音楽ナタリー Power Push - 魔法少女になり隊×大谷ノブ彦(ダイノジ)対談

プレイヤー時代を突き進め!“RPG系バンド”がメジャーフィールドへ出発

“RPG系バンド”魔法少女になり隊がシングル「KI-RA-RI」でソニー・ミュージックレコーズよりメジャーデビューを果たした。これを記念して音楽ナタリーでは魔法少女になり隊に興味津々だというダイノジの大谷ノブ彦との対談を企画。“RPG系バンド”とはどのようなバンドなのか、彼らの目指すべきゴールはどこなのか……対談を通して彼らの魅力に迫る。

取材・文 / 清本千尋 インタビューおよびライブ撮影 / 後藤壮太郎

私たちはまだチュートリアルが終わったところ

大谷ノブ彦 お話するのは初めてですね。4人はどうやって出会ったんですか?

gari(VJ, Vo) こちらの動画を観ていただけるとおわかりいただけると思います!

大谷 なるほど……バジルさんはしゃべることができないんですね。

gari そうなんです。だから今日も筆談で参加します。

火寺バジル(Vo)

火寺バジル(Vo) (おはようございます! 魔法少女になり隊のボーカル火寺バジルです。魔女の呪いによりしゃべれません。筆談で話します。よろしくおねがいします!!)

大谷 よろしくお願いします。バジルさん、しゃべることはできないけど歌うことはできるんですね。

gari 歌声は1つの魔法なんですよ。バジルさんの歌は「ドラクエ」(人気RPG「ドラゴンクエスト」)で言うところのベギラマとかを詠唱しているのと同じなんです。

大谷 なるほど。だから“RPG系バンド”ということなんですね。

gari 「魔法少女になり隊」というゲームがあって、僕らはそのゲームの登場人物。そしてリスナーはプレイヤーなんです。だから僕らの冒険がどう進んでいくかはプレイヤー次第なんですよ。

大谷 へえ、面白いですね。でもそれだとクリアしちゃうのが寂しいですよね。そうなったらバンドは終わりってことでしょう?

ウイ・ビトン(G) 僕ら、クリア後のことはまだわからないんですよ。

魔法少女になり隊とダイノジ大谷ノブ彦。

明治(G) どうなるんだろうね?

gari 僕らはやっと始まりの街を出たところなので、この先のことは全然……。

バジル (私たちはまだチュートリアルが終わったところなんです。)

gari だから実はまだ敵と戦ったことが一度もないんですよね。「魔女が大切にとっておいたおにぎりを勝手に食べてしまった」というバジルさんの自分勝手な気持ちみたいに、人が誰でも持っている“ダークネス”という悪い心を浄化するために、その対極にある楽しいとか幸せな心“ハピネス”を集め始めたところ。その“ハピネス”をたくさん集めたら、バジルの呪いが解けるかもしれない、もしかしたらバジルが憧れていた魔法少女になることができるのかもしれないということでライブを重ねていて。“ハピネス”を集めることでそれが叶うのかどうかはまだわからないんですけど……。

明治 その可能性を信じて今は“ハピネス”を集め続けています。

お客さんは“魔法少女になり隊”のプレイヤー

大谷 さっきからギミック的な話をしてるけど、魔法少女になり隊って実はかなりオーセンティックなロックバンドなんじゃないかなって僕は思ってるんですよ。その“ハピネス”を生み出したいという行為は、要はロックで世直しをしたいということなんじゃないかなって。それをポップな形で提示しているように感じるんです。

gari(VJ, Vo)

gari ありがとうございます。

大谷 僕「ドラクエ」をやりこんでいたからか、RPGという言葉につい惹かれるんですよね。ライブを観てみて、“体感したいバンド”だなと感じました。

gari 我々はあくまでゲームの登場人物であって、お客さんはプレイヤーでいてほしいんですよ。だから一番大事なのはライブ。それがプレイしている時間になるわけで。僕らの音楽を聴いた人に「体感したい」と言ってもらえるのは最高の褒め言葉かもしれない。

