ナタリー PowerPush - 大野愛果

作家活動15周年 軌跡たどるセルフカバー

ZARD「少女の頃に戻ったみたいに」「明日を夢見て」、倉木麻衣「Love, Day After Tomorrow」「Secret of my heart」、愛内里菜「恋はスリル・ショック・サスペンス」など数多くのヒットソングを世に送り出している作曲家・大野愛果。彼女が実に11年ぶりとなるセルフカバーアルバム「Silent Passage」をリリースした。第3弾となる本作で大野は、前2作で聴かせた英歌詞ではなくオリジナル詞で歌唱しているほか、多くの要望が寄せられていたZARDのカバーを初めて披露。作家デビュー15周年というアニバーサリーイヤーの締めくくりにふさわしい1枚が完成した。

今回ナタリーではアルバムの発売を記念し大野本人にメールインタビューを実施。制作の経緯、収録曲それぞれの思い出や聴きどころ、15周年を迎えての気持ちなどを聞き、彼女の胸の内に迫った。

また特集後半では今回アレンジャーとして作品に携わった池田大介、徳永暁人(doa)、大賀好修(Sensation)、古井弘人(ex. GARNET CROW)、岡本仁志(ex. GARNET CROW)からのコメントを紹介している。

取材・文 / 伊藤実菜子

自分の歩んできた道筋を振り返る

──大野さんがセルフカバーアルバムを発表するのは2002年の「Secret Garden」から約11年ぶりとなりますが、今作の制作のきっかけはなんだったんでしょうか?

スタッフさんから、「大野さん! 今年15周年ですよ! ぜひ! アルバム出しましょう!」と言われたのがきっかけです。いつの間にか15周年だったことに加えて、前回のアルバムから11年も経っていたことは、自分でも驚きでした。この節目に、自分の歩んできた道筋を一度立ち止まって振り返ってみるのも良いかもしれないと思い、制作をスタートさせました。その際、前回から期間が空いている分、それなりのものを作りたいので覚悟してくださいネ……的なことをスタッフさんに言いました(笑)。

──過去2作のセルフカバーアルバムで行ってきた英詞カバーではなく、初めてオリジナル詞で歌おうと思ったのはなぜですか? また実際に歌ってみていかがでしたか?

過去2作は、オリジナルが世に出る前の、大野愛果デモの世界観を再現しようというコンセプトでした。デモは英語で歌うことが多く、その雰囲気をそのままお伝えできればということから英詞に。今回は11年振りということで、新しいことにも挑戦したくなり、思い切ってオリジナル詞に。日本語は英語より子音が多い為、メロディーの流れが途切れやすく難しかったですが、やはり母国語ということもあり気持ちが入りやすいというか(笑)、やりがいもあり、楽しかったです。

コンセプトは「音楽を楽しもう、楽しんでもらおう」

──「Silent Passage」はどのようなコンセプトのもとで制作しましたか? 制作当初に思い描いていた完成形通りになりましたか?

デモの世界観+α的な感じで、1枚の中で様々な大野色を出して、音楽を楽しもう、楽しんでもらおうというコンセプトのもと、制作を進めていきました。制作過程では、アレンジャーさん、エンジニアさん、様々な方々との関わりのなかで、こうきたか!と新しい発見等もあり、完成形は初めに思い描いていた以上に楽しんでいただける作品になったと思います。

──Twitterにて、今作は2部構成で「第一幕はスタンダードな大野さん、第二幕は冒険七変化大野さんが登場する形」とおっしゃっていましたが、こちらについて詳しく聞かせてください。

歌う前に、メロディーから自分が歌う声がまず頭に響くんです。その雰囲気に合いそうな自分の声が。それに沿って歌うわけですが、頭に響く声は曲により様々で、結果、曲に合わせて色々な歌い方になってしまうわけです。で、わりと自然に歌っていてスタンダードなのがアルバム前半の第一幕、歌い方を冒険して色々な大野さんがでてくるのが後半の第二幕。特に冒険したのが「Forever You ~永遠に君と~」かな。めいっぱい楽しみました。

──「Silent Passage」というタイトルに込めた思いを教えてください。

表の世界の裏に位置する静かな場所。そこを歩む者の、出発点でも終着点でもない通り道、Silent Passage。またこの言葉から時間の経過や想い、未来へ向かう意思なども感じられたので、15周年を迎えた今の自分にピッタリだと思い、このタイトルに決めました。

──選曲はどういった基準で行いましたか?

提供曲のリストを見ながら、そこから直感的に選んでいきました。スピード感あるものやバラードなど、バランスよくチョイスしていきました。

──過去2作ではZARDのカバーは収録されていませんでしたが、このタイミングでセルフカバーしようと思ったのはなぜですか?

セルフカバーするにあたり、ZARDさんに対する想いは沢山あるのですが、そこはあまり語らず心の中に秘めておきます。

ニューアルバム「Silent Passage」 / 2013年12月25日発売 / 3150円 / GIZA / GZCA-5259
「Silent Passage」
収録曲
  1. Get U’re Dream(ZARD)
  2. key to my heart(倉木麻衣)
  3. 笑顔でいようよ(三枝夕夏 IN db)
  4. Time after time ~花舞う街で~(倉木麻衣)
  5. 静かなるメロディー(竹井詩織里)
  6. かけがえのないもの(ZARD)
  7. beginning dream(菅崎茜)
  8. 君去りし誘惑(上木彩矢)
  9. 1000万回のキス(倉木麻衣)
  10. Forever You ~永遠に君と~(愛内里菜)
  11. 君の涙にこんなに恋してる(なついろ)
  12. don’t stop music(the★tambourines)
  13. 夏を待つセイル(帆)のように(ZARD)

※カッコ内はオリジナルアーティスト

大野愛果(おおのあいか)

1998年にWANDS「明日もし君が壊れても」で作曲家としてデビュー。ZARD、倉木麻衣、愛内里菜、三枝夕夏 IN db、上木彩矢、大黒摩季ら多数のアーティストに楽曲を提供し、数多くのヒットソングを生み出す。中でも倉木麻衣「Love, Day After Tomorrow」は140万枚を超えるセールスを記録した。2002年1月に英詞でのセルフカバーアルバム「Shadows of Dreams」を発売して歌手活動を開始し、同年12月に第2弾「Secret Garden」をリリース。2013年12月、約11年ぶりとなるセルフカバーアルバム第3弾「Silent Passage」を発表した。