音楽ナタリー Power Push - 夏の魔物×曽我部恵一×Sundayカミデ

曽我部とSundayが明かす 成田大致の制作スタイル

夏の魔物はフェスもグループも同じもの

──メンバーとして近い距離にいる大内さんは、成田さんの才能をどう捉えていますか?

大内 そうですね。まず大前提としてボーカルがいいってのがあります。自分では曲を作れないって割りきってるのもある意味すごいと思うし。曲は成田が1人でバーッて進めて、形になってきた段階で聴かせてもらうんですけど、いつもすごくいいし、そこは彼の音楽的な才能だと思いますね。

Sunday うん、成田くんのボーカルいいですよね。成田くんが「ダーリン no cry!!!」を最初に歌ったときのボイスメモは今も消さないで残してる。

成田 わ、ホントですか?(笑)

Sunday 僕のデモの歌い方とはまた違うんだけど、ちょっとなんかウルッとするぐらいよかったんだよね。

大内ライダー

大内 そういう部分が今まで全然フィーチャーされてこなかったんですよね。フェスの主催者がバンドもやってるぐらいに思われてたというか。でも本来逆なんです。自分で表現したいもの、作りたいものがあるからフェスをやってるわけなんで。

曽我部 全部が成田くんの表現なんだろうね、フェスも音楽も。こういうインタビューで話したりメディアに出ることも含めて、全部が成田くんの生き方なんだと思う。それがちゃんと伝わってくるから、みんなすぐに「OK、わかった」って言うんじゃないかな。

──なるほど。

曽我部 そういうのって今は珍しいよね。普通はいろいろ計算してバランスを取りながらやっていくことが多いけど、成田くんはそういうのがないから。それは1回目からずっと「夏の魔物」に行ってて、なんかわかる。だから「夏の魔物」というのはフェスもグループも同じものなんだと思うの。好きな人を呼んで自分が作ったステージの上でいろいろやってもらうってことでしょ。形は違うけど、全部成田くんの生き様なんだろうなって感じがする。

Sunday それぞれ自分の夢がある人たちが成田くんのもとに集まって、自分の夢に向かって一緒に歌ってたりするわけですよね。たぶん最終的にはドラゴンボールみたいに全員がどっかに弾けるときが来るのかもしれないけど、今は一緒のステージで集結して、すごいパワーを発信してる。その姿を観ながら、今回「夢」という言葉を歌詞に入れるべきだなって思ったんです。

「好きです」しか言えない

──じゃあせっかくこういう場なんで、最後に成田さんから2人に言っておきたいことがあれば。

成田 えっ、なんすかそれ(笑)。いや……「好きです」しか言えないですよ。

──こうやって一緒に仕事をしてもファンという気持ちは変わらない?

成田 それはそうですよ! 年末も普通にサニーデイのライブ観に行って爆裂感動して。いつもパワーをもらってるって感じです。そういう方と作品が作れるなんてホントにうれしいですよ。

Sunday うれしいですよって(笑)。

成田 いや、でもなんて言うんですか、このタイミングでできたことがいいなって。わけわからない状態のときじゃなくて、今のこのメンバーで、今の最高の環境で、ポニーキャニオンでやれてるときに、曽我部さんとSundayさんと一緒に曲が作れたっていうのは、自分にとって最高のタイミングだなって思ってます。

「東京妄想フォーエバーヤング」作詞 山内マリコ コメント

山内マリコ

まず成田くんからご指名が来て、作曲は曽我部さんということで、これは断れないなと引き受けることにしました。作詞は生まれてはじめてだし、しかも曲先! ノリでOKしたものの、大丈夫かなぁと内心ヒヤヒヤでした。

成田くんからはものすごーく細かいリクエストをもらっていて、タイトルは「東京」がいいとか、好きな子に渡すミックステープに入れたくなるようなラブソングにしたいとか、「ここは退屈迎えに来て」に出てくる登場人物が好きそうなカルチャーのニュアンスで…とか、とにかくビジョンがはっきりあるみたいでした。最初はバラードをイメージしていて、エモい詞を書く気満々だったのですが、デモの曲調はめちゃくちゃアッパー(笑)。だったら小難しい言葉より、うんとストレートな方が合うなと思って、方向転換しました。

成田くんもわたしも、上京が25歳と遅めなんですね。それだけ地方で、「自分はなにになれるんだろう」とか、「なににもなれない運命なのかな」とか、そういうことを鬱々と考える時間を長く過ごしている。そこがいちばんの共通点なので、ラブソングかどうかはさておき、上京者にとってのアンセムになるような歌詞にしようと思いました。くすぶっている人、自分でもどうしようもない感情を抱えている若い人の心に、ぐっとくるようなものになればいいなと思って。別に上京じゃなくても、一歩踏み出そうとするときに、背中を押してくれるような曲にしようと。

