音楽ナタリー PowerPush - LiSA

「シルシ」が示す彼女の現在地

アニメキャラの気持ちが“わかってしまう”

──その《マザーズ・ロザリオ》編のキャラクターたちが見せてくれた、LiSAさんも届けたかったメッセージって?

LiSA

「キミに出会えたことで、ボクの生きてきた“シルシ”が見つかりました」っていうことですね。

──確かに「シルシ」ってそういう詞ですね。「キミの瞳に映った ボクが生きたシルシ」と「ボク」は「キミ」を通して自分の実存を確認しているし、「いつだって迷わず キミはきっとどんなボクも追いかけてくれる」と歌っているように「キミ」も「ボク」に全幅の信頼を置いている。

《マザーズ・ロザリオ》編の中のアスナやユウキやギルドのメンバーって本当にそういう関係ですよね。

──アニメのストーリーはそこまで進んでないからネタバレは避けますけど「ネット友達」と呼ぶにはあまりある、友情以上の強い何かで結ばれてはいますよね。

その彼女たちの気持ちをきちんと汲み取って……じゃないな。私、彼女たちが何を考えて、どうしてこういう行動をするのかっていうことが全部わかってしまうんです。

──それはちゃんと原作小説を読み込むから?

違いますね。

──ではなぜ?

なんか感覚的にわかってしまうんです(笑)。それはきっと私が学生の頃、ミュージカルのレッスンを受けていたことがあったから。役になりきって、その人だったら何をするかを考えながら演技をする訓練をしていたからだと思うんですけど、原作にもアニメにも描かれていない、でもきっとするキャラクターの行動や、それをしているときの気持ちがわかっちゃうんです。

スーパーマンじゃなかった私

──以前のインタビュー(参照:LiSA「best day, best way」特集)で“LiSA”は本名のときのLiSAさん=普段のLiSAさんがなりたいと願う存在でありたいし、それを目指すと言っていましたけど、そのLiSAさんとアニメキャラの関係って、その“LiSA”と本名のLiSAさんに近いもの?

そういう感じですね。ただ年明けの武道館を経て、その“LiSA”像は少し変わってきていて。それまでは「LiSAは完璧なスーパーマンでなければいけない」って思っていたんですけど、武道館のライブで声が出なくなっちゃって……。「ごめんなさい!私、みんなが思ってるほど強くないんです」って本名の私の姿を見せてしまったんですけど、みんなからは「いや、LiSAがそういう人なのは知ってるし」「そんなの前からじゃん」って反応をされてしまい(笑)。

──LiSAさんの曲名にもある通り “Rock star”や、スーパーマンであろうと思っていたし、そういう姿を期待されていると思ってたのに(笑)。

LiSA

てっきりガッカリされると思ってたのに、スーパーマンのスーツを脱いだ私を見ても誰も驚かなくて(笑)。でも「あっ、バレてたんだ」ってわかったおかげでスーパーマンのスーツと一緒に着ていた、「完璧でいなくちゃ」っていう鎧を外せたんですよね。「本名の私が持っている弱い部分も含めて“LiSA”なんだ」「本名の私も見せていいんだ」って気付けたんです。

──《マザーズ・ロザリオ》編のユウキとアスナとギルドメンバーや、「シルシ」の「ボク」と「キミ」のような関係がLiSAさんとLiSAッ子(ファン)のあいだにも築かれた。

まさにまさに。ただひたすら「君のために」ってがんばってきたつもり、スーパーマンのつもりだったLiSAが、武道館でみんなに支えられたことで実はこれまでもずっと支えてもらえていたことにやっと気付けて。「じゃあ、この人たちに向かって等身大でもあり、スーパーマンになろうともしているLiSAができることをやろう」って思えたからこそ歌えた曲が「シルシ」なんです。

誰かが誰かに何かを譲ったりしないバラード

──そういえば「シルシ」ってなんでバラードなんですか? LiSAさんの歌う「SAO」の曲=「crossing field」のような威勢のいい曲っていうイメージを持っている人が多い気もするし、エンディングだからメロウじゃなきゃいけないっていう法もなし、って気もするんですけど。

確かにそうですよね。実際「crossing field」に限らず、「träumerei」や「Rising Hope」にしてもアニメのテーマソングはどれもアッパーだったし、ノンタイアップの「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」にしてもそう。ピンクをイメージした「BRiGHT FLiGHT」とブラックをイメージした「L.Miranic」の両A面シングルだけど、どっちも“ロックという色”で固めてますし。

──だからシングル表題曲がバラードであること自体、今回が初めてですよね?

LiSA

それもやっぱり武道館のおかげというか。あのとき、自分の思いやメッセージをバラードに乗せて人に届ける方法を見つけられた気がしたんです。

──正月の武道館ライブや、7月のコニファーフォレストでのライブ(参照:LiSA、曇り空のコニファーで“奇跡”の夏始める)で「シロイトイキ」や「いつかの手紙」を聴いて泣いているお客さんがいましたもんね。

そうやってバラードであっても、ちゃんと“LiSAの歌”として受け取ってもらえることを実感できたから「今だったら“LiSAのシングルはロック”みたいなイメージの鎧を脱いでも歌えるな」って思えるようになって。それで今回はバラードで勝負したかったんです。

──その勝負のバラードの制作は順調でしたか?

大っっっ変な難産でした!

──あはははは(笑)。

私はもちろんなんですけど、作曲のカヨコさんにも、編曲の(堀江)晶太くんにもそれぞれ思い描く《マザーズ・ロザリオ》編像があって。その3人の思いをそのまま曲に詰め込んでしまうととっちらかっちゃうから、気持ちを擦り合わせなきゃいけなかったんですけど、それがすごく大変で。しかも私には「SAO」を愛している人にも、LiSAをずっと支えてきてくれた人にも、どっちにも届くバラードを書きたいっていう気持ちもあって。だからホンットに苦労したんですけど(笑)、LiSAが「SAO」のために何かを譲ったり、「SAO」がLiSAのために何かを譲ったりはしていない、ちゃんとしたバラードができあがったなって思ってます。

ニューシングル「シルシ」 / 2014年12月10日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVMC-70031~2
期間生産限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVMC-70033~4
通常盤 [CD] 1296円 / SVMC-70015
初回限定盤および通常盤CD収録曲
  1. シルシ
  2. No More Time Machine
  3. crossing field -English ver.-
期間生産限定盤CD収録曲
  1. シルシ
  2. No More Time Machine
  3. シルシ -Instrumental-
  4. No More Time Machine -Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「シルシ」ミュージッククリップ
期間生産限定盤DVD収録内容
  • TVアニメ「ソードアート・オンラインⅡ」ノンクレジットED《キャリバー》ver.、《マザーズ・ロザリオ》ver.を収録。
LiSA(リサ)

6月24日生まれ、岐阜県出身。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。以降、アニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」や、アニメ「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。また2013年にはシングル「best day, best way」がオリコン週間シングルランキング6位を記録し、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在に。そして2014年1月3日には初の東京・日本武道館公演を開催し、同5月リリースのシングル「Rising Hope」(アニメ「魔法科高校の劣等生」オープニングテーマ)はオリコン週間シングルランキングで4位をマーク。2014年12月にアニメ「ソードアート・オンラインⅡ」のエンディングテーマ「シルシ」をシングルとしてリリースした。2015年1月10、11日には東京・日本武道館にてワンマンライブ「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を開催する。