米米CLUB|32年目の“遅咲き桜”が放つ 米米の真骨頂

解散の理由

──「君がいるだけで」のヒットと前後して、ライブもアリーナ規模の会場でやるようになっていきましたね。

石井 うん、自分たちの手に負えないぐらいの大きさになってましたよね。1万人の前で「ここでヘンな表情して笑わせよう」とか、そんなのやってももう誰にも伝わらないから(笑)。だからアリーナ規模の会場ではもう曲をやるしかなくなっちゃって。

──でもバンドが曲を演奏するのは当たり前だし、ヒット曲をやればお客さんは喜んでくれるわけですよね。

カールスモーキー石井(Vo)

石井 そうなんだけどね。でもそれだったらどのバンドでもできるじゃんって思ってた。米米CLUBってそういう枠にハマってないところがよかったし、例えば「浪漫飛行」(1990年シングルリリース)がヒットしてるときなんか、コンサートでほとんどお客さんに歌わせて、俺は「Wow Wow」しか歌わなかったり。そういう感じでやってたから。

──当時どんどん売れてバンドが大きくなっていく状況はうれしいことでしたか? それとも違和感のほうが強かった?

石井 いや、もちろん売れてないより売れてるほうがいいですよ。この仕事やっててお客さんがいっぱい来てくれてうれしくないやつなんていないです。ただやっぱり、うーん、お寿司屋さんで成功したかったのに魚屋さんで成功しちゃったみたいな、そういう気持ちはあったと思う。微妙に違うんだよね。

──やはり葛藤があったんですね。

石井 でも割り切ってやるしかないんですよ。だってコンサートのスケジュールはどんどん切られていくし、いろんな人から期待されてるのも感じてたし。そういった意味ではすごくこう、自分たちのやりたいこととかコンセプトとかとは違う方向に自分たちが流されてるのはよくわかってた。だけど当時はとにかくその流れが強くて、仕事の量もとんでもなくて、テレビの歌番組に呼ばれて「あの曲やってください」って言われりゃやるしかないからね。「イヤです。今日は『ポイのポイのポイ』やります」とは言えない(笑)。

──そうですね。

石井 その流れに抗おうとしたこともあったんですけどね。「君がいるだけで」がヒットしたあとのツアーで、俺ステージにカラオケの機材持ち込んであの曲1人で歌ってたもん(笑)。でもそういうのやっぱり通じないんですよ。

BON(B)

BON うん、もちろんバランスは考えて、強い球を投げたりゆるく投げてみたり、少しでもなんか面白いことやろうとはしてたと思うんだけど、それ以上に周りの流れが強かった。っていうのも今だから言えることですけどね。そのときはもう夢中で一生懸命にやってただけだったから。

石井 その大きい流れの中に一度入っちゃうと、土砂災害みたいなもんでもう逃れられないんです。止められない。もちろん自分たちがやりたくないことを嫌々やってたわけじゃないですよ。そうじゃないけど、だけど米米CLUBとしてのど真ん中をやってるかって言うとそうでもなくて。そのせめぎ合いみたいなものはありましたよね。みんなが求めてるものと俺たちがやりたいことがズレていく。もともと米米CLUBの面白さは徹頭徹尾お客さんを裏切っていくところにあったのに、それができてないことは自分たちでも十分わかってた。米米CLUBの解散っていうのは、だからそういうことですよね。

──なるほど。

石井 自分たちで自分たちの世界をどんどん小さくしちゃってたところはあると思う。サブカルの隙間産業だった米米CLUBが1つのカルチャーになってしまって、商業的なものに変貌していく中で、ヒット曲を作ることが最優先になってしまった。

──ヒット曲を作ろうと思って、実際に作れてしまうのはすごいことですけど。

石井 まあそれは俺に才能があるからね(笑)。でも結局その才能に負けちゃったんですよ。いい歌を作れるし、いい感じで歌えちゃうから、そういうものを求められるままに出してしまった。自分でも魔法にかかったみたいに出してたなって思うんですけど。

──そうやって少しずつズレていったわけですね。

石井 単にいい歌を作って歌っていくんだったら俺1人、ソロでやれば十分なんです。それはやっぱり米米CLUBでやるべきことじゃないんですよね。

──BONさんは解散を決めたときどういう心境だったんですか?

BON 複雑だったのは覚えてますけど、やっぱり気持ちとかノリが合わないとバンドはできないですからね。

石井 米米CLUBが凋落していくところは見たくなかったから、華やかなまま終わりにしようっていうのは強く思ってました。それでミーティングのときに俺が「米米CLUBのやるべきことってもうなくなったんじゃない?」って言ったんです。その瞬間にみんな納得しちゃったみたいなところがあって。解散は寂しかったですけどね。でもメンバーも変わりすぎちゃってたし、普通に音楽だけやり続けていくみたいなバンドでもなかったしね。

再結成後に模索した“米米CLUBらしさ”

──ここまでは1997年のバンド解散に至る道筋について話してもらいましたが、じゃあ2006年の再結成はどういうきっかけで実現したんでしょうか?

