ナタリー PowerPush - 中島愛

旅立ちの前に

「とうめいにんげん」は消えているだけでその場に存在している

中島愛

──そして最後に……非常に不思議な余韻を残す「とうめいにんげん」でアルバムは締めくくられます。どこか恐ろしさも感じるような楽曲で。

そうですね。私もそう思います。

──昔の唱歌にあるような恐ろしさというか、ちょっと不安なメロディ進行とピアノの伴奏、声の音色にもゾクッとするものがあって。なぜ最後の最後にこの曲を置いたんだろうかと。

今までいろんな素晴らしい方に曲を書いていただいたのですが、いつもプロデューサーさんが私との対話の中から汲み取ってくださるんです。私へのサプライズプレゼントのように「なんと、この方と一緒にできます!!」と。最後はバラードで締めくくりたい、「Thank You」というメッセージの余韻や味わいを持った美しい曲で締めたいということをプロデューサーさんと話していたら、レコーディングの最後のほうでこの曲のデモをいただいて。どなたが書いてくださったんですか?って聞いたら「コトリンゴさんです」って。アルバムのテーマや5周年であることをお伝えした上で、コトリンゴさんが思いのままに書いてくださったのがこの曲で。アルバム最後の歌ですが、活動休止の裏の意味やありがとう以上の何かを暗に言っているということはないんです。

──この音とこのメロディで歌われると、いろいろ考えてしまいますよね。「あなたに打ち明けよう この夢を」の「夢」とはなんなんだろうとか。

そうですね、夢はいろいろあるけれど……。この「とうめいにんげん」というのは、旅立ちとかさようならだと、その場から立ち去ることになると思うんですけど、透明人間は消えているだけでその場に存在しているんです。その中で歌われている「夢」は……やっぱり作品が残り続けたらいいな、ということかな。私が目の前にいなくても、もっと言うとその年齢の私がこの場所にいなくても、吹き込んだ声や楽曲が半永久的に残るというのは、それ自体が夢ですね。

──それは中島さんがレコードコレクターだからこそ、より深く感じていることかもしれませんね(笑)。何気なく手に取った古いレコードに心を揺さぶられる体験を重ねたからこその実感かもしれない。

ああ、その通りですね。5年間やってきたことが、タイムカプセルのようにいつまでも残ってくれたら本当にうれしいです。

青春としての歌はひと区切り

──このアルバムを出したあと、3月20日の日本青年館公演(「Megumi Nakajima FINAL LIVE 『Thank You』」)をもって活動に終止符が打たれるわけですが、その後のことは具体的に考えているんですか?

中島愛

具体的に決めていないので無期限とさせていただいていて……これまで私は、自分の中の“青春”というタンクに詰められたものだけで歌ってきた気がするんですよね。学生時代に感じたこと、もっと言うと子供の頃に感じた気持ちを意識して作品に向かっていたと思うんです。年々好きな音楽は増えていくけど、ベースとしてあるのは中学高校の頃に寝ないで聴いていたレコードやCDなんですよね。今24歳なんですけど、あまり大人としての自分に向き合えていないというか。

──なるほど。

デビュー当時よりも年齢を重ねた自分の視点から、今まで歩んできた道をじっくり振り返りたいと思ったんです。このままではなく、自分自身が強くなるために、必要な時間だと感じました。この先もっと年を重ねて歌ったとしても、このままの自分では進めないな、って。ここで1回、青春としての歌はひと区切りになると思います。年齢だけでなく、新しく好きな音楽を見つけるとか、新しい場所に行くとか……新しい経験を重ねたあとで、いつか歌を歌ったらどうなるかなという気持ちがあります。

──確かに10代から芸能の仕事をするということは、ある意味普通の青春を犠牲にする道を選ぶことになるわけで。一度ここで道そのものを切り替えて次に進むと、これまでの経験を生かしつつも新たな表現が生まれるでしょうね。そういう意味ではむしろ期待感が高まってしまうので(笑)。

