV撮影が中断して、当初ショートバージョンしか作ることができなかったと聞きました。

撮影中に地震が来たんです。ほんの少ししか撮れてなかったんですけど。カメラを回してる最中だったから、実は地震の瞬間とかも映ってて。撮影スタジオってそんなに強度がある建物じゃないから、あのときは本当に怖くて、でも3人をなんとか外に出そうってことを必死で考えてました。

──これはほかのPVと比べてもかなり豪華なセットを組んでいる印象があったので、そういう意味でも撮影を中断したのはダメージが大きかったのでは。

本当にそうでしたね。でもあの時期、地震とか原発とかいろいろな問題がある中でエンタテインメントの世界の人たちがどうやって発信していくのか悩んだのと同じように、僕らもPerfumeもすごく考えてて。それで、CDリリースのタイミングではとりあえずあるものだけでショートバージョンを作るけど、あとでまだ撮ってなかったシーンを撮影させてもらって、最後まで完成させようってことにしたんです。

──追加した後半部分はすごくコミカルな雰囲気ですが、最初からイメージしていた通りの内容なんですか?

そうですね。「序盤はまじめなんだけどラストはクスっと笑えるようにしよう」っていうのは、最初にストーリーラインを考えたときのままです。震災があったからコミカルな感じになったんじゃないかって前にも言われたんですけど、全然そんなことなくて。Perfumeって、広島弁での素朴で面白いトークも魅力だと思ってるので、あんまりカッコつけすぎるのはよくないんじゃないかっていつも思ってるんです。だからクールでストイックに始まって「てへっ(笑)」って終わるほうが、Perfumeらしさが出るんじゃないかって。

──確かに。

あと、この曲は「微かなカオリ」と両A面になることが決まってたので、2つのストーリーをつなげたいというのもあったんです。2つのビデオに同じアイテムが出てくるとか。一応「レーザービーム」での3人はスパイっていう設定なんですけど、「微かなカオリ」は任務が終わった3人が、スーツを脱いでオフを楽しんでるというイメージで。

Perfume「Perfume Clips」 / 2014年2月12日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
Perfume「Perfume Clips」初回限定盤ジャケット
Blu-ray / 初回限定盤 [Blu-ray Disc 2枚組] / 6300円 / TKXA-1020
DVD / 初回限定盤 [DVD 3枚組] / 5250円 / TKBA-1200
Blu-ray / 通常盤 [Blu-ray Disc] / 4725円 / TKXA-1021
DVD / 通常盤 [DVD 2枚組] / 3675円 / TKBA-1201
収録内容
  1. リニアモーターガール
  2. コンピューターシティ
  3. エレクトロ・ワールド
  4. チョコレイト・ディスコ
  5. Twinkle Snow Powdery Snow
  6. ポリリズム
  7. Baby cruising Love
  8. マカロニ
  9. シークレットシークレット
  10. love the world
  11. Dream Fighter
  12. ワンルーム・ディスコ
  13. I still love U
  14. 不自然なガール
  15. ナチュラルに恋して
  16. VOICE
  17. ねぇ
  18. レーザービーム -FULL Ver.-
  19. GLITTER
  20. スパイス
  21. 微かなカオリ -TV Ver.-
  22. FAKE IT
  23. チョコレイト・ディスコ -Historical Live Act Version-
初回限定盤 特典DISC
  • Perfume Clips 4倍速オーディオコメンタリー
  • マカロニ -A-CHAN Version-
  • マカロニ -KASHIYUKA Version-
  • マカロニ -NOCCHI Version-
  • I still love U -ネタばらしVersion-
  • 微かなカオリ -縦型Version-
  • TV-SPOT集(25種類)
関和亮(せきかずあき)

1976年生まれの映像作家。1998年より株式会社トリプル・オーに所属。2004年にPerfumeのシングル「モノクロームエフェクト」のジャケットを制作したことを皮切りに、PerfumeのPV監督やアートディレクションを手がけるようになる。その後、数多くのアーティストのビデオクリップ制作に携わり、2010年に公開されたサカナクション「アルクアラウンド」のPVは「第14回文化庁メディア芸術祭」のエンターテインメント部門優秀賞や「SPACE SHOWER Music Video Awards」のBEST VIDEO OF THE YEARを受賞。フォトグラファーやグラフィックデザイナーとしても活動し、NHK連続テレビ小説「おひさま」「ごちそうさん」のタイトルバックを手がけるなど幅広い活躍を見せている。

Perfume(ぱふゅーむ)

あ~ちゃん(西脇綾香)、かしゆか(樫野有香) 、のっち(大本彩乃)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsuleの中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。10月にアジア4カ国で行われた初の海外ツアーは大成功のうち終了し、翌2013年にはヨーロッパ3カ国での単独公演を実施。フランス・カンヌで開催された世界最大の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に日本人アーティストとして初めてゲストとして招待され、プロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスで喝采を浴びる。同年10月にアルバム「LEVEL3」、11月にシングル「Sweet Refrain」をリリース。12月に東京ドーム、大阪・京セラドーム大阪にて計4日間の単独公演を成功させた。2014年2月には初のビデオクリップ集「Perfume Clips」をリリース。