ナタリー PowerPush - lynch.

ほかに媚びない、強制されないバンドのスタンスを提示する「MIRRORS」

lynch.がニューシングル「MIRRORS」をリリースする。6月に発表された最新アルバム「I BELEVE IN ME」の印象も鮮烈な中、早くも届けられたシングルには3曲を収録。強烈な高速2ビートのドラムで始まる「THE TRUTH IS INSIDE」、ハードロックの王道ビートにメロディアスなボーカルが乗る「MIRRORS」、シャッフルビートとヘヴィネスが絶妙に融合した「DEVI」と、カラーの異なる楽曲ばかりが揃った作品だ。

ナタリー初登場となる今回は、葉月(Vo)と玲央(G)にインタビューを実施し、バンドの成り立ちからメジャー移籍後の状況、そしてシングルの出来映えまでを、率直に語ってもらった。穏やかかつ真摯に作品について話す2人の語り口から、バンドの持つ自信のほどを感じてもらいたい。

取材・文 / 荒金良介 インタビュー撮影 / 平沼久奈

葉月が作る曲でバンドをやりたいと思って

左から玲央(G)、葉月(Vo)

──lynch.の場合は、ヘヴィロックとメロディアスな両極端の要素をひとつの楽曲に落とし込んでいますよね。2004年の結成時から、そういう音楽を目指していたんですか?

玲央(G) lynch.を始めるにあたっては、僕が葉月に声をかけたんですよ。葉月が作る曲でバンドをやりたいと思ったので。だから、意図的にこういうものをやりたいから、おまえ歌ってくれよ、という感じではないです。葉月が曲を作って、各々がフレーズを付けたら、こうなったという。

──それは葉月さんが作る楽曲に魅力を感じて?

玲央 そうですね。以前やっていたバンドの音源も持っていたし、ライブも観にいってましたからね。

葉月(Vo) 今考えると、10代の頃の話なので、稚拙な曲でしたけどね。元々メロディアスなもの、超ハードなものも好きだったから。特にコンセプチュアルにこういうものを作ろうとは思ってませんでした。ただ単に好きなように作ってましたね。時代背景を考えて、今ここで勝負するならこういう曲だろうと思って作るようになったのは、ここ最近なんですよ。それまでは何も考えてなかった(笑)。

──葉月さんが作る楽曲は自然と、ハードなものとメロディアスな要素が混ざっていた?

葉月 そうですね。それがより混ざり始めたのが3~4年前だと思います。

──なるほど。バンドは当初、葉月さんと玲央さん、それにドラムの晁直さんの3人で始めたんですよね。

玲央 スタート地点はそれにサポートベースを含めた4人で活動を始めました。で、2006年に悠介(G)、2010年に明徳(B)が入って、やっと正式メンバー5人組として完全体になったんですよ。活動を始めた頃は「正式なベーシストは入れないの?」とかそういう声をもらってて、むしろ正式なベーシストを入れないバンドみたいなイメージを持たれていたんですけど、全然そんなことはなくて。たまたま一緒にやりたいなと思うメンバーがいなかっただけなんですよね。とりあえずのメンバーは見つけたくなかったので、それならサポートでもいいかって。

曲が始まった瞬間のインパクトが一番重要

──昨年、正式メンバーが5人揃い、バンドが完全体になったことで変わった部分は?

葉月 色がガラッと変わったのは悠介くんが入ったときで、明徳は音的な面というよりはライブの存在感だったり確かな演奏力だったり、そこが大きいですね。音に関してはまだ若いので、もう少し経ってからなのかなと。ライブは派手になったというか、やんちゃな要素が足されたと思います。

玲央 やっぱりステージ上にサポートメンバーが1人もいないので、安心や安定感、あとは自由度が増したんじゃないですかね。

──曲作りのやり方は変わらず?

葉月(Vo)

葉月 そうですね。ただ、年々ラフにはなってますね。僕がデモを作って、みんなに渡して覚えてもらうんですけど。そのデモも、昔はすごく細かいところまで作り込んでいたけど、最近はコード進行と、ドラム、ベース、ギターもストロークだけで。前作は下手したらギターが入ってないものもあったから、そういう意味ではよりバンドらしくなっているかなと。

──ほかのメンバーに任せる部分も多くなってきたんですね。ただ、葉月さんが作るデモが簡素になればなるほど、ここだけはハズせないという要素はさらに明確になってくるのでは?

葉月 そうですね。ハズせない要素としては、僕は曲が始まった瞬間のインパクトが一番重要だと思っているんですよ。まあ、イントロだけ作ってもわけがわからないから、全体のアレンジはみんなが見渡せるようなものを作っていますけど。

──イントロにこだわる理由は?

葉月 なんなんですかね……やっぱ再生したときにワクワクしないと、僕は聴く気にならないんですよね。例えばYouTubeで別のバンドの動画を観ても、数十秒退屈だと飛ばしますからね(笑)。そういう意味で人の心をつかむキャッチーさは重要視してます。最初の10秒間でどれだけインパクトを与えられるかなって。

──普段の音楽の聴き方もそういう感じですか?

葉月 うん、あまり興味ないCDは数秒で飛ばすから、あっ、もう終わっちゃったみたいな。

──結構せっかちですね(笑)。

葉月 ははは、そうですね。試聴機も長い間聴いてられない。再生してすぐカッコよければ買っちゃうんですけど。イントロで一番衝撃だったのは、PANTERAの「鎌首」の1曲目(「The Great Southern Trend Kill」)ですね。いきなりシャウトと2ビートで始まるという(笑)。あれは中学生のときに聴いて、一番ビックリしました。

──例えがわかりやすいですね。その気持ちはすごくわかります。

葉月 ははははは(笑)。

玲央 制作のときは、基本的に各々自由にフレーズを付けて、どうしてもぶつかるときは擦り合わせをするんですけど、メンバー内の自由度は高いバンドだと思います。

ニューシングル「MIRRORS」初回限定生産 / 2011年11月9日発売 / 1500円(税込) / KING RECORDS / KICM-91368

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CD 収録曲
  1. THE TRUTH IS INSIDE
  2. MIRRORS
  3. DEVI
    DVD 収録曲
  1. “MIRRORS”MUSIC CLIP
  2. “MIRRORS”MUSIC CLIP DIRECTOR'S CUT
lynch.(りんち)

葉月(Vo)、玲央(G)、晁直(Dr)、悠介(G)、明徳(B)の5人からなるロックバンド。2004年8月に葉月、玲央、晁直の3人にサポートベーシストの4人を加えた形で始動。2005年4月に1stアルバム「greedy dead souls」をリリースし、並行して精力的なライブ活動を行うことで、地元・名古屋で話題を集める。

2006年に悠介が加入し、年内に4枚のシングルをリリース。続いて2007年には名盤と名高いアルバム「THE AVOIDED SUN」を発表し、レコ発ツアーファイナルを東京・Shibuya O-WESTで飾る。その後もライブを行う会場の規模を徐々に拡大させ、耳目を集める存在に。2010年に明徳が正式メンバーとなり、あわせてメジャーレーベルであるキングレコードへの移籍が発表された。2011年6月、前作から約2年ぶりとなるアルバム「I BELIEVE IN ME」でメジャーデビュー。同年11月、シングル「MIRRORS」を発表する。