ナタリー PowerPush - ONE OK ROCK

Takaが語る最高傑作シングル「The Beginning」の“ツボ”

曲に勝つまではリリースできない

──ただ、曲がシンプルだからこそ、ボーカルの力を要求される部分も大きいと思います。レコーディングは苦労しましたか?

はい、すごい大変でしたね(笑)。

──具体的にはどういったところが?

僕の場合、自分で設定してるレベルが相当高いと思うんですよ。だからそこにたどり着くのに時間がかかって毎回レコーディングがなかなか終わらない。この曲も最初のところとか100回くらい歌ってるんじゃないかな。

──どのレベルまで到達したらOKになるんですか?

勝ったら。その曲に。

──勝ったら?

オケに関しては僕は叩かないし、弾かないし、自分の感覚を信じていいものが出来たかどうかを判断するだけ。でも出来上がったオケに対しては、もう僕は毎回勝負するつもりでレコーディングしてるんです。自分がカッコいいと思ったものに対して自分が勝てなかったら完成にはできない。でもそれに勝つことができたら初めてその曲を自分で名曲だって言える。だから僕はもう本当に、死ぬまで何度でも歌うつもりで向き合ってやってますね。

──今回のボーカルの聴きどころはどのあたりですか?

めちゃくちゃ細かい話になりますけどいいですか?

──聞かせてください。

あの、1番と2番のサビがあって……それぞれ出だしが違うんですよ。普通は2サビになるとどうしてもインパクトが減ると思うんですけど、僕は逆に2サビにいったときにさらにカッコよくなる方法論っていうのをずっと探していて。で、ものすごく細かいことなんですけど、サビの前にギターがキーッと上がるフレーズがあって、それが1サビには入ってなくて2サビには入ってるんです。そこでボーカルが入ってきたときに爆発力がちゃんと出るかどうかみたいなところを何回もやり直して。そこは特に計算して作ってましたね。

──なるほど。

あと歌詞で言うと最初の5行とかは、どこまでうまく歌うか、どこまで雑にするかをすごく考えたり。

──ああ、うまければいいというものではなく。

はい、ピッチは外れてるんだけど、味があっていいってこともあると思うし。だから声で持っていくのか、歌のうまさで持っていくのかみたいな。こうちょっと……なんていうんだろう、人間臭さが出る歌い方ってどんなんだろうって……。だから頭とサビは何度もやり直しましたね。で、あとは頭からAメロにいったときに洋楽っぽさが残ってるかどうかは特に意識したかも。

──自分のディレクションに基づいて、自分でハードルを決めてるわけですね。

そうです。で、それを超えられなかったら絶対にOKを出さないっていうルールがあります。自分の中で(笑)。

歌詞にはそこまでこだわってない

──歌詞についても伺いたいんですが。冒頭からずっと英語詞なのに、Bメロの途中で突然日本語が入ってきますよね。あそこはハッとさせられました。

マジすか。うれしいです。

──日本語と英語のバランスと配置が絶妙ですよね。

全部英語詞でも良かったんですけど、それだとなんかちょっと違う気がして。あと僕はやっぱり日本人なんで外人みたいな発音はできないから、自分の身の丈を知った上でどんな英単語をチョイスするかっていうのも考えてましたね。

──そもそもTakaさんの中で歌詞っていうのはどれくらい重要なものなんですか?

歌詞は、そこまでこだわってない……ですね。自分がいいこと言ってるとか全く思わないし。歌詞を書く才能はそんなにないと思ってるんで。

──そうなんですか?

いつも同じことしか言ってないんですよ、バンド始めてからずっと。

──でもTakaさんの歌詞はいいと思いますよ。

本当ですか?