石井 再結成は、デビュー20周年を過ぎたあたりから「また米米CLUBやってください」みたいな手紙をファンの人からたくさんもらって、じゃあ期間限定で半年だけやろうかって話だったんです、最初はね。でも半年経って「また解散です。もうやりません」っていうのはちょっと大人げないなって気持ちになって、それで今に至るっていう。

──解散時の反省を踏まえて、このときにバンドをアーティスティックな路線に戻そうという話にはならなかったんですか?

石井 最初はあくまで半年だけってことだったからね。それこそ小さいライブハウスでひっそり再結成とか言うんだったら、もっとアーティスティックなこともできたかもしれないけど、それをやったとしてもインパクトもないし、どうせ再結成するんだったら大きなことをやって成功させなきゃ意味がないと思ってたから。

──お祭り的な感覚だった?

石井 そう、やるならやっぱり盛り上げなきゃって思ってました。まずは世間に「米米CLUBまた始まったぞ!」って思わせたかったし。

インタビュー中にJESSE(RIZE、The BONEZ)が“乱入”。カールスモーキー石井に自身のCDを手渡す。

──でもそこから活動を継続していくとなると、改めてバンドのスタンスについて考えなければならないですよね。

石井 だから考えましたよ。いろんなことを考えて考えて、この4年のブランクは自分なりにそれを整理する期間だったんだと思います。解散前の流れをなぞってるだけだったら、そんなのはやる意味がないので。

──再結成後にオリジナルアルバムを2枚出して全国ツアーも回りましたが、その活動は楽しくやれてたんですか?

BON まあね、やっぱりバンドだから、みんなで集まって音出すのは基本的に楽しいです。でもどっかで模索はしていて、“米米CLUBらしさ”ってなんなんだろうとかね。それは常に思ってましたよね。

──そのタイミングで石井さんから「原点に返ってとがったことをやろう」という提案があった。

BON うん、再結成自体はどっちつかずな感じから始まったけど、今回のテッペイちゃんの提案はシンプルに「いいな、面白そうだな」って思えたから。

──再結成のお祭りムードでひとしきり盛り上がったあとの、このタイミングだからこそ、素直に初心に返ろうと思えたのかもしれないですね。

石井 やっぱりバンドを再結成していろいろやってみるとね、人間って不思議なもんで、一番チヤホヤされてた頃に戻っちゃうんですよ。そこがこの4年間、俺が一番苦しんだところかもしれない。「これじゃない、これじゃない」ってずっと考えてましたからね。結局、米米CLUBを観に来てたお客さんたちは俺らのおかしなところ、人を食ったところもちゃんと感じてくれてたと思うんです。“ポップスの米米CLUB”になってからもたぶんそれはあったはずで、だから俺たちのほうが逆にちょっと忘れちゃってたのかもしれない。そういう感覚を忘れて一生懸命音楽の練習ばっかりしてたみたいな。そこがやっぱり大間違いだったなあって、今はそう思いますね。

遅咲き桜がやりたいこと

──ところで今回リリースされるベストアルバムは「LAST BEST」というタイトルですが、これはどういう意図なんですか?

石井 「LAST」って付ければもう最後だと思ってみんな買ってくれるんじゃないかなって。だからこれの次は「LAST BEST 2」っていうのを出そうかと(笑)。

BON すごいなそれ(笑)。

──でも実際「これが最後になるかも」みたいな気持ちはあるんでしょうか?

米米CLUB

石井 まあ俺たちもいい歳だし、1万人規模のコンサートをガンガンできる体力ももうないからね。だったらちょっと規模を小さくして自分たちがやりたいことをやるほうがいいかなっていうのはある。それで離れていくファンもいると思うけど、もっと好きになってくれるファンも出てくると思うから、そこに懸けてみようと思って。

──じゃあまたヒット曲をバンバン出したいとか、アリーナツアーをやりたいといった気持ちはない?

石井 そんなことやってどうするんですか? メンバーみんなそろそろ死ぬ年齢ですよ(笑)。

BON そうそう、好きなことやんないとね(笑)。

石井 ねえ、もう俺たち墓石に向かってるんで。終わる前に今の若いバンドに「おっさんでもここまでやるんだぜ」みたいな気概は見せておきたいですけどね。要は遅咲き桜みたいなものなので。ほら、夏くらいにいきなり開花して「今頃咲いてるんだ?」「そんなに咲いちゃってどうすんだろう」みたいなやつあるじゃん? ああいう感じですよね。うん、もうすぐ死ぬんだから、もうやりたいことだけやらせてもらおうと思ってます(笑)。

