音楽ナタリー PowerPush - 水樹奈々

オールタイアップの4曲入りシングル&国内外ツアーの舞台裏

「No Limit」はおもいっきり空に向かって飛ばすような応援歌

──今作に収められている4曲って、全部何かしら縁のある作品のネクストになっていますよね。「animelo mix」のテレビCM、アニメ「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)」からの2曲、そして2曲目の「No Limit」も毎回オープニングテーマを担当している「DOG DAYS」の新シリーズという。

そうですね。「DOG DAYS」は本当に前向きな要素しかない作品で、キャラクターたちはみんないつも笑顔。なので、聴いていると無条件に笑顔になれるような躍動感のある曲をいつも目指しています。今回は第3期ということで、第1期の「SCARLET KNIGHT」(2011年4月発売のシングル)の荘厳でファンタジックな要素と、第2期の「FEARLESS HERO」(2012年8月発売のシングル「BRIGHT STREAM」に収録)の駆け抜けていくような爽快感、そのテイストをどちらも取り入れて。今回の「DOG DAYS''」では登場人物たちの活動エリアがさらに広がるんです。新しいキャラクターとの出会いもあったりして。

──物語の展開と一緒に進んでいるような。

水樹奈々

はい。今回は広い空間を感じられるような、空を駆けるような感覚を取り入れたかったので、デジタルな要素を混ぜて。聴いてるととても気持ちいいのですが、歌うとかなり大変です(笑)。勢いよく畳み掛けていくのですが、反復横跳びをしたような感覚になります(笑)。全力疾走するけど、すぐにギューッと止まって方向転換するみたいな……全解放したバルブを一気にギュッと閉めたり開けたりするようなエネルギーが必要な曲なので、すごく体力を消耗します。

──基本はマイナーコードで進行して、サビの開放感あふれるメジャーコードで上昇したかと思うと、またストーン!と急下降するような。妙にせわしない曲ですよね、確かに。

そうなんです(笑)。「DOG DAYS」のキャラクターたちも成長しているので、不可能を可能にするような、エネルギッシュで頼もしい雰囲気を前作以上に出したくて。応援歌にもいろいろなカタチがあると思うのですが、この曲は一緒に手を取って駆け出していくだけじゃなく、おもいっきりオラーッ!って空に投げ飛ばすような(笑)、ジェット気流に乗せる勢いの前向きな応援歌になったかなと思います。

──耳で摂取するカンフル剤的な。

「今日はどうしてもがんばらないと!」「ふんばらなきゃ!」というときに、ぜひ聴いていただきたいです!

アンジュの弱い部分を表現した「終末のラブソング」

──3曲目と4曲目はいずれも「クロスアンジュ」関連楽曲で。「終末のラブソング」は10月からの前期オープニングテーマだった「禁断のレジスタンス」に続いて、1月からの後期のエンディングテーマとなっています。

アニメのスタッフさんから「エンディングですが、しっとりではなく、激しいものをお願いします」というリクエストをいただきました(笑)。「クロスアンジュ」って、いつもエンディングにまさかと思うような展開が起こって……1990年代のドラマのように印象的なセリフとクロスしてエンディングテーマが流れるんですよね。バトルシーンで終わることもあれば、ショッキングな出来事が起こったり、新しいキャラクターとの遭遇があったり。特に後半戦は怒濤の展開が続くので、確かにしっとり終わる感じではないなと。「禁断のレジスタンス」は「デジタルと民族楽器の融合」というオーダーがあったのですが、今回はデジタルな要素を残しつつ、ドラマチックでメッセージ性の強い楽曲にしてほしいということで、歌謡曲の要素を加えてみました。

──歌詞のほうにも何かお題目はあったんですか?

