みんなと2時間だけほかの世界に行って楽しめる

──そんなアルバムのリード曲「Hello Sunshine Hello Future」は非常に爽やかなナンバーです。これがリード曲になったのはなぜですか？

まあ一番……普通……。

──あはははは（笑）。

爽やかで。聴いてくれる皆さんとの共通言語になる曲がほかに見当たらないから、これかな、と。爽やかな雰囲気を久しぶりにやりたかったっていうのもあって。

──この曲は初め、沖縄のことや夏のことを歌ってるんだと感じたんです。でも実はそうじゃなくて、みんなはまだ知らないかもしれないけど、ORANGE RANGEの新しいスタートは、新しい作品はすっごい気持ちいいんだぜっていう曲なのかなって思って。

新しい10年を始めるにあたって、何かを期待させるような曲にしたかったというか。えっと、ライブって現実逃避だと思うんですよ。変な意味じゃなくて。2時間だけ汗かいて楽しんでる雰囲気が、ステージに立っててもめちゃくちゃ伝わるんですよね。僕らと過ごすその2時間だけでも嫌なことを忘れられたらいいんじゃない？みたいな。みんなと、この2時間だけほかの世界に行って、楽しめる。それがずっと大きなテーマだったんです。それで、歌詞で「準備はいいか」って歌ってるんですよ。

──なるほど。この曲はORANGE RANGEのライブを表現している。

うん。PRIMAL SCREAMの「Beautiful Future」って曲がありますよね。あれってすごくいいこと言ってて。あんなヘロヘロのボビーの歌で「FUTURE」って言われたら、それは現実感がないじゃないですか。僕、あの歌の質感が好きなんですよ。けっして熱くないけど、ああやって「美しい未来に行こうよ」って歌える感じが。

昨年よく聴いてたアーティスト

──ところで、NAOTOさんが去年聴いた音源の中で1曲もしくは1枚ベストを挙げるとしたら、何になります？

なんだろうな。一番聴いてたのはWILCOですね。元々好きだったし、移動中にもすごく聴いてたし、FUJI ROCK FESTIVALでのライブも良かったし。テンション感や、ジェフ・トゥイーディの歌がうまいわけじゃないんだけどすごくカッコいいところが良くて。THE FLAMING LIPSとかもそうですよね。

──「NEO POP STANDARD」を聴いて、そこで鳴っている音ややってることは全く違うにもかかわらず、私はなぜかジェイムス・ブレイクを想起したんですよ。

ああー、はい、聴いてました。確かにいいアルバムです。

──音を引いて引いて、人が鳴らす音も完璧になくして、みたいな。

声だけしかないみたいな（笑）。あ、そうそうあとはルーペ・フィアスコ。いわゆるカニエ・ウェストとかジェイ・Zの次を担う、アメリカのギャングスタの流れにいるラッパーで、彼の新譜（※2011年4月リリースの「Lasers」）はよく聴いてました。いわゆる売れ線ヒップホップ、ポップスですね。昔から好きだった人は「金に走りやがった」みたいに言ってましたけど（笑）。R&Bの色もあって、歌モノで、ビートだけでどうにか成り立たせてるわけでもなくて。すごくいいです。

CDだけでは終わらない、発展していく曲になる

──そして、今作のレコ発ツアーも全国で行われます。「バンド解体」をテーマに掲げて作ったアルバムを、ライブでどう演奏しましょうか？

そうですね。どうしましょう。

──あはははは（笑）。

今、いろんな曲のアレンジを考え始めてるんですけど、なかなか面白いぞ、と。バンドでこういう曲を出すからこそ、CDだけでは終わらない、発展していく曲になる。CDをリリースして、ツアーに行ってライブで演奏して、そこで初めて1つの曲ができるっていう期待感がありますね。今までの曲だと、バンドで演奏したからある程度早い段階で完成形が見えてたんですけど、今回はすごく新鮮な気持ちがあります。だから僕も曲がどう変わるのか、楽しみですね。