音楽は今、荒野に立っている。
ダウンロードなどを始め、音楽ソフトの在り方も転換期を迎え、しかも目の前には何年にもわたる不況が未だ立ちはだかっている。ますますライヴやツアーが大事になり、生み出した音楽がそこでどう響くのかも大きな問題だ。考え出したらキリがないほど、今、音楽はカオスの海を泳いでいる。
もっとはっきり言えば、音楽は今、ピンチなのだ。
けど、素晴らしいアーティストはもうわかっている。音楽はピンチだからって慌てて作るものではなく、周りばかり見ながら作るものでもなく、自分自身を見つめ、そして何よりも音楽と愛し愛されながら生み出すものだということを──。
このアルバムは、とても珍しいコンピレーションである。既存の曲を集めたわけでもなく、特定のアーティストをトリビュートしたわけでもない。きっかけはタワーレコードの30周年記念だが、だからといってタワーレコード万歳というだけで作ったわけでもない。では何なのか?
これは、「音楽万歳!アルバム」なのである。
音楽と純粋に戯れ、音楽と一緒に進化や変化を遂げ、音楽に痛い目にも遭いながら、それでも音楽とバカになって一緒に転がって泣いたり笑ったりする人(アーティスト)が、そういう同志(リスナー)に向けて放ったソング集なのである。
全19曲。絡んでいるアーティストの数はよくわかんねえなぁ。だってLOW IQ 01の曲のように、4バンドもの面子が集まっているものもあるし、12曲がこの企画のために集まったアーティスト同士、もしくはバンド同士のコラボレートによって成立しているんだから。
中にはピロウズとベン・クウェラーという、国境を超えた組み合わせまでがあるし、要するに、音楽で遊ぶ達人が砂場に集まったようなものなんだろう。
楽曲の表情だってそうだ。まあなんとも、かなり「すっぴん」。涙が出てくるほどバカ正直な名曲ばかりが並んでいる。それぞれの磁場で独自のポジションを築いている人達が、そのスキルと経験を持ち込みながら砂場で遊ぶと、こんなにもポップでソウルフルなコミュニケーション・ミュージックが生まれるんだと、音楽ファンにとっても感慨深いアルバムだ。
アーティストだって、ヘヴィリスナーだって、みんな最初はどんなアルバムを買っていいのかわからない、自分にどんなロックやポップがフィットするのかわからない、ただの音楽シロウトだった。
そんなドキドキする気持ちを抱えながら、いろいろな街のタワーレコード等へ向かい、時間や約束を忘れて試聴機と向かい合い、そして「自分の音楽」を見つけ、心に掲げる──そんなことが、今に至る長い長い音楽の旅の始まりだったバンド&アーティストによる、ある意味「夢への恩返し」のような19曲2枚組のアルバム。
音楽は今、荒野に立っている。
だけど僕らは今、この瑞々しい「荒野のオアシス」のようなアルバムに、表情を崩される。
そう、最高にハッピーな表情にだ。
鹿野淳(MUSICA)