音楽ナタリー Power Push - PENGUIN RESEARCH

不確かな未来を照らす「スポットライト」

“好きなものはいつまでも好き”を歌った「boyhood」

──そんな表題曲から一転して、今お話に出たカップリング曲の「boyhood」は青春パンク的なギターロックです。イントロの「せーの!」が男臭くてのっけからアガりますね。

新保 そこはメンバー全員で同じブースに入って録ったんですけど、予想以上に男子校ノリになっちゃって。

堀江 ものすごい野太い声になったよね(笑)。

──この「boyhood」は、ライブを重ねた経験を踏まえて、ライブ映えする曲を作ったのかなと思うくらい勢いのある曲ですね。サビも「さあ皆さん、シンガロングしてください」と言わんばかりですし。

堀江 まさにその通りで、この曲は4月に行ったツアーの最中にライブで感じた「バンドって楽しいな!」っていう感覚を曲にしてみようと思って書いたんです。そのバンドも音楽も含めて、“好きなものはいつまでも好き”っていう原点に立ち返って、「boyhood」=少年期という曲名の通り、少年の心で作った曲ですね。

──と同時に、例えばAメロのサビの「馬鹿げた夢さえ 捨てきれずに ここまで来たんだよ 戻れないよ」という歌詞からは、PENGUIN RESEARCHの現在を歌っているようにも。

生田 僕もそれを強く感じながら歌ってます。「戻れないよ」っていうのが、なんか自分の……。

──もう高知に帰るわけにはいかない?

生田 はい。夢を捨てきれずに僕は保育士を辞めてここまで来たし、その過程でいろんな人の思いを背負っていることに気付いたんで、もはや自分1人の問題ではなくなっている。だから絶対に戻れないっていう。特にラストのサビの「馬鹿げた夢さえ 捨てきれずに どこまで行くんだよ もう知らねえよ」は、ほとんど自分に向かって歌ってますね。

  • 生田鷹司(Vo)
  • 生田鷹司(Vo)

──最後の「もう知らねえよ」はシビれました。

堀江 あそこはいいニュアンスが出ましたね。

レコーディングは全員上裸で

──そのラスサビ前の間奏では、ギターとドラムが大暴れしてますね。

神田 ええ、暴れさせてもらいました(笑)。「スポットライト」の主役がピアノなら、「boyhood」の主役はギターなので、「ようやく俺の出番か」という感じで。

新保 僕はもともとメタル畑出身なんですけど、PENGUIN RESEARCHではツーバスをあんまり踏まなかったんです。特に露骨な16分のベタ踏みは、音楽性に合わないので。でも今回、初めて踏んでやりました(笑)。自分の好きなプレイを全部出したいなって思って。

──お二人共リミッターを解除した感じですね。

新保 レコーディングのとき、全員が上裸になって録ったんです。絵面だけ見るとけっこうヤバい(笑)。

神田 形から入ろうと。でも、2~3テイク録ったら寒くなってみんな服を着だすっていう。

柴崎 でもジョンさんのテイクは、上裸で録ったやつが一番ドライブしてた。

──「boyhood」はギターが主役とはいえ、ピアノの音も効いてますよね。例えばBメロのスタッカートはギターとうまく絡んでいて聴いてて気持ちいいです。

柴崎 この曲は、純粋に弾いてて楽しかったです。さっきも言ったように「スポットライト」ではプレッシャーを感じていたんですけど、この曲はパンクロックなので、はっちゃけて。ギターソロの終わりに肘でぐしゃぐしゃっと弾いてみたり。

──ジャズピアニストの山下洋輔さん的なクラスター奏法。

柴崎 名前も同じ洋輔なので(笑)。

──あ、ほんとだ!(笑)

  • 柴崎洋輔(Key)
  • 柴崎洋輔(Key)

堀江 この曲でピアノにツッコんでくれるのは、すごくうれしいです。というのも、実はピアノ入れないで、もっとシンプルな曲にする選択もあったんですよ。そこであえてピアノを入れたのは、例えばポストパンクやニューウェイブのバンドって、意外とバンドサウンドにピアノやバイオリンが入ってたりするじゃないですか。しかも決して添え物ではなく、ガンガン主張してくる形で。あの一見ミスマッチのようなバランスが昔から好きで、それを今回やってみようと思ったんですよね。

物語を読み聞かせるように歌った「八月の流星」

──「スポットライト」はピアノが、「boyhood」はギターがそれぞれ主役だとしたら、3曲目の「八月の流星」はおそらく歌が主役の曲だと思うのですが。

生田 「八月の流星」は、歌詞にストーリー性があって、晶太からは「ある男が、昔恋をしていた女性と再会するんだけど、彼女は幼い子の手を引いていて……」みたいなバックグラウンドを最初に説明してもらったんです。でも、僕にはそんな経験がないから、この曲は気持ちをリンクさせるというよりは、物語を読み聞かせるような意識で歌いました。

堀江 僕も鷹司に自分を重ねてもらうよりは、ストーリーテラーになってくれればいいと思ってました。こういうストーリー性のある曲って、自分が主役になる必要はないし、このシチュエーションの通りに受け取ってもらわなくてもいいんです。ただ、生きてると、幸せな気持ちと寂しさが同居する瞬間がある。それを書きたかったんだなと自分でも思っていて。

──例えば、大学時代に付き合ってたけどその後音信不通だった女の子とたまたまFacebookでつながって、しばらくしたらタイムラインに「無事出産しました」みたいな報告がいきなり飛び込んできて動揺するみたいな。

堀江 やけに具体的ですね(笑)。そういうときって、自分もうれしいし、相手にも幸せになってほしいけど、同時に寂しくもある。

──はい。僕もその出産報告に、震える手で「いいね!」しました。

堀江 その切なくも温かい感じを出したかったがゆえのストーリーになったし、歌うときもそのストーリーを丁寧に読んでほしいと鷹司には伝えました。

ニューシングル「スポットライト」 / 2016年6月8日発売 / SME Records
期間生産限定アニメ盤 [CD+DVD] / 1600円 / SECL-1912~3
通常盤 [CD] / 1300円 / SECL-1911
CD収録曲
  1. スポットライト
  2. boyhood
  3. 八月の流星
  4. スポットライト(instrumental)
期間生産限定アニメ盤 DVD収録内容
  • スポットライト
  • TVアニメ「マギ シンドバッドの冒険」ノンクレジットOP映像
ALL OFF presents「Never Gave Up Release Tour!!」
2016年6月26日(日)東京都 LIQUIDROOM
出演者 ALL OFF / SCREEN mode / PENGUIN RESEARCH / BACK-ON / Fo’xTails
SEIZE THE DAY presents「今を生きる vol.0 powered by BARKS」
2016年6月27日(月)東京都 TSUTAYA O-WEST
出演者 SEIZE THE DAY / LASTGASP / PENGUIN RESEARCH
Penguin Go a Road 2016 ~東奔西走腹滑り~
2016年9月3日(土)愛知県 池下CLUB UPSET
2016年9月19日(月・祝)大阪府 梅田Zeela
2016年9月22日(木・祝)東京都 吉祥寺CLUB SEATA
PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)

PENGUIN RESEARCH

生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴崎洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に初のワンマンライブを東京・新代田FEVERにて開催した。3月には6曲入りミニアルバム「WILL」をリリース。6月にアニメ「マギ シンドバッドの冒険」のオープニングテーマ「スポットライト」を収録したシングルを発表する。