「愛」をテーマに書いてほしいというリクエストをいただきました。でも主人公のアンジュは一筋縄ではいかないキャラクターなので、素直に愛を歌うのは違うなと思ったんです。愛にもいろいろな形がある中で、アンジュらしさが出せたらいいなと思って。アンジュは言葉使いはキツくて暴力的な子なんですけど(笑)、1人のときや親しい人と一緒のときにしか見せない彼女の弱い部分を歌詞で表現したかったんです。歌い方も、熱いドラマチックな曲だけどただ熱く歌うだけじゃなく、はかなさや切なさ、女性らしいしなやかさを表現できるように意識しました。

──確かにラブソングなんですけど、使われている言葉がものすごく堅いんですよね。古語のような言葉選びというか。タイトルに「ラブソング」と入っている楽曲としてはかなり異色なんじゃないかなと(笑)。

あはははは、すみません(笑)。そうなんですよ、漢字だらけで。アンジュはヒロインだけどヒーローっぽいふるまいをする女の子で、すっごくカッコいいんですよね。その素直になれないカタブツな感じというか、恋を知らないがゆえに自分の揺れる気持ちを認めたくない!という裏腹な心の動きを出したかったんです。漢字って堅いイメージもあるけど、雅でしなやかな印象もある……どちらの面も併せ持っているような気がして。実は後半戦のキーマンとして登場するキャラクターが和装をしていたり、和を感じるモチーフもいろいろ出てくるんです。それもあって、少し古い言い回しを取り入れてみました。

ピュアでけがれのない初恋を歌った「Necessary」

──そして4曲目の「Necessary」は「クロスアンジュ」の前半5話に挿入曲として使われた楽曲ですね。ほかのパワフルな3曲から一転、唯一のバラードとなっていますが。

唯一ホッとできる楽曲です(笑)。5話の「アンジュ、喪失」では遭難したアンジュがタスクという男の子に助けられて、しばらく2人きりで過ごす時間が描かれているんです。普通の日常を送ることで、皇女であった過去、今の自分の身分や戦い、すべてのことから解放され、ただの女の子としての自分に初めて気付くんです。気持ちの変化が現れる重要なシーンで、しかもあえてセリフはなし、そこに流れてくる音楽ということで、アンジュの口にはできない素直な気持ちをつづった、ピュアでけがれのない初恋をテーマにした曲にしたかったんです。

──同じアンジュという女性の恋心を歌った曲でも、「終末のラブソング」とはまるで方向が違っていて。

そうですね。目が合ってニッコリ微笑んだだけでもドキッとしちゃうような、本当にみずみずしい恋のイメージです。

──でも歌詞は唯一水樹さんご自身ではなく、男性の松井五郎さんが書いているという。

揺れる乙女心を美しく書いていただきました(笑)。

──話を聞いてみると、挿入歌って同じアニメの音楽でもオープニングやエンディングとはまったく機能の違うものなんですね。

そうなんです。特に今回はセリフがないシーンでの挿入歌だったので、2人が大事な何かを育んでいるのかもしれない、アンジュの心に変化があったのかもしれないと察していただける楽曲に……と、絵コンテを見ながら考えていきました。

ニューシングル「エデン」/ 2015年1月14日発売 / 1296円 / KING RECORDS / KICM-1567
収録曲
  1. エデン
  2. No Limit
  3. 終末のラブソング
  4. Necessary
ライブDVD / Blu-ray「NANA MIZUKI LIVE FLIGHT×FLIGHT+」/ 2015年1月14日発売 / KING RECORDS
Blu-ray Disc4枚組 / 8316円 / KIXM-185~8
DVD6枚組 / 8316円 / KIBM-483~8
水樹奈々(ミズキナナ)

愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコン週間ランキング1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収めた。2013年には台湾にて初の海外公演を行い、2014年4月には通算10枚目となるオリジナルアルバム「SUPERNAL LIBERTY」を発表。同年末には6年連続となる「NHK紅白歌合戦」への出場を果たした。2015年1月には通算31枚目となるシングル「エデン」とライブDVD / Blu-ray「NANA MIZUKI LIVE FLIGHT×FLIGHT+」を同時リリース。