MAH(SiM)が語る「アウトレイジ 最終章」|信念を貫く男が、命を懸けるとき

ナチュラルさが怖い

MAH

「最終章」は皆さんの演技があまりに自然だから、どこまでセリフが決まってるのかも気になりました。昔の極道映画って「おどれ!」みたいな“ザ・台詞”ってイメージがあったんですけど、「アウトレイジ」シリーズは「この人本当にこういうこと言いそうだな」と思わせるリアリティがあって。たけしさんも、ここにきて演技が自然体になってきましたよね。オープニングの大友と(大森南朋演じる)市川が釣りをしているシーンなんかはすごくナチュラルで、それが逆に怖かった。あとは北野監督の手法なのかわからないですけど、「アウトレイジ」って1つひとつのカットが長いですよね。セリフを言い終えて、もう次のシーンに移っていいんじゃないかってところをちょっと続けるじゃないですか。

──確かに。あの余白が「何か起こるんじゃないか」という緊張感を生みますよね。

そうそう。でも何が起きるわけじゃないから、最初はそれがちょっと不思議でもあったんです。けどそれが最近の映画っぽくなくていいのかなという気もするし、それに耐えられる演技ができているのもさすがだなと思います。

「本当にとんでもない」と感じた俳優は

──シリーズを通して、特に気になった登場人物はいますか?

MAH

そうだなあ……(「最終章」のパンフレットを開きながら)こうやって見ると、皆さん総じて「こんな悪い顔してたっけ」って思いますよね。意外なキャスティングが見事にハマっているのがアウトレイジのすごいところで。あんなに優しいイメージだった加瀬亮さんが、「ビヨンド」では狂ったインテリヤクザですから。「最終章」で言えば大杉漣さんだって、堅気だったわりにはガラ悪いですよね(笑)。ドスが効いててカッコよかったなあ。

──大杉さんが地面に埋められるシーンも、今作の目玉の1つですよね。

「そっちか!」と思いました。撮影怖かっただろうなあ。後ろを振り返れないっていうのがめちゃくちゃリアルで。「そうだよな、埋まってんだもんな」って(笑)。あ、マル暴(警視庁組織犯罪対策部)の刑事役の松重豊さんもよかったですね。

──松重さんは予告編に登場した際には、「『孤独のグルメ』にしか見えない」と一部で話題になっていました。

(笑)。でもいい役柄だったと思います。前作までマル暴にいた小日向(文世)さんが強烈だったからその後釜は大変だろうなと予想してたんですけど、わりとどストレートな感じで。出演時間も決して長くはないけど、印象に残りますよね。でもやっぱり、シリーズ通して圧倒されたのは西野を演じる西田敏行さんですね。ちょっとなんか、格が違う。

映画「アウトレイジ 最終章」より、西田敏行演じる西野。

──西田さんのすごむ表情が画面いっぱいに映るシーン、ずっと観ていられますよね。

本当にとんでもないと思います、俳優として。シリーズがスタートして7年、西田さんが参加された「ビヨンド」からも5年が経って、皆さん当然歳を取ってるじゃないですか。でもパワーは増しているのがすごい。西田さんのここ(目の下を押さえながら)、どうなってんだろうと思いながら観てました(笑)。

「アウトレイジ」は世界の縮図

──かつて大友が所属していた山王会を取り巻く状況はシリーズごとに変化して、登場人物の思惑も移り変わっていきます。一方で“昔気質のヤクザ”の大友は、どの組織にいても居心地が悪そうな姿が印象的で。MAHさんの目に大友はどう映りましたか?

