ナタリー PowerPush - MERRY

試練を超え“ZERO”から再始動

欲しいものは自分で取りに行く

──結成12年目を迎えて、ここからが本当の勝負だと。その強い気持ちは「ZERO -ゼロ-」の歌詞の中にも表れてますよね。

ガラ レコーディングの段階から「『ZERO』というタイトルでいきたい」という話もしましたからね。なんて言うか、自分の中で「活動休止はマイナスじゃなかったんだ」って思い込みたいところもあったんじゃないかなって。ただゼロに戻っただけなんだ、ここからまた始めるんだっていう……。入院中の病院のベッドでメモしてた言葉も含まれてるんですけどね、その中には。今年は自分の入院や手術もそうだけど、おばあちゃんが亡くなったり、バンド以外のところでもいろんなことがあって、人生観が変わった時期でもあったんです。だから歌詞の深みだったり、言葉の強さ、吐き出し方も変わってきてるんじゃないかな、と。もちろんバンドの曲なんですけど、ガラ個人としても自分を引っ張っていける曲だと思いますね。

ネロ(Dr)(撮影:中島たくみ)

──バンドのサウンドからも、新しい場所に向かっていく勢いを感じました。

ネロ 2年前に「Beautiful Freaks」というアルバムを出してからは、「ジャンルの壁を越えて、いろんなところに出て行こう」という決意を持ってイベントにも出演して。でも、なかなかもどかしいというか、ちょっと甘かったなって部分も正直あったんです。ジャンルの壁を作ってたのは自分たちかもしれないなと思ったし、いろいろと葛藤も感じていて。その殻を破りたいという気持ちもありましたね、この曲を作ってるときは。

ガラ 自分たちが思うほど開けてなかったし、他力本願なところもあったなって。「何か新しいことがあったらいいな、うまくいったらいいな」ではなく、欲しいものがあるんだったら、自分で取りに行けばいいんですよね。あと、最近はジャンルの壁を越えるんじゃなくて、いろんなジャンルに溶け込むというか、混ざってしまえばいいと思うようにしてて。そう考えるようになってからは、すごく気がラクになりましたね。「ZERO -ゼロ-」というタイトルを掲げたことで、今までやったことがないことにも挑戦しよう、という気持ちにもなったし。

──なるほど。

ガラ 自分がこだわりすぎていて、見えなくなってた部分もあったかなって。僕、今までステージで靴を履いてなかったんですけど、野音のときは靴を履いたんですね。でも、お客さんにはあんまり知られてなくて(笑)。靴を履くっていうのは自分の中ですごくデカいことだったんだけど、「別に大したことじゃなかったんだな」ってことにも気付いて。逆にお立ち台の机はMERRYの顔というか、ステージセットがなくても、机さえあれば成り立つということもわかったり。ファン目線で「MERRYってこういうバンドなんだな」ということを見られるようになったのかもしれないですね。

──そういえばアーティスト写真のイメージもこれまでとは違いますよね。

ガラ そうですね。こういうライブっぽい写真も今まではなかったし。たぶん、ファンの人の中には「えっ?」って思う人もいると思うけど、それくらいじゃないと、ファン以外の人には届かないんじゃないかなって。

健一(G)(撮影:中島たくみ)

──自由度が増したという言い方もできそうですね。音楽的な幅はもともとすごく広いバンドだし。

ネロ このバンド名も「ジャンルに捉われず活動できるように」ということを考えて付けたので。12年前から掲げていたことなんですけど、最近やっと、1つひとつつかみ始めたのかな、と。

ガラ うん。

ネロ 10年以上やってると、頭が固くなってくる部分もあると思っていて。そこは柔軟にいろんなものを吸収しながら、新しいものを生み出していきたいですね。もちろん、「ここだけは守らなくちゃ」というところもあるんですけどね。12年間ずっとファンに愛してもらってるのは曲の持つ哀愁というか、切ない部分だと思うし。あとはパンキッシュで攻撃的なところだったり。ファンが求めていること、自分たちがやりたいことを含め、いろいろと考えながらやってる感じです。

