譜面書けるようになりましょうか、そろそろ

──例えば、スポーツの世界だったら足が速いほうが絶対的な正義だし、球を遠くに飛ばすほうが絶対的な正義だったりしますよね。でも音楽の場合は、別にうまい下手で感動の度合いが決まるわけじゃない。

斉藤　そうですね、うん。

──下手であっても感動する場合もあるし、逆もあるし。それが厄介。

斉藤　ですよね。でも、ピカソだってああいう斬新な絵を描きながら、本当はデッザンだってすごいわけじゃないですか。でも、自分にはその“基礎”がないっていうのがずっと心に引っかかっていて。

中村　それ俺もあるなあ。

斉藤　ミュージシャンとして“デッサン力”というか、基礎の技術がないってのがずっと引け目ではあるんですよね。

──誰かに習ったこととかあるんですか？ ボイトレとか……。

斉藤　まったくないですね。

中村　俺、ヤマハ音楽教室に行ってました（笑）。

斉藤　最近、50歳になってジャズギターとか習いに行ってみようかなとか、気持ちだけはあるんですけどね。

中村　気持ちだけだね。

斉藤　うん（笑）。もうちょい理論がわかったら、ジャムってるときに、ここでこんなフレーズに行ったらこうなって、また新たな展開になるんだろうなとか、わかるじゃないですか。

──感覚だけじゃなくて、理論で。

斉藤　そうですそうです。でもつい手癖でこっちいっちゃうから、また前とおんなじ感じになっちゃった、とか。

中村　俺も習いに行こうかなー。

──それは何か、寄りどころが欲しいっていう感じでもあるんですか？

斉藤　寄りどころなのか……なんですかね。そういうのはどっか否定してきたというか、バカにもしてたんですけどね。音楽学校なんて必要はないと思ってたけど。あるジャンル、ジャズだのクラッシックだのに関しては、あれはアリなのかもって最近は思うんですよね。

──最近音楽学校出身のバンドってけっこういますよね。

斉藤　ボーカル科みたいなのはなくなればいいといまだに思ってるけど、ギターとかに関しては、ここまで適当にやってきて、今改めて基礎や理論を習うのはアリなんじゃないかとか。あ、こういうことなってたのね！みたいなのを知るのは悪いことじゃないような気がしてる、最近は。

──なるほど。

斉藤　田島貴男が僕と同い年なんですけど最近ジャズギターを習いに行ってて、劇的にうまくなってるんですよ。ほんで「接吻」1つやるのでも、裏コードなりなんなりを使ってるからすごいことになってて、しかもそれを嫌味なくできちゃってるんです。楽屋に一緒にいると譜面とか書いたりしてて、「譜面書けんのー！ すげー！」とか思う。

中村　譜面書けるようになりましょうか、そろそろ。

斉藤　譜面ねー。たっつぁん書けるし読めるもんね。ビックリしたもん、たっつぁんが譜面読んでたとき。

中村　あれはでたらめだよ。自己流。

斉藤　そうなの？

中村　でも、サラサラ書けるといいだろうね。

──でも、この2人でやってる分には、そのへんはあんまり考えないで自然体でできてるわけですよね。

斉藤　そうですね。

2人がお互いの補助線になっているMANNISH BOYS

──さっきのダウンタウンの漫才におけるツッコミっていうか補助線というか、その話の続きをすると、MANNISH BOYSってお互いがお互いの補助線になっている感じもあるのかな、と。

斉藤　おおおっ！

──斉藤さんがいるから達也さんの面白さがみんなにわかりやすく伝わってるし、達也さんがいるおかげで斉藤さんもソロとは違う部分をわかりやすくみんなに伝えられているというか。

斉藤　ああ、そうかも！

中村　おお!? なんだ、じゃあ再結成するか！ って俺ら結成してるわな（笑）。

──ははは（笑）。お互いがお互いのこと面白がれる関係というか。

斉藤・中村　うん。

斉藤　2人っていうのがいいのかも。3人だったり、4人だったりするとジャムっててもこう……。

中村　なんかねー、やってる人の意識の低い高いとかじゃなくて、やっぱり性格が出るというか。俺なんかけっこう丸く収めようとするから（笑）、濁っちゃう場合がある、相手によって。

斉藤　そうだよね。

中村　ものすごいとんがってる人だと、そっちに持っていかれちゃったりするし。どうすんの、どうすんのって気を遣っちゃうほうだから、ヘンにまとまっちゃったりする。もっと自分でとんがったもんができるようにしたいなと思ってますね。

はよ練習せなあかんわ！

──アルバムリリース後はツアーが始まりますが、30公演とずいぶんたくさんやりますね。

斉藤　そうですね。ツアーは今まで3、4回やってますけど、10本くらいでしたからね。だいたいこうやればいいんだってわかる頃に終わってるもんね。

中村　っていうか、やべえ、もうじきじゃん！ どうすんのこれ？ ねえ。練習せな、練習！ 歌も歌うんでしょ、あなた！

斉藤　そうですよ（笑）。

中村　自分たちのコピーせなあかんなあ……。

斉藤　また堀江（博久）くんがベース、キーボードで入って3人でやるんですけど、今回アルバムにトランペットとか入ってたりするから。そういうのをどう表現するのか考えるのはこれからですね。

──達也さんはライブで歌うのにだいぶ慣れたのでは？

中村　俺が？（笑） 慣れないけど。まあ、慣れるっていうか、歌うのはMANNISH BOYSで始まったことだもんね。おかげでいろんなところに気付いたりして。歌ってなんか、言葉のタイミングとかテンポとかいろんなことがあるんだなとか気付いたりしますね。

──自分が歌ってみると、歌いやすいドラムってこういうふうだなとか、わかりましたか？

中村　全然わからん！（笑）

斉藤　僕はたっつぁんに歌いやすいドラムを求めてないですから。

中村　あ！ でも、歌が入ってくるときにはちゃんと音量下がるみたいなね。

──ああ、叩いているだけより力が分散するから？

中村　うん。

斉藤　あ、そう？ 前、「『歌に負けるかー』って思う」って言ってたじゃん（笑）。

中村　まあ、本当のところはそうなんだよね（笑）。って、はよ練習せなあかんわ！