ナタリー PowerPush - 小松未可子

拾いどころ満載!みかこし伝説徹底検証

「小松未可子」というフィルターを通して観た「K」の世界観

──そして「そういうキャリアを経て、このたび2ndシングル『冷たい部屋、一人 / 夏至の果実』をリリースするわけですが……」と進められれば話は早いんですけど、その1曲目「冷たい部屋、一人」って、アニメ「K」のタイアップ曲ということもあってか、これまでとは違う。かなり攻めた楽曲になりましたよね。

3拍子ですからねえ(笑)。

──ええ。「Black Holy」にせよ「Cosmic EXPO」の一連の楽曲にせよ、どれもヌケがよくて明るくかわいらしいギターロックやダンスチューンだったのに、今回はマイナー進行のワルツという。

元々「K」の世界観や、私が「K」の中で演じているネコというキャラクターをイメージした楽曲になることと、「それならワルツがいいだろう」ということは決まってたんですよ。だから「ワルツっていうことは、まあ、ゆったりしたテンポの曲になるのかな」と思ってはいたんですけど、angelaさんからいただいたのが、すごく壮大なオーケストラの切ない曲だったので、ホントにビックリしました。

──楽曲に合わせて歌い方もだいぶアレンジしてますよね。先程おっしゃっていたように、これまでの楽曲はナチュラルながらパワフルに歌っている印象があったんですけど、今回はかなり情感豊かでウエットに歌い上げています。

インタビュー写真

まずオケがすごく豪華だったので、いつものようにストレートに歌うと曲に飲まれちゃうのかな、とは思っていて。それにangelaさんからも言われたことなんですけど、キャラソンっていうわけじゃないにせよ、ネコのキャラクターに寄せて歌った方がいいだろうなって。ネコには主人公と出会うまで孤独に暮らしていた時期があって。でも15歳っていう実年齢よりもちょっと幼い天真爛漫な雰囲気を持っている子でもあるから、暗さをたたえつつも、どこかに明るく映える感じも出すようにしたかったんです。それで「どう歌えば暗すぎず、映えるようになるかな?」って考えていたときに、angelaさんが「参考にするといいよ」って教えてくれたのが、Charaさんでした。

──あっ、なるほど。

Charaさんほど大胆にニュアンスを付けるわけではないんだけど、かわいらしさの中にどこかクセのある色付けをしてもらいたい、とは言われましたし、そういうイメージで歌ってみました。

──楽曲を聴くと実際にそのアドバイスが功を奏していますよね。単なるネコのキャラソンにはなっていないし、いきなりとんでもない路線変更したようにも聴こえない。きちんと「小松さんの作品」になっています。

結局、基本的に私が歌っているからなんでしょうね。曲調がガラっと変わってはいるんですけど、曲の作り方は、実は「Black Holy」や「Cosmic EXPO」と同じ。「小松未可子」というフィルターを通して観た「K」という作品の世界を歌っているので。

──では、「小松未可子」は「K」という作品をどう観ました?

そうですねえ。「王」と呼ばれる人たちとそれを取り巻く人々それぞれの絆の形を描いた物語と銘打っていて、実際いろんなキャラクターが出てくる。そしてギャグ回があったり、テンションの高いエピソードがあったりもするんですけど、物語全体としてはいつもどこかに悲しみみたいなものが漂っているし、どのキャラクターも実は孤独という共通点を持っていたりもするんですよ。そんなみんなの孤独を集約したような存在が、ネコっていうキャラクターなのかな、って。だから、私がネコをイメージした曲を歌うことが、実は「K」の世界観全体を歌うことにもなってるんじゃないか、っていう気はしています。

みかこし発声法

──これまでと違う歌い方に挑戦することに戸惑ったりはしませんでした?

歌いやすかったんですよ、これが(笑)。私、スロースターターというか、声が“鳴る”ようになるまでに時間がかかるので、レコーディングやアフレコの前には2~3時間くらいカラオケボックスに行って、がっつり喉を鳴らしておくようにしていて。でも「冷たい部屋、一人」は、声を張って伝えるというよりは、気持ちの部分で詞の意味やストーリーを伝えるタイプの曲だと思ったので、あえてカラオケには行かず、いきなり現場で声を出してみることにしたんです。そうしたらいい感じで声がかすれてくれて。楽曲の雰囲気や、詞に込められた感情をより伝えられたかな、って思ってます。

──本番前に声出しすることが習慣になっているなら、カラオケボックスに行かずにスタジオに向かうのは怖くなかった?

いやもう、ホントに怖かったです(笑)。本番前にカラオケに行く時間が取れない地方の朝早いイベントなんかだと、ホンットに声が出なかったりしますから。

──それなのに、この曲にはあまり喉を鳴らさない声のほうがハマるからカラオケは控えておこう、というアイデアはどこから?