ガラ 例えばROTTENGRAFFTYのツアーに参加することになったときも、彼らのライブを観て、「MERRYが持ってなくて、この人たちが持っているものってなんだろう?」って考えたり。逆にウチにあって、ロットンにないものもあると思うんですけど、その中で「これは必要だな」と思えば取り入れればいいし。

崖の下に落として「上がっておいで」

──今回のシングルの通常盤にはROTTENGRAFFTYが参加した「絶望」の新バージョンも収録されてますね。

ネロ いい架け橋になってくれてるんですよね。あの人たちもジャンルに捉われず、いろんなバンドと対バンしてるし。それが自然にできてるっていう。

ガラ 今回のレコーディングでも「魂を入れに行く」って言ってくれてたんですけど、まさにその通りのことをやってもらった感じですね。ROTTENGRAFFTYはちょうどライブ期間中で、レコーディング当時は3日続けてライブをやったあとだったんです。「俺だったら断るだろうな」って思ったけど、あの人たちはそうじゃなくて「MERRYに誘われたから」って熱い気持ちで来てくれて。やっぱり強いんですよね、バンドとして。

結生(G)(撮影:中島たくみ)

──いろんな経験を積んでるバンドですからね。

ガラ 俺らも同じ道を進もうとしてるから、こっちが考えてることやもがいてることもわかるんでしょうね。だからこそ、手を差し伸べてくれるんだろうし。ただ、あの人たちはただ手を差し伸べるだけじゃなくて、崖の下に落として、「上がっておいで」っていう厳しさも持ってるというか。ツアーに参加したときも「少なからずアウェーだろうけど、そこはお前らがなんとかしろ」って言われて。そうすると俺らも「よっしゃ、やってやるぜ」という気持ちになれるし。

ネロ あとはアウェー感を楽しめるかどうかっていうことですよね。MERRYのことを観たことないお客さんがごっそりいる状況なんて、最近はなかなかないですから。ちょっと語弊があるかもしれないけど、「こんなに楽しいことはないな」って思えたし、いい意味で開き直って、いいライブができたんじゃないかな、と。あと、そういう場所って反応がリアルなんですよね。ライブのあとで男の子が話しかけてきて「面白いバンドですね。次も絶対観に行きます」って言ってくれたり。それは近年では感じたことがないうれしさでした。

ニューシングル「ZERO -ゼロ-」 / 2013年11月6日発売 / FIREWALL DIV.
初回限定盤A [CD+DVD] 1890円 / SFCD-123~4
初回限定盤B [CD+DVD] 1890円 / SFCD-125~6
通常盤 [CD] 1260円 / SFCD-127
CD収録曲
  1. ZERO -ゼロ-
  2. ワルツ
  3. 絶望 feat.NOBUYA & N∀OKI from ROTTENGRAFFTY(※通常盤のみ)
初回限定盤A DVD収録内容
  1. ZERO -ゼロ- (MUSIC VIDEO)
  2. MAKING OF 「ZERO -ゼロ-」
初回限定盤B DVD収録内容
  • 復活ドキュメント 20130213-20130810
MERRY(めりー)

2001年にガラ(Vo)を中心に結成された5人組バンド。全国のインディーズショップへのデモMDばら撒きやシークレットライブを繰り返し活発に活動していくとともに、激しさと憂いの両方を内包したサウンドで頭角を現していく。2003年には東京・日本青年館で初のホールライブを行い、清春のレーベル「FULLFACE RECORDS」から1stアルバム「現代ストイック」を発表するなど、個性的な活動を展開。2005年9月にアルバム「nuケミカルレトリック」でメジャーデビューを果たし、2006年からはドイツやフランスをはじめとする海外公演やCDリリースなど、ワールドワイドな活動を行う。2009年にDIR EN GREYらが所属するFIREWALL DIV.に移籍し、コンスタントに新作のリリースやライブを重ねる。2013年2月よりガラの椎間板ヘルニア悪化に伴い一時活動休止するも、同年8月より活動を再開した。