──あと、どこかヘンですよね(笑)。

あはは(笑)、それよく言われるんですよ。

──一般的にいいと言われるロックバンドの歌詞には、カッコいい決めゼリフというか、力強いキャッチフレーズみたいなものが多いと思うんです。でもTakaさんの歌詞はどちらかというと、普通にしゃべってる言葉と地続きな気がして。

そうかも。

──そのあたり、自分ではどう感じてるんでしょうか。

いや、なんか、だから僕そういうセンスないんですよ。一言で突き刺さるような歌詞が書ける人はうらやましいなって思いますけどね。周りにもいっぱいいるけど、どうやって書いてるんだろうなあって。

──Takaさんはどうやって書いてるんですか?

普段思ったりしてることをメロディに乗っけてるって感じですかね。あんまりいい歌詞を書こうとは思ってないかも。1曲を通してふと気になるポイントがあればそれがいいかなって思ってる。いや、本当はいい歌詞書きたいんですよ。でもあんまり書けないっていうか(笑)。

──よく「歌詞が降りてくる」みたいなことを言う人もいますけど……。

僕はないですね(笑)。

ボーカリストとして自分の言葉を歌いたい

──でもボーカルと同様に、歌詞についても自分なりのハードル設定はあるわけですよね? ここまでのクオリティに達してないものはダメというような。

ん……。

──え、ないんですか?(笑)

どうだろう。まあ誰が読んでもわかるようにはしたいですけどね、僕がバカだから(笑)。難しい言葉の羅列とかよくわからないし、なるべく丁寧に言いたいってのはあります。自分がわかるように書くっていうことですかね。

──例えばこのシングルに収録の「欠落オートメーション」では「自分を重ね合わせてみたりなんかしちゃったりして」という、およそ歌詞らしくないフレーズもありますけど。

(笑)。そうせざるを得ないですよ。メロディが先にあるから。本当は「自分を重ねてみたりして」とかで終わらせたいんですけど、メロディにあわせて、じゃあ付け足そうかっていう感じなんですよ。だからあんまり歌詞についてはね……。

──でも伝えたいことが自分の中にあって、それを言葉にしているわけですよね。

そうですね。でも伝えるっていうよりは、自分に向けて歌ったり、自分の持ってる今の気持ちをそのまま言葉にしたりしてることのほうが多いです。

──でもONE OK ROCKの歌詞もすごく伝わってきますよ。歌詞単体で、というよりはメロディや演奏と一体になって届いたときに一番力強く響く歌詞だと思います。

そう言ってもらえるとうれしいですね。

──ファンの人からもそういう反応は多いんじゃないですか?

いや、どうだろ。「歌詞に救われました」とかって言われることほとんどないかも(笑)。

──え、ないんですか?

「この歌詞で私は世界観が変わりました」みたいのはないですねえ……。それよりも「いつもONE OK ROCKで元気をもらってます」っていうのが多くて、いや、そっちのほうがうれしいんですけどね。

──じゃあ歌詞を書くのはあんまり得意ではない?

そうですね。僕は自分がボーカリストとして歌うから書いてるんだと思います。自分の声でお客さんに伝えるわけだから、やっぱりそこは自分の言葉じゃなきゃっていう、それだけなんですよ。だからもし僕がボーカル辞めてギターに転身したとしたら、多分歌詞は書かないと思いますね。

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ONE OK ROCK(わんおくろっく)

2005年結成。Taka(Vo)、Toru(G)、Ryota(B)、Tomoya(Dr)の4人からなるロックバンド。エモ、ロック、メタルの要素を取り入れた骨太なサウンド、激しく熱いライブパフォーマンスで若い世代を中心に支持を集める。2007年4月に1stシングル「内秘心書」を、同年11月に1stアルバム「ゼイタクビョウ」を発表。2010年11月に初の日本武道館公演を実施する。さらに2012年1月には、5thアルバム「残響リファレンス」を携えたツアーのファイナルとして横浜アリーナ2DAYS公演を大成功に収めた。同年8月に映画「るろうに剣心」の主題歌に起用されたシングル「The Beginning」をリリースし、その後台湾公演を含む全国ツアーを実施する。