ナタリー PowerPush - MiChi

同じ空の下、気持ちは1つ 「ONE」が伝えるメッセージ

3月11日の東日本大震災。MiChiはその直後、以前から温めていた新曲「ONE」を自らの意思でWEB上にアップした。「同じ空の下、誰もがつながっている」というメッセージを祈るような表現で綴った楽曲は、たちまち多くの反響を獲得。今回、シングルとしてのリリースが決定した。

「ONE」の歌詞は、MiChiの心の中にずっとあった思いをただストレートに連ねたもの。だが、そのシンプルな構成にこそ“歌の魔法”が存在するような気がする。聴く者の心を自然と前へ向かわせる今作は、改めて歌の力を気付かせてくれる1曲だ。4月にはボランティアで被災地を訪れたというMiChiが、今作に込めた思いと、現地での貴重な体験談を聞かせてくれた。

取材・文/川倉由起子

「ONE」は今、伝えておかなきゃ!って

──ニューシングル「ONE」のお話をするには、まず3月11日のことをお伺いするべきなのかなと。震災後、まずWEB上にこの楽曲をアップされたわけですが、それはなぜだったんでしょうか?

はい。震災が起こった直後は動揺のほうが大きかったんですけど、すぐに何かアクションを起こしたいと思って。WEB上に「ONE」のビデオクリップをアップしました。といっても、そのときはプライべートで撮りためた風景の写真をつなぎ合わせただけのものだったんですけど。

──震災を受けてから書き下ろした新曲というわけではないんですね。

「ONE」は、元々あった曲で、制作は去年のうちに終わってたんですよ。去年の最後の仕事がこの曲のレコーディングでした。

──当時はシングル用に作っていたわけでなく?

そう。次のアルバムの最後の曲にどうかな? ってイメージをしてたくらい。でも、大変な日本の状況を見たときにふと「『ONE』は今だ!」って思ったんです。今伝えておかなきゃって。

──MiChiさんがそう思ったのは、「ONE」という曲が持つ強いメッセージが理由ですよね。それについては後ほどじっくりお聞きしますが、WEB上に公開した後は反響がすごかったそうで。

ラジオ局から音源の問い合わせがあったり、ブログにたくさんコメントをもらったりしました。被災地の人じゃなくても、あのときはみんな精神的に少しやられてるところがあったじゃない? だから「癒された」とか「また前を向けた」っていう反響がいっぱいあったのはうれしかった。少しでも気持ちがラクになってもらえてたなら、本当にアップして良かったなって。

人と人がつながれば、絶対乗り越えられないものはない

──「ONE」の歌詞には、改めて人と人とのつながりの大切さを伝えるメッセージが描かれていますね。

ずっと「世界ってひとつだな」ってことはわかってたんだけど、それをとても強く感じる時期があって。例えば、MiChiは今家族と離れて暮らしてるけど、同じ空を見てたり、実はすごい近いところにいるなっていうことを思って、基本的にはそういう考えから生まれた歌詞なんです。

──そう感じたきっかけは何かあったんですか?

当時読んでた本や、テレビで観たドキュメンタリーの影響もあるかもしれない。でも、空を見上げて何かを願ったり、流れ星を探して家族の健康を祈るとかっていうのは、昔からいろんな人がやってたり、思ってることだなって。人とつながってることがわかると、優しさを感じられたり、自分が優しくなれたりするじゃない? それって、みんな同じだと思うんですよ。どんなに違う国や環境にいたとしても、心はつながってるから。

──震災を意識して作った曲ではないけど、この時期に聴くと、そのメッセージがより胸に響きますね。「ONE」というタイトルどおり、1人ひとりが個々の存在だったとしても、思い合ったり助け合っていけばつながれるはずだっていう。

うん。そうすれば、絶対乗り越えらないものはないと思う。この曲は1年前に作ってたし、いつ出してもメッセージの大切さは変わらないけど、今だからこそ耳を傾けてほしいというか。だからこそ「タイミングは今だな」って思ったんです。

──なんだか不思議なめぐり合わせを感じますね。

本当にそう。これまで出さなかったのも意味があったんだなって。それがこの曲の運命だったんだって気さえしますね。

ニューシングル「ONE」 / 2011年6月22日発売 / 1200円(税込) / Sony Music Associated Records / AICL-2265

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CD収録曲
  1. ONE
  2. LiFE CLOCK
  3. DON'T DREAM IT'S OVER
  4. YEAH YEAH YEAH!!! (REMIX)
MiChi(みち)

1985年イギリス生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。2歳から10歳までを神戸で過ごし、1995年阪神・淡路大震災の後、再びイギリスに移住。10歳から18歳までのもっとも多感な時期をバーミンガム近郊で暮らし、シンガーを夢見る。18歳で再来日し、プロデューサー松澤友和とともに東京で本格的な音楽活動をスタート。2008年10月「PROMiSE」でメジャーデビュー。ユニクロの世界キャンペーンキャラクターとしてCMに出演するなど幅広い活躍を見せる。2009年9月に待望の1stフルアルバム「UP TO YOU」をリリース。現在もライブなど精力的な活動を続けている。