米米CLUB「LAST BEST ~豊作参舞~」
2017年8月8日発売 / Sony Music Labels
米米CLUB「LAST BEST ~豊作参舞~」初回限定盤

初回限定盤 [4CD+Blu-ray Disc]
9504円 / SRCL-30046

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米米CLUB「LAST BEST ~豊作参舞~」通常盤

通常盤 [3CD]
5400円 / SRCL-30051

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DISC 1
  1. I・CAN・BE
  2. Shake Hip!
  3. 加油(GAYU)
  4. PARADISE
  5. sûre danse
  6. 嫁津波
  7. KOME KOME WAR
  8. TIME STOP
  9. FUNK FUJIYAMA
  10. 浪漫飛行
  11. ひとすじになれない
DISC 2
  1. 君がいるだけで
  2. 愛してる
  3. ORION
  4. ときの旅路
  5. 愛はふしぎさ
  6. ア・ブラ・カダ・ブラ
  7. 俺色にそまれ
  8. 手紙
  9. ワンダブルSUNでぃ
  10. JUST MY FRIEND
  11. すべてはホントでウソかもね
  12. STYLISH WOMAN
  13. Special Love
DISC 3
  1. WELL COME 2
  2. E-ヨ
  3. 君を離さない
  4. MATA(C)TANA
  5. 御利益
  6. WE ARE MUSIC!
  7. つ・よ・が・り
  8. 080808
  9. ふりむかないで
  10. 恋のギャンブル
  11. TAKARABUNE
  12. どんまい
  13. コドモ ナ オトナ
  14. Uplight
DISC 4(初回限定盤のみ)
  1. 愛 Know マジック(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  2. 愛はふしぎさ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  3. 君がいるだけで(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  4. Special Love(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  5. I・CAN・BE(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  6. KOME KOME WAR(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  7. ア・ブラ・カダ・ブラ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  8. STYLISH WOMAN(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  9. sûre danse(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  10. Shake Hip!(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  11. WELL COME 2(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  12. TAKARABUNE(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  13. E-ヨ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  14. FUNK FUJIYAMA(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  15. ワンダブルSUNでぃ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  16. ひとすじになれない(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  17. すべてはホントでウソかもね(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  18. TIME STOP(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  19. 手紙(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  20. 愛してる(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  21. 俺色にそまれ(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  22. 恋のギャンブル(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  23. ORION(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  24. PARADISE(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
  25. 浪漫飛行(米米CLUB LAST BEST MIX BY DJ和)
初回限定盤Blu-ray収録内容
  1. KOME KOME TV ONODASAN
  2. かっちょいい!
  3. SHAKE HIP!
  4. 渚のジル
  5. Paradise
  6. JAL OKINAWA '90 CM ~浪漫飛行
  7. 浪漫飛行
  8. Peeping Tom
  9. 愛はふしぎさ
  10. ア・ブラ・カダ・ブラ
  11. STYLISH WOMAN
  12. WELL COME 2 ~Video Clip~
  13. E-ヨ~Video Clip~
  14. MATA(C)TANA ~Video Clip~
  15. WE ARE MUSIC!~Video Clip~
  16. つ・よ・が・り VIDEO CLIP
  17. TAKARABUNE (MUSIC VIDEO)
  18. TAKARABUNE (MUSIC VIDEO)
a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2017 ~おせきはん~
  • 2017年9月9日(土)埼玉県 三郷市文化会館 大ホール
  • 2017年9月16日(土)東京都 江戸川区総合文化センター 大ホール
  • 2017年9月20日(水)大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール
  • 2017年9月23日(土・祝)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2017年9月30日(土)千葉県 千葉県文化会館
  • 2017年10月7日(土)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
  • 2017年10月8日(日)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
  • 2017年10月20日(金)福岡県 福岡サンパレス
  • 2017年10月21日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2017年10月28日(土)徳島県 鳴門市文化会館
  • 2017年11月3日(金・祝)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2017年11月5日(日)静岡県 富士市文化会館ロゼシアター
  • 2017年11月10日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
米米CLUB(コメコメクラブ)
1982年結成。1985年にメジャーデビュー。ダンサーやホーンセクションなどを含む大所帯でのパフォーマンスとエンタテインメント性の高いライブ演出、卓越したアートワークなどで注目を集める。1992年にリリースしたシングル「君がいるだけで」が大ヒットを記録し国民的グループの仲間入りを果たすも、1997年の東京ドーム公演を最後に解散。2006年の再結成以降はマイペースで活動を続け、2枚のオリジナルアルバムを発表。2017年8月に3枚組ベストアルバム「LAST BEST ~豊作参舞~」をリリースした。現在のメンバーはカールスモーキー石井(Vo)、ジェームス小野田(Vo)、BON(B)、フラッシュ金子(Sax, Key)、ジョプリン得能(G, Key)、Be(G)、RYO-J(Dr)、MARI(Dance, Per)、MINAKO(Dance)の9名。