大谷 僕はDJをやってるんですけど、とっくの昔にお客さんが主役だって言うことに気付いていて。いつからかクリスマスよりもハロウィンが盛り上がるようになったのって、能動的に参加できるからだと思うのね。フェスとかでもお客さんたちが写真を撮るためのブースがわざわざ設けられるでしょ。ユーザーやオーディエンスが主権を握るようになってきたと思うんですよ。

gari 確かに。

大谷 あと僕、はっきり覚えてるんですけど、2010年にONE OK ROCKがステージの上で「ここに俺が立てるってことはお前らも立てるから」って言ったんです。ほかの人が言ってたら到底そうは思えなかったのに、その言葉がとても説得力があって印象に残っていて。今の中学生の将来の夢ランキングって、3位にYouTuberがランクインしてるんですよ。これは明日にでもすぐになれるものへの憧れだと思うんですけど……要はプロフェッショナルとして技術が高いということよりも、「君でもできるよ」が求められてるんじゃないかなって。魔法少女になり隊がやってることもそういうことなんじゃないかなとも思ったんですよね。

魔法少女になり隊とダイノジ大谷ノブ彦。

gari お客さんが主体というのは僕らの活動にピッタリの言葉ですね。お客さんは僕らを動かすプレイヤーなわけですから。

大谷 なんか今のやり取りでわかってきた。魔法少女になり隊の場合は表現方法がたまたまバンドだっただけで、根本的にこの4人は“ハピネス”を集めるために“魔法少女になり隊”になったんですよね? で、その“ハピネス”を集める方法がバンドだったと。

gari はい。その通りです。

大谷 だからそれが超新鮮でありつつ、ちゃんと人懐っこさもあるところも魔法少女になり隊の魅力。目新しいのにスッと懐に入ってくるような人懐っこさがあるってすごいことですよ。発明だと思います。

メジャーデビューシングル「KI-RA-RI」 / 2016年9月21日発売 / MASTERSIX FOUNDATION
初回限定盤 [CD+DVD] / 1800円 / SRCL-9178~9
通常盤 [CD] / 1300円 / SRCL-9180
CD収録曲
  1. KI-RA-RI
  2. ハレ晴レユカイ
  3. MEGA DASH
初回限定盤DVD収録内容
  1. 魔法少女になり隊 序章
  2. 冒険の書1
  3. 狂騒曲ザラキ
  4. RE-BI-TE-TO
魔法少女になり隊 ワンマンツアー 2017~メロディア王国にさよならバイバイ ワタシはみんなと旅に出る~
  • 2017年1月21日(土)愛知県 APOLLO BASE
  • 2017年1月27日(金)大阪府 Shangri-La
  • 2017年1月29日(日)東京都 TSUTAYA O-WEST
魔法少女になり隊(マホウショウジョニナリタイ)

魔女にしゃべることができない呪いをかけられてしまった魔法少女見習い・火寺バジル(Vo)の呪いを解くべく、“歌”という魔法を使いながら冒険を続けている“RPG系バンド”。メンバーはバジルのほか妖精のgari(VJ, Vo)、スナイパーのウイ・ビトン(G)、女剣士の明治(G)がいる。4人はバジルの呪いを解く鍵となる“ハピネス”を集めるため、ライブ活動や音源のリリースを行いながら冒険中。シャウトを多用したラウドロックにエレクトロポップ要素をかけ合わせたハイブリッドな楽曲でロックファンを魅了する一方、私立恵比寿中学に楽曲「ちちんぷい」を提供したことをきっかけにアイドルファンからも熱い支持を集めている。インディーズ時代にリリースした作品はアルバム「冒険の書1」、シングル「BA・BA・BA ばけ~しょん」の2作。2016年9月にソニー・ミュージックレコーズより「KI-RA-RI」でメジャーデビューを果たした。

大谷ノブ彦(オオタニノブヒコ)

1994年に大地洋輔とお笑いコンビ・ダイノジを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。音楽や映画などのカルチャーに精通しており、コラムサイト「cakes」にてライターの柴那典と共に音楽放談「心のベストテン」を連載している。また相方の大地と共にロックDJ・DJダイノジとしても活動しており、DJパーティ「ジャイアンナイト」やロックイベント「DRF」などを開催している。