なんかね、「アウトレイジ」って世界の縮図感があって。長いものに巻かれてコロコロ態度を変える人もいるし、傍観していたくせに「自分もそう思ってたんですよ」って有利な立場に立とうとする人が一番多いところとかも、そうだよなって。大友は、その中に1人くらいこういう奴がいてほしいよなって思わせる人物ですよね。彼は自分がやるべきことをまっとうするためなら、命をも懸ける覚悟がある。本当は誰もがそんなふうになりたいんだろうけど、その度胸はないと言うか。

映画「アウトレイジ 最終章」より、ビートたけし演じる大友。

──北野監督の中の理想像も入っているのかもしれないですね。

そうですね。でも北野監督自身、2010年にヤクザ映画を撮る時点で「やりたいことをやる」と言う姿勢を貫いている感じがします。しかも監督の場合は「こうじゃなきゃいけない」と思って生きている訳じゃなくて、自然体でそうなっちゃってる感じがカッコいいんですよね。

「アウトレイジ 最終章」
2017年10月7日(土)全国ロードショー
「アウトレイジ 最終章」
ストーリー

元はヤクザの組長だった大友は、日本東西の二大勢力であった山王会と花菱会の巨大抗争のあと韓国に渡り、歓楽街を裏で仕切っていた。日本と韓国を股にかけるフィクサー張のもとで働き、部下の市川らとともに海辺で釣りをするなど、のんびりとした時を過ごしている大友。そんなある日、取引のため韓国に滞在していた花菱会の幹部・花田から、買った女が気に入らないとクレームが舞い込む。女を殴ったことで逆に大友から脅され大金を請求された花田は、事態を軽く見て側近たちに後始末を任せて帰国する。しかし花田の部下は金を払わず、大友が身を寄せる張会長のところの若い衆を殺害。激怒した大友は日本に戻ろうとするが、張の制止もあり、どうするか悩んでいた。一方、日本では過去の抗争で山王会を実質配下に収めた花菱会の中で権力闘争が密かに進行。前会長の娘婿で元証券マンの新会長・野村と、古参の幹部で若頭の西野が敵意を向け合い、それぞれに策略を巡らせていた。西野は張グループを敵に回した花田を利用し、覇権争いは張の襲撃にまで発展していく。危険が及ぶ張の身を案じた大友は、張への恩義に報いるため、そして山王会と花菱会の抗争の余波で殺された弟分・木村の仇を取るため日本に戻ることを決めるが……。

スタッフ

監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一

キャスト

大友:ビートたけし
西野:西田敏行
市川:大森南朋
花田:ピエール瀧
繁田:松重豊
野村:大杉漣
中田:塩見三省
李:白竜

白山:名高達男
五味:光石研
丸山:原田泰造
吉岡:池内博之
崔:津田寛治
張:金田時男
平山:中村育二
森島:岸部一徳

※「アウトレイジ 最終章」はR15+作品

SiM(シム)
SiM
MAH(Vo)、SHOW-HATE(G)、SIN(B)、GODRi(Dr)の4人からなる湘南で結成されたレゲエ・パンクバンド。2004年11月に結成され、数度のメンバーチェンジを経て2009年に現編成となる。パンク、ハードコア、スクリーモをベースとする轟音サウンドにスカやレゲエのエッセンスを取り込んだ“レゲエパンク”サウンドで頭角を現す。ライブハウスシーンを中心に活動し、2011年「KiLLiNG ME」のMUSIC VIDEOの視聴回数がインディーズバンドとしては異例の再生回数を記録(現在1600万回以上再生)。同曲を収録したアルバム「SEEDS OF HOPE」もスマッシュヒットを記録した。メジャー10社以上が獲得に乗り出す中、ユニバーサル・ミュージックをパートナーに選び、2013年4月に4thシングル「EViLS」、10月に3rdフルアルバム「PANDORA」を発売。その後も着実にリリースを重ね、2015年11月には日本武道館公演も完売させた。2016年4月には4thフルアルバム「THE BEAUTiFUL PEOPLE」を発売。同アルバムのリリースツアーでは全国26公演すべてがソールドアウトとなる。野外開催2年目となる自身主催イベント「DEAD POP FESTiVAL」を大成功に収め、10月にツアーのグランドファイナルとして行った神奈川・横浜アリーナでのワンマンライブも即日の完売となった。2017年3月から4月にかけて実施したワンマンツアー「THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR -season II- "ONEMAN SHOWS 2017"」では全国10カ所で28000人以上を動員。7月には「DEAD POP FESTiVAL 2017」を主催した。

2017年10月6日更新