まだ正式にバイト辞めたわけじゃないから

──増子さんが1990年代後半の怒髪天活動休止中、包丁実演販売やリングアナなどさまざまなバイトをされていたことは有名な話ですが、バンド結成時からのバイト遍歴はどのような感じですか？

増子直純（Vo）　俺らはみんなバイトと掛け持ちせずにバンドだけやれるようになったのって、40歳過ぎてからだからね。

坂詰克彦（Dr）　いまだに人手足りないときは電話かかってきますから。

増子　ムリだよお前、俺たち武道館やったんだよって（笑）。

上原子友康（G）　まだ正式にバイト辞めたわけじゃないから（笑）。

清水泰次（B）　そうそう。またなんかあったときはヨロシクねって籍だけは置いてある（笑）。

増子　学生のときからずっとバイトやってるけどさ、こないだ友達の結婚式でひさしぶりに当時のバイト仲間に会ったら、そのまま独立して社長になってたりして。まあ長年バイトやってきていろんな縁があるから、これから先仕事に困ることはないだろうな。

──ロックバンドというのはそもそもバイトと密接な関係にあるでしょうし、皆さんに限らずどのバンドもバイト経験に関するエピソードはありそうですよね。

増子　うん。怒髪天もパンクバンドとして始まったわけでさ、半分バイトしながらでも音楽やれてりゃいいと思ってたから。

清水　ちゃんと就職してバンドやるのはさすがにムリだったから。

バンドマンとバイト

──ちなみに増子さんの最初のバイト経験は？

増子　電気屋の倉庫管理かな。テレビ壊して、逃げた（笑）。こりゃマズいと思って。

──あはははは（笑）。ほかの皆さんはバイトをきちんとこなせていましたか？

増子　ほかの3人はわりとちゃんとしてるけど、友康が一番しっかりしてる。上京してすぐ、みんなでハウスクリーニングのバイトをやったんだけど、まずは友康が行くわけ。しばらくやったところで「じゃあ俺らも呼んでよ」って声かけてもらって。

──仕事ができるばかりに実験台に（笑）。

上原子　僕は北海道にいた24の頃まではサラリーマンだったから、東京に来てから初めてバイトを体験して。ライブ優先で毎日入るような仕事はできないから、それこそ「an」を開いて短期のバイトを探して、ここはよさそうだと思ったら1人で入る。そんで1カ月ぐらいしていい環境だなってわかったら「友達呼んできてもいいですか？」って。

増子　そんで送り込まれてきた部隊が、使えねえのばっかり（笑）。結局友康が怒られるっていうね。

上原子　慣れてくると1人辞め、2人辞め。結局俺だけが残る（笑）。坂さんとシミもマジメだけど。

清水　突然逃げたりはしなかったね（笑）。1回始めると長い。

増子　現場同士のつながりもあって、easten youthの吉野（寿）とかカメラマンの菊池（茂夫）さんも一緒だったし。

──時間的な都合で短期を選ぶというのもあるし、バンドマンだとよく、見た目で職種が限られてしまうという問題もありますよね。バンドマンを受け入れやすい職種もあれば、完全にNGなところもあったり。ちなみに接客業の経験は？

清水　スーパーのレジのバイトはやったことあるよ。レジはめったにやんなかったけど、品出しとか値札貼りとかね。

増子　坂さんはないか。イカ釣り漁船のバイトやってたもんな。

──えっ？ 何日も船の上で揺られていたり？

坂詰　いや、イカは意外と近海だったので。マグロ漁船には乗ったことない（笑）。

増子　あれ、出会った頃は居酒屋でバイトしてたよな？ 居酒屋で皿洗って。金太さんってあだ名付けられてた（笑）。ふとがね金太（ex. ツイスト）さんみたいだったから（笑）。