MISIA|多様な出会いの集大成

MISIAが1月22日にベストアルバム「MISIA SOUL JAZZ BEST 2020」をリリースする。

2013年2月発売の「MISIA SUPER BEST RECORDS -15th Celebration-」以来、約7年ぶりのベストアルバムとなる本作は、トランぺッターの黒田卓也とのコラボレーションによる“SOUL JAZZ”がコンセプト。ビッグバンドによる「Everything」「つつみ込むように…」「アイノカタチ」などの再録バージョンに加えて、堂本剛、MIYACHI、マーカス・ミラーといった豪華なアーティストとコラボした新曲も収められるなど、充実の内容となっている。

音楽ナタリーでは、アルバムの制作プロセスや本作を携えて開催されるアリーナ公演「MISIA SOUL JAZZ BIG BAND ORCHESTRA. SWEET & TENDER」などについて、MISIA自身に語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

出会ってきた音楽のすべてが“SOUL JAZZ”

──約7年ぶりのベストアルバム「MISIA SOUL JAZZ BEST 2020」がリリースされます。まずは“SOUL JAZZ”をテーマにベストアルバムを制作した経緯について教えてもらえますか?

「次にどんな音楽を自分がやりたいか」と「どういう音楽を届けたら、皆さんに楽しんでもらえるか」を考えたときに、「“SOUL JAZZ”をテーマにしたビッグバンドのライブをアリーナでやるのはどうだろう?」という話が出てきて。今まで誰もやったことないライブだと思ったし、「だったら“SOUL JAZZ”のベストアルバムを出せば、もっと楽しんでもらえるはず」ということになったんです。過去の作品から選曲するのが通常のベストの形ですけど、それだけだとちょっとつまらないというか、現在進行形の音楽を届けたい気持ちもあって。ライブでは“SOUL JAZZ”のスタイルでリアレンジしたナンバーも発表していたし、新曲もどんどんできていたので、それも形にして残しておきたかったんですよね。しかも今回は、ビッグバンドと一緒にニューヨークでレコーディングしたナンバーも収録しました。

──“SOUL JAZZ”をコンセプトに掲げた最初の作品は、2017年の「MISIA SOUL JAZZ SESSION」です。このプロジェクト自体も作品やライブを重ねるたびに進化していますよね。

そうですね。“SOUL JAZZ”のスタートは3年前。トランぺッターの黒田卓也くんにアレンジをお願いして、ニューヨーク在住のミュージシャンを中心に、みんなで音楽を作るところから始まったんです。黒田くんのアレンジって、ジャズ、ソウル、アフロビート、ゴスペル、R&B、ヒップホップ、とにかく出会ってきた音楽のすべてがミックスした感じの音楽で面白い。私も同じようにいろんな音楽に出会っているので……。世界的にもそういう流れってありますよね。それでアルバムを出すときに、この新しい音楽に“SOUL JAZZ”と名前を付けました。彼らとは常に一緒にいるわけではなくて、半年ぶり、1年ぶりくらいのペースで会っているんですが、そのたびに凄く刺激を受けるんです。私も「彼らに刺激を届けられたらいいな」と思うし、いい意味でライバル心みたいなものもあって。それと同時に一緒に積み重ねてきたものもあるので、どんどん呼吸が合ってきて、成熟している部分もありつつ、マンネリ化せず、いつも新しい。私自身もすごく楽しい。

原曲の新たな魅力を引き出すアレンジ

──黒田さんをはじめ、ラシャーン・カーターさん(B)、アダム・ジャクソンさん(Dr)など、今のニューヨークのジャズを代表するミュージシャンがそろっていて。今回のアルバムでも素晴らしい演奏を聴かせてくれています。

本当に素晴らしいですよね。ミュージシャンに対して、「この人の音は好きだな」と感じる主軸は、一発目の音で心が持っていかれるかどうかなんです。どの楽器でも、パン!と音が鳴った瞬間にハッとさせられたり、「すごい!」と惹き付けられることが私にとっては大事なんです。今回の制作でも、そういうことがたくさんありました。

──アレンジは、MISIAさんと黒田さんでやり取りしながら進めたんですか?

MISIA

基本は、カッコよくアレンジお願いします!ってスタンスで、お任せして投げているんですが、今回は私からも「こうしてほしい」ということを話したりしました。例えば「Everything」は、「歌の最中はコードは変えてもいいけど、オリジナルに近いコードで、間奏などで黒田節が出てくるようなバランスでやりたい」とお願いしました。バラードって、聴いてくださる方が「ここはちょっと不思議だな」と感じる瞬間があると、なかなか入り込めないと思うんですよ。なので歌中のコードに関しては、なるべく原曲に近いほうがいいかなと。

──原曲のメロディを変えすぎると、リスナーは違和感を覚えるかもしれないですからね。

特に「Everything」は、もともとのメロディとそれを生かすアレンジが素晴らしいですからね。逆に言えばメロディを動かしづらい曲なんですけど、今回アレンジではメロディを好きに動かせるコード進行になっているので、いろいろな歌い方やアドリブも引き出させてもらえて。歌っていて楽しかったですね。

──“SOUL JAZZ”のアレンジによって、原曲のよさにこれまでとは違う表現が加わったと。

はい。「Everything」は2000年に発表した楽曲で、20年経った今もこうやって歌えることがまずうれしくて。原曲がいいからこそ、こうやって新しい形にできたのだと思いますし、メロディの背景にあるソウルフルなところをやっと表現できたという喜びもありますね。