小田和奏×日高央|ヒダカチルドレンの小田和奏、日高央と音楽愛を語り合う

パンクバンドが「Mステ」に出演するということ

小田 ビークルはいろんな垣根を飛び越えていこうとしてるんだろうなっていうのも感じてて。ビークル、「ミュージックステーション」に出てたじゃないですか。今でこそ身近なミュージシャンも「Mステ」に出演したりするけど、当時は「えっ? そこに出ていっちゃうんだ?」って思った。

日高央

日高 象徴的だったのはビークルがインディーからメジャーに行って最初に、BRAHMANのTOSHI-LOWとBACK DROP BOMBのタカ(TAKAYOSHI SHIRAKAWA)に、「もともと友達だけど信用するまでもうちょっと時間くれ」って言われたことで。「ビークルがどうなっていくか様子を見させてくれ、それまで対バンはしない」みたいな感じでした。そこはなんか逆にうれしかったですね。「仲間だからやろうぜ」っていうベタベタな感じじゃなくてお互いに何がやりたいか合致したらやろうっていうのをちゃんと言われました。こっちも「テレビとか出ていくつもりだからちょっと待ってて、これで結果出なかったらゴメン」って。そういうことを言い合ってましたね。

小田 僕もノーリグでメジャーに行ったときに、テレビの世界ってあまりにもわからなくて。でもそこにダカさんが攻め込んでいってたから、テレビから認知が広がって、お茶の間で観てた人たちがライブハウスに流れ込んだり、「なんだこのうるさい音楽は?」って話題になるのはすごくいいことだなと思ったんですよね。自分はその先端で切り込んでいくようなタイミングはなかったけど、でもずっとそうやってアクションを起こしていく姿を見せてもらったことはすごく勇気になりました。あとはダカさんがビークルのあとにベムズ始めたときも「そっちかー!」と思いましたね。いちいち痛快で面白い。

日高 裏切ってナンボだからね(笑)。

シンガーソングライター感漂う「Nachtmusik」

──お二人はメジャーレーベルでのバンド活動を経て今も違う形で音楽を続けていることが1つの大きな共通項だと思うんですけど。そういう意味ではお互いの活動スタイルをどう見ていますか。

日高 俺は、ノーリグから小田和奏ソロに行く流れってポール・マッカートニーみたいでうらやましいなって。“シンガーソングライター感”があるんだよね。俺も自分でほぼほぼ曲を書いて歌ってるし、シンガーソングライターではあるんだけど、いつもシンガーソングライター感が出ないんだよね。本当は出したいんだけど。

小田 “バンドマン”っていう印象が強いからですかね。僕もソロという形でやってますけど、いまだに「弾き語り」とか「シンガーソングライター」っていう響きの違和感は拭えてはないんですよ。

左から日高央、小田和奏。

日高 そうなんだ? でも声とか曲の感じに、シンガーソングライター感すごいあるよ。特に今回のアルバム「Nachtmusik」はそうじゃない? ピアノが多めだったのは意外だったし。

小田 やっぱり弾き語りをやるようになっていろんな引き出しが欲しいなと思うようになって。小さい頃にピアノを習っていたこともあって、また弾き始めたんです。

日高 じゃあかなり練習したの?

小田 はい、もうずっとピアノを触ってましたね。でもやっぱりエレキも弾きたくて「やっぱりバンドが好きなんだな」とも思ったり。バンドが好きっていうか、アンサンブルが好きだなと思ったんですよね。誰かと音を合わせるっていう行為が。

日高 いろんな人とコラボできるのも、なんでもできるからだろうね。俺もアンサンブル好きだけど、「ドラムを叩きたい」とか「ピアノを弾きたい」とかあんまり思わないから。それは弾ける人にやらせりゃいいっていう、急にプロデューサー目線になっちゃう。あと俺たちは声がハスキーというのも一緒なんですけど(笑)、和奏は優しい声も出せるし、すごいコントロールしてるなと思った。「◯か×か」みたいにあんまり優しくない感じの曲もあるし。

小田 そうですね。そこはガサガサ声で歌ってます(笑)。

日高 「Mr.Rain」みたいにインターバル的な曲も入ってるし、このアルバムは構成がいいよね。前半はピアノが多めで、でもギターが聴こえてきたり、ちょっと尖った曲もあったりして。よくできてると思う。これはノーリグを聴いてたリスナーにはすごく新鮮だと思うし、秦基博さんとか斉藤和義さんとか、男性シンガーソングライターが好きな人が聴いてもいいと思うし。ノーリグ時代は、よくも悪くも打ちのめされる感じの曲が多かったじゃない? 傷付きながらボロボロになってる男たちの物語みたいな曲だったでしょ。

小田 あはははは!(笑) そうっすねえ。

日高 リスナーも一緒になって感傷に浸るかすごい疲れるかのどっちかだったんだけど(笑)、このアルバムはもうそういうことはないの。

小田和奏

小田 そうかもしれない。でも小田和奏って名乗ってるけど、最近はバンドだなとも思うし、1曲ごとに違うバンドみたいな気持ちでアンサンブルを楽しめたんですよね。縦横無尽にピアノポップもフォーキーなものもアシッドなものもやってみたいから、もう全部やってみようと。だから結果的にはアラカルト的なアルバムになったかな。

日高 なかなかやりたくてもできないことだね。

このアルバムには今の決意が出てる

小田 ソロ活動では、バンドでやりきれなかったことをあまのじゃく的にやってきたんです。でもなんかそれも1周した感じもするんですよね。だからまたギターをガシャガシャやる時期もくるかなと思ってます。

日高 そこの覚悟ってなかなか難しくて。例えば「『日高央のソロアルバムを作れ』って言われたら自分は何をやるんだろう?」って考えても自分でもわからないからね。それこそなんでもやっちゃうから。アイドルにも曲書くし、一方でコアなこともやる。でもじゃあそれを全部入れるのがソロとして正しいのかと言ったらそうじゃないし。

──でも日高さんの書くメロディと声があればそれはもうソロなんじゃないですか?

