15年ぶんくらいの勉強をしたような気分

──その後もコンスタントにライブ活動を続ける中で、今年の4月に公開された「重ねドルチェ」の動画が930万回再生を突破。メディアでも多く取り上げられましたね。

もともとはCMソングの「カサネテク」が先に完成していて、そのボーカルを探していたところに声をかけていただいたんです。聴いてもらうとわかるんですが、この曲、歌詞がすごく攻めてると言うか。

──女子が合コンに臨むときの“あるある”をテーマに、「SNSで相手を検索、合コン相手の予習はぬかりなく！」とか「作り笑顔の常習犯 上目使いは中2でマスター」といったフレーズが並んでいますね。

女の子のしたたかな本音と言いますか（笑）。それをアカ抜けた歌声の人が歌うと本当に攻めた歌になっちゃうから、少しいなたいと言うか、まだ東京に慣れてないようなイメージの声で表現したかったみたいです。先方のスタッフさんいわく。

──そうなんですね。オファーが来たときの感想はいかがでしたか？

全体的にラップっぽい歌い方なんですけど、そういう歌い方をしたことがなかったので「難しそうだな」と。すごくありがたいお話でありながら、最初は「大変そうだな」と思いました。でも実際歌ってみるとこれが楽しくて、レコーディングもあっという間に終わったんです。歌詞の一行ごとに細かくディレクションしていただいて、そんなにガッツリ教えていただくのは初めてだったし、この曲だけで15年分くらいの勉強をしたような気分。今までは自分の作った曲を好きなように歌っていたけど「ここはもっとセリフっぽく」とか、新たな引き出しを開けていただいて、それを受けた自分の歌声も全然違っていて。いい意味で「もっと計算して歌ってもいいんだな」って思えた1曲になったし、表現の幅が広がったので、今後の歌い方も絶対変わっていくと思います。

900万回再生の時点で、もうめまいがしそう

──「カサネテク」のユニークな“あるある”エピソードは10～20代の女性を中心に大きな反響を呼んでいますが、中村さん自身も共感するものはありましたか？

自分はやったことないけど見たことあるなっていうものはいっぱいありました。「あえて付けすぎハンドクリーム からのゴメンもらって～」は何回も目撃したことあります！

──へえ！ 本当に世の中の女子はやってるんですね。

歌詞はたくさんの女性へのリサーチ結果を反映して作られたみたいなので、どれも実際やってる人は多いのかなと思います。あと「茶色のアイシャドーで描く谷間はまるで浮き出るトリックアート」も、水着のときにけっこうみんなやるみたいですよ……えっと、私もやったことあります（笑）。

──あるんですね！（笑） この曲はライブでも歌われているそうですが、反応はいかがですか？

路上でも歌うんですけど、これが流れ始めると急に止まってくれる人がいたり、「『カサネテク』の人だったんですか!?」って驚かれたり。この曲だけはギターを置いて普通に歌ってて、サビで踊ると一緒にマネしてくれる人もいます。この前広島で路上ライブをしてたら、たまたま通りかかった修学旅行生の女の子がみんなでマネしてくれて「若い子たちにもこんなに浸透してるんだ」って驚きました。

──情報番組などメディアに取り上げられた反響も大きかったんじゃないですか？

年配の方が「『めざましテレビ』を観て路上ライブに来ました」って言ってくださったり、長らく音信不通だった友達から「これ歌ってるのあなた？」ってSNSで連絡が来たり（笑）。「すごい影響力だなー！」って思いましたね。

──動画の再生回数も1000万回に届きそうな勢いです。

1000万回行ったらいいなって。900万回再生の時点でもうめまいがしそうなんですけど（笑）、それだけ観られているっていうのは本当にすごいことだなって思いますね。