わたしが書いた詞は、ほんとになんてことない、わりと誰でもすぐ書けそうな感じなんですけど、できあがった曲を聞きながら歌詞を読み返すと、自分でも「なんていい曲なんだ!」と感動して、もう何回もリピートして聴き込んでいます。曽我部恵一、BIKKEっていう名前の並びに自分がまぎれていることの違和感は、まったく払拭できてませんが…。とっても光栄で、いい冥土の土産ができました。声をかけてくれた成田くんに感謝です。

うっかりヒットして、紅白とかにどんどん出てほしいですね。成田くんみたいに勢いのある人、むしろ勢いしかない人って、貴重ですから。そのうちいい感じにくたびれたころに、今度は本当の「東京」を作りましょう! でもそれまでは、行けるところまで、走り続けてほしいと思います。

山内マリコ(ヤマウチマリコ)

作家、エッセイスト。2008年に「16歳はセックスの齢」で「第7回 女による女のためのR-18文学賞」の読者賞を受賞した。2012年に小説集「ここは退屈迎えに来て」を刊行。著書に「さみしくなったら名前を呼んで」「パリ行ったことないの」「東京23話」などがある。また2016年秋には小説「アズミ・ハルコは行方不明」が映画化される。

夏の魔物 ニューシングル「東京妄想フォーエバーヤング / ダーリン no cry!!!」 / 2016年1月20日発売 / 1000円 / ポニーキャニオン
イラストジャケット Ver. [CD] PCCA-04334
夏の魔物 Ver. [CD] PCCA-04335
ブラックDPG Ver. [CD] PCCA-04336
収録曲
  1. 東京妄想フォーエバーヤング
    [作詞:山内マリコ / 作曲・ギター演奏:曽我部恵一 / RAP作詞・歌唱:BIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET) / 編曲:ARM(IOSYS)]
  2. ダーリン no cry!!!
    [作詞・作曲:Sundayカミデ / 編曲・ピアノ:ハジメタル]
  3. 邪88
    [作詞:ノマアキコ / 作曲:下村陽子 / 編曲:増本直樹]
  4. 東京妄想フォーエバーヤング(Inst.)
  5. ダーリン no cry!!!(Inst.)
  6. 邪88(Inst.)
「夏の魔物現象2016」ROAD TO 10th ANNIVERSARYシリーズ
♯1 INKT VS 夏の魔物 ~ギリギリで五日遅れのバレンタインツーマン~

2016年2月19日(金)東京都 新宿ACB HALL
OPEN 18:30 / START 19:15

<出演者>
INKT / 夏の魔物 / ブラックDPG

夏の魔物(ナツノマモノ)
夏の魔物

2006年から青森県で毎年開催されているライブイベント「AOMORI ROCK FESTIVAL -夏の魔物-」の主催者である成田大致を中心として2015年3月に発足したユニット。成田のほか、塚本舞、大内ライダー、アントーニオ本多、ケンドー・チャンの計5人からなる。同年8月、シングル「恋愛至上主義サマーエブリデイ / どきめきライブ・ラリ」をポニーキャニオンより発表し、メジャーデビュー。2016年1月にはニューシングル「東京妄想フォーエバーヤング / ダーリン no cry!!!」をリリースした。対抗するヒールユニット・ブラックDPGとライブ中にプロレスを繰り広げるなど、破天荒なパフォーマンスで人気を博している。

曽我部恵一(ソカベケイイチ)
曽我部恵一

1971年生まれ、香川県出身のシンガーソングライター。1990年代からサニーデイ・サービスの中心人物として活躍し、バンド解散後の2001年からソロアーティストとしての活動を開始する。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、客演やプロデュースワークなども多数。現在はソロのほか、再結成したサニーデイ・サービスなどで活動を展開し、フォーキーでポップなサウンドとパワフルなロックナンバーが多くの音楽ファンから愛され続けている。2004年からは自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、自身の作品を含むさまざまなアイテムをリリースしている。3児の父。

Sundayカミデ(サンデイカミデ)
Sundayカミデ

2010年に結成した6人組バンド・ワンダフルボーイズのボーカル兼リーダー。2013年には奇妙礼太郎(Vo, G)とテシマコージ(Dr)とともに天才バンドを結成しており、同バンドでは作曲とキーボード、コーラスを担当している。2013年9月にはソロ名義でのアルバム「MY NAME IS !!!」を発表。同アルバムには自身が執筆した小説が付属するなど、多彩な才能をさまざまな形で発揮している。