左から小田和奏、日高央。

日高 人はそう思うんですけど、実際自分でそれをやってみると意外と着地しきれないんですよ。「自分の中で一番重きを置いているのってなんなんだろう?」とか考えちゃって。でも実は優先順位ってないんですよ。バンドも好きだし、ソロワークも好きだし、単純にプロデュースすることも好きだし。だからそういう意味でも、和奏のこのアルバムには今の決意が出てる感じがするね。なんでもやりたいって思ってて、それをちゃんとやれてる。俺はバンドでも1から10まで全部自分で決めてるおじさんと思われてるけど、実はそうじゃないのよ(笑)。わりとメンバーに投げてる部分も多いからね。

小田 バンドマジックっていうのも確かにありますしね。だから小田和奏って名乗ってソロでやっていくことの大変さも今回、感じました。コンセプトを決めないと本当になんでもできちゃうから、俺が「これは青!」って言わなきゃいけない。バンドだと「だいたい青ね」でいいところもあるんだけど。

日高 そうだね。バンドってそこがわりと自動的に決まっていくからね。俺なんてお面バンドでデビューしてるから、日高央ソロをやれって言われたら素っ裸で立たされるみたいな気持ちになっちゃう(笑)。だからもう「おちんコール」するしかないよね(笑)。

小田和奏「Nachtmusik」
2017年4月12日発売 / spiral-motion
小田和奏「Nachtmusik」

[CD]
3000円 / SPMT-2001

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Singer in the round
  2. ウインナワルツ
  3. Don’t let me down
  4. ターミナル
  5. A long way to go…
  6. colors of life
  7. 数十年後のラブソング
  8. Mr.Rain
  9. ○か×か
  10. 光の方角
  11. まぼろしの人
  12. ペーパードリップ
  13. コーディの苦悩は今日も続く
  14. ターニング
  15. 小さな夜のこと
Nachtmusik発売記念ライブ
“ひとりむじーく”
  • 2017年4月23日(日)宮城県 Cafe Mozart Atelier(※ワンマンライブ)
    <出演者>
    小田和奏
  • 2017年4月30日(日)広島県 音楽喫茶 ヲルガン座
    <出演者>
    小田和奏
    ゲスト:森本ケンタ
  • 2017年5月4日(木・祝)東京都 四谷天窓.comfort
    <出演者>
    小田和奏
    ゲスト:谷川“ますをアンチェイン”正憲(UNCHAIN)
    ※チケットはソールドアウト。
Kazusou Oda TOUR 2017 “Nachtmusik”
  • 2017年5月11日(木)岩手県 the five morioka
  • 2017年5月12日(金)青森県 八戸ROXX
  • 2017年5月13日(土)山形県 コーヒーハウス・ドリップ
  • 2017年5月14日(日)宮城県 Café the EACH TIME
  • 2017年5月19日(金)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2017年5月21日(日)埼玉県 トライシクルカフェ
  • 2017年5月26日(金)京都府 SOLE CAFE
  • 2017年5月27日(土)愛知県 K.D ハポン
  • 2017年6月3日(土)北海道 musica hall café(Day Time)
  • 2017年6月9日(金)福岡県 LIV LABO
  • 2017年6月10日(土)大分県 十三夜-JUSANYA-
  • 2017年6月11日(日)長崎県 Ohana Cafe
  • 2017年6月13日(火)鹿児島県 WALK INN STUDIO
  • 2017年6月15日(木)山口県 周南RISING HALL LOBBY
  • 2017年6月16日(金)岡山県 城下公会堂
  • 2017年6月17日(土)静岡県 浜松Cafe AOZORA
  • 2017年6月25日(日)新潟県 GOLDEN PIGS YELLOW STAGE
  • 2017年7月1日(土)広島県 LIVE Cafe Jive
  • 2017年7月2日(日)大阪府 cafe Room
  • 2017年7月15日(土)東京都 青山 月見ル君想フ(※バンドワンマン / ツアーファイナル)
小田和奏(オダカズソウ)
小田和奏
1980年広島県生まれ。2001年にNo Regret Lifeを結成し、ギターボーカルとして活躍する。2005年にSony Music Associated Recordsよりメジャーデビューし、2013年7月に解散。以降は2011年頃より並行して行っていたソロ活動を本格化させるほか、バンドのプロデュースや「Coda」の名義でアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のオープニングテーマなども手がける。2017年4月、ソロ名義で初めての全国流通盤としてアルバム「Nachtmusik」をリリースした。
日高央(ヒダカトオル)
日高央
1968年千葉県生まれ。BEAT CRUSADERSのフロントマンとして多くのロックファンの支持を集める中、2010年に散開。その後MONOBRIGHTへ加入し2年間活動したほか、同時にヒダカトオルとフェッドミュージックでAORにチャレンジするなど多岐にわたって活動を展開する。2012年末には越川和磨(G / ex. 毛皮のマリーズ)らとの新バンド・THE STARBEMSを結成。なおバンド活動のほか、木村カエラ、椎名林檎、いきものがかり、Gacharic Spin、BiS、STARMARIEら他アーティストへの楽曲提供やプロデュースも積極的に行っている。