アフレコの経験が強く影響してるんだろうな、とはすごく思っていて。というのも、以前かわいらしい女の子役をやらせていただいていたとき、音響監督さんから何度か「この現場に来る前に男の子役のアフレコをやってた?」って訊かれたことがあったんですよ。そう言われるときって、実際その日の午前中に元気な男の子役をやっていたり、カラオケに行ってから現場に向かったりしていたんです。それで「あっ、私って作り込みすぎると声が低くなっちゃうんだな」「割と高めの女の子の声をナチュラルに出したいときは、喉を鳴らしておかないほうがいいんだな」ということに気付きまして。そういう経験が今回の「冷たい部屋、一人」のレコーディングにも活きてるんでしょうね。

──声優さんであり、ボーカリストさんでもある小松さんにとっては当たり前のお話なんでしょうけど、やっぱり自分の声には常に耳を傾けてるんですね。

お芝居も歌も「声を使う」という点では基本的には同じだと思っているので、そこは結構シビアにやってるつもりです。アフレコの経験が今回のレコーディングに活きたように、逆にこれまでになかったタイプの曲を歌った経験が「この役のこのセリフの言い回しって『冷たい部屋、一人』で歌ったときの感覚に近いかも」「これはできる」「得意分野だ」っていう、お芝居のための蓄積になることもあるでしょうし。

対照的な2曲が両A面でセットだからこそ

──2曲目の「夏至の果実」はこれまた一転。「Black Holy」「Cosmic EXPO」の流れを汲んだギターロックです。そして「レントヘッド」というスマートフォン用ビジュアルノベルのエンディングテーマでもある。

でも、この曲は先行して作ってあったんですよ。「どのタイミングでどこに出そうか」ということは決まってなかったものの「とりあえずレコーディングだけはしておこう」ということでストックしておいたら、あとから「レントヘッド」のエンディングテーマに使っていただくことになって。だから「レントヘッド」のキャラクターや世界観に寄せて作ったわけではないんですけど、聴いてみると不思議と共通点が多かったんです。私が「レントヘッド」で演じているのは、見た目は女の子みたいなんだけど実は熱血漢で情熱的な男の子で、「夏至の果実」は疾走感のあるパワフルな楽曲なので「あっ、割とキャラクターに近いな」っていうことで、エンディングに使っていただくことにしました。

──この曲のレコーディング前にカラオケには?

もちろん行きました(笑)。作編曲が「Cosmic EXPO」の「M from…」と同じSiNさんで、どちらもアップテンポなロックだったので、どう差別化するか。「M from…」は加藤茉莉香っていうキャラクターに向けたメッセージソングでもあったので、歌い方も結構明るめにしたんですけど、「夏至の果実」はちょっとシリアスだからパワフルさや切なさも足そうかな、みたいなことに気をつけながら声出ししてましたね。

──「冷たい部屋、一人」と「夏至の果実」。かなりテイストの違う2曲が並びましたけど「こう聴いてもらいたい」みたいな希望ってありますか?

「どう聴いてもらいたい」とか「こういう色に染めたい」みたいなのはないですね。皆さんの思うように聴いていただきたいですし、そう聴いていただくという意味では両A面シングルになっているのって、ちょうどよかったんじゃないかな、とは思っていて。「夏至の果実」がカップリング曲という扱いだったら、きっと「冷たい部屋、一人」の世界観に引っ張られて、重たい感じに聴こえたと思うんですよ。でも、対照的な2曲がどっちもA面という対等の立場で並んでいるから、重たいだけでは終わらないし、パワフルなだけでも終わらない。セットで聴いていただければ、皆さんなりに何かが残る内容になったんじゃないかな、と思っています。

──そして当然ながら、小松未可子の音楽史は2ndシングルで終わるわけではありません。11月11日にはバースデイライブも控えています。

おかげさまでチケットはソールドアウトしてしまったんですけど、ニコ生さんでの中継も決まっているので、ぜひ観ていただきたいですね。タイムテーブルがカツカツになるくらい、やりたいことは盛り込んだつもりですし、初めてチャレンジすることもいくつかありますし。あと、確実に皆さんがビックリするようなサプライズを2つくらい用意していますから。

──そのサプライズのさわりだけでも訊かせていただくことは……。

できません!(笑) ただ、絶対に楽しんでいただけることになってるとは思ってます。

──ビール瓶を投げつけられるようなことではない?

多分大丈夫です!

インタビュー写真

ニコニコ生放送「ハピこしライブ!~小松未可子生誕イベント2012~」生中継

2012年11月11日(日)19:00~(開場 18:50~)
配信URL:http://live.nicovideo.jp/watch/lv113881282

ニューシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」2012年11月7日発売 / スターチャイルド
初回限定盤[CD+DVD] / 1500円 / KICM-91421
通常盤[CD] / 1200円 / KICM-1421
収録曲
  1. 冷たい部屋、一人
  2. 夏至の果実
  3. 冷たい部屋、一人(inst)
  4. 夏至の果実(inst)
初回限定盤DVD収録内容
  • 冷たい部屋、一人(PV)
小松未可子 (こまつみかこ)

1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。中学生時代にアイドルグループ「いもうと」でデビューののち、女優としての活動を開始。2010年にはアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタートさせた。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビュー。7月にはミニアルバム「Cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を発表した。