待ってますと言ってくださる方もいてくれて……。そう思っていただいているならなおさら、違う段階に行けるような人間になる努力をしたいですね。

中島愛「Megumi Nakajima FINAL LIVE 『Thank You』」

2014年3月20日(木)東京都 日本青年館 大ホール
OPEN 18:00 / START 18:30

※チケット完売

3rdアルバム「Thank You」 / 2014年2月26日発売 / FlyingDog
初回限定盤 [CD2枚組] 4095円 / VTZL-77
通常盤 [CD] 2940円 / VTCL-60362
収録曲
  1. 愛の重力
    [作詞 : 尾上 文 / 作曲・編曲 : 西脇辰弥]
  2. Carry Out!
    [作詞 : L2 / 作曲・編曲 : 長岡成貢]
  3. マーブル
    [作詞 : 岩里祐穂 / 作曲・編曲 : Rasmus Faber]
  4. あの日の海
    [作詞・作曲 : 矢吹香那 / 編曲 : 島田昌典]
  5. Wish
    [作詞 : 木村有希 / 作曲・編曲 : 木村有希・黒岩大樹]
  6. 風色のフィルム
    [作詞・作曲・編曲 : 矢野博康]
  7. Mamegu A Go! Go!
    [作詞・作曲・編曲 : 北川勝利 / ホーン編曲 : 西脇辰弥]
  8. Megu2 Magic
    [作詞・作曲・編曲 : 木村有希 / ストリングス編曲 : 長谷泰宏]
  9. そんなこと裏のまた裏話でしょ?
    [作詞 : 西直紀 / 作曲 : hirao(SpiralS) / 編曲 : mukai(SpiralS)]
  10. ありがとう
    [作詞・作曲 : 尾崎亜美 / 編曲 : 佐藤準]
  11. Flower in Green
    [作詞・作曲・編曲 : Rasmus Faber]
  12. とうめいにんげん
    [作詞・作曲・編曲 : コトリンゴ]
初回限定盤 特典CD「B面コレクション+1」収録曲
  1. パイン
    [作詞・作曲 : 春行 / 編曲 : 川口圭太]
  2. 天使の絵の具
    [作詞・作曲 : 飯島真理 / 編曲 : 桜井康史]
  3. 陽のあたるへや
    [作詞・作曲・編曲 : 宮川弾]
  4. ナイショのはなし
    [作詞 : 中島 愛・西 直紀 / 作曲・編曲 : 窪田ミナ]
  5. 星空
    [作詞 : 伊藤利恵子 / 作曲・編曲 : 西脇辰弥]
  6. パンプキンケーキ
    [作詞・作曲 : 矢吹香那 / 編曲 : 鈴木智文]
  7. 忘れないよ。
    [作詞・作曲 : 矢吹香那 / 編曲 : 清水信之]
  8. 素直
    [作詞・作曲 : Castella / 編曲 : 窪田ミナ]
  9. マーブル~Rasmus Faber Remix~ Produced, mixed and mastered by Rasmus Faber
    [作詞 : 岩里祐穂 / 作曲・編曲 : Rasmus Faber]
ライブBlu-ray「Megumi Nakajima 5th Anniversary Year's Final Live『メグミー・ナイト・フィーバー』」 [Blu-ray Disc 2枚組] 2014年2月26日発売 / 8190円 / FlyingDog / VTXL-17
「Megumi Nakajima 5th Anniversary Year's Final Live『メグミー・ナイト・フィーバー』」
「Megumi Nakajima 5th Anniversary Year's Final Live『メグミー・ナイト・フィーバー』」
中島愛(なかじまめぐみ)
中島愛

1989年6月5日、茨城県生まれ。2007年に行われたアニメ「マクロスF(フロンティア)」の歌姫オーディション「Victor Vocal&Voice Audition」でヒロインのランカ・リー役に抜擢され、2008年6月に「ランカ・リー=中島 愛」名義によるシングル「星間飛行」で歌手デビューを果たす。2009年1月には初の個人名義によるシングル「天使になりたい」を発表。声優として「マクロスF」「けんぷファー」「バスカッシュ!」「こばと。」「セイクリッドセブン」「輪廻のラグランジェ」などのアニメ作品に参加しながら、ソロアーティストとして国内のみならず海外でも積極的にライブ活動を行っており、2013年11月には東京・中野サンプラザにてデビュー5周年のアニバーサリーイヤーを締めくくるワンマンライブ「Megumi Nakajima 5th Anniversary Year's Final Live『メグミー・ナイト・フィーバー』」を成功に収めた。同年12月にオフィシャルサイトなどを通じ、2014年3月末日をもって本人名義での音楽活動を無期限休止することを発表。休止前最後の作品となる3rdアルバム「Thank You」を2月にリリースし、3月に東京・日本青年館にてラストライブ「Megumi Nakajima FINAL LIVE 『Thank You』」を行う。