まつきあゆむがミニアルバム「まつきあゆむ」をリリースする。
彼はMySpace上で毎週新曲を発表するという無謀な企画「新曲の嵐」を現在も継続中。その企画で生まれた大量の楽曲の原型をもとに計8曲を厳選し、丁寧に作り上げたこのアルバムは、まつきあゆむ史上最高にポップでディープな傑作になった。
「自宅録音」「初期衝動」といった過去のイメージのみにとどまらず、さらに広い世界に向けて自身の音楽を問うこの作品。音楽家としての新たなスタートを切ったこの意欲作について、まつきあゆむ本人にじっくりと語ってもらった。
取材・文/大山卓也 インタビュー撮影/中西求
取材協力:mona records

−−今回の作品について、まつきさんは各所で「最高傑作」と発言していますが、大上段に構えた大作というわけではなく、非常にポップな楽曲が並んだ親しみやすいアルバムになっていますね。
うん、このアルバムを「最高傑作だ」って言ってる理由は、何かをガラッと変えたという意味ではなくて、今やりたいことが全部できてるっていう意味なんです。今やりたいことをちゃんとアルバムの中でやれたし、曲も全部いいものができたし、すごく満足してます。
−−初期のまつきさんの曲にあった刺々しさが和らいで、今回は優しくて穏やかな雰囲気を強く感じます。
そうですね。前は「今の音楽シーンで俺はこういう位置に立とうと思っているから、こういう音楽を作っていこう」みたいな打算的な部分があったんだけど、最近そういうことにあまり興味がなくなってきて。
−−それは丸くなってきたということですか?
丸くなったのとはまた違いますね。自分自身はむしろ前より尖ってきている気がします。でも、自分が尖っていくことと音が尖っていることとは関係ないと思うんですよ。例えばビートルズなんて、ものすごく鋭いのに子供からおばあちゃんまで歌えるでしょう? 尖り方が最終形に行き着くと、世界を飲み込むんじゃないかと思います。そういうところまで行き着きたいですね。
−−歌詞もだいぶ変わりましたよね。以前は「フェンダーテレキャスター」とか「マルボロライト」のような固有名詞がよく出てきていたし、それがまつきあゆむ的な世界観を作っていたと思うんですけど。
固有名詞を使うやり方がね、今自分のやりたい音楽とリンクしなくなってきているんですよ。例えば「タバコを吸っている」って歌詞を書くのでも、以前だったら「マルボロライトを吸っている」みたいに書いたと思うんですけど、もうそういうことはさんざんやり尽くした感があって。もちろんそういうのも今でも好きなんですけど、曲を作るエネルギーとは別に、俺はこういう歌詞を書く人間だっていうイメージに引っ張られてしまうのは違うと感じてて、それでどんどん切り落としていきましたね。
−−じゃあ最初から「こういうアルバムにしよう」っていう方向は見えていた?
まあ「俺らしくないアルバムができてしまったら捨てよう」というか、「RECボタンを押して全部消してやる!」ぐらいの気持ちはありましたね。そういうのは最初にスタッフみんなに伝えてました。

−−ところで唐突ですけど、今回のアルバムはビートルズで言うとどのアルバムに近いと思いますか?
僕は毎回「リボルバー」ぐらいの作品を狙って作ってるんですけど、今回のは「ラバー・ソウル」かな。いろんな曲調が入っているのにポップに歌モノとして成立している感じが。
−−なるほど。実は僕も同じように感じていて、今回のアルバムはなんとなく“中期の作品”っぽい印象を受けたんです。これが到達点ではなく、このあとに「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が来そうなイメージがあって。かといって初期の作品とは違うし。
そうですね。僕はたぶん誰よりもビートルズを愛してますけど(笑)、初期は実はそんなに好きじゃないんです。この時代があってその後で「サージェント・ペパーズ」ができていくのがいいよねっていう意味では好きなんですけど。だから僕も中期っぽい、濃い音が好きなんでしょうねえ。

2008年5月21日発売 / 1500円(税込)
RESI-2013 / UMA/RESERVOTION RECORDS
まつきあゆむ
1983年生まれの"初期衝動音楽家"。学生時代から自宅録音を行い、 2005年5月に1stミニアルバム「自宅録音」を発表。初期衝動を凝縮した宅録サウンドが話題を集め、2006年9月にフルアルバム「ディストーション」、2007年6月には「夕暮れの現代音楽」をリリース。バンドセットでのライブや、個性的な自宅録音など精力的な活動を続ける。
2007年9月からは「新曲の嵐」と称して、MySpace上で毎週月曜日に新曲デモを永続的に発表するという企画を開始。2008年5月にはミニアルバム「まつきあゆむ」を発表している。