音楽ナタリー Power Push - コブクロ

10年分の感謝の思いと、10年先への夢を込めて

コブクロが約2年半ぶりとなるニューアルバム「TIMELESS WORLD」をリリースした。

2005年にリリースされた大ヒットアルバム「NAMELESS WORLD」からの約10年の軌跡を振り返りつつ、新たな未来にも思いを馳せた本作。ファンから募った写真をモザイクアートにし、18年前にストリートライブをしていた大阪・戎橋の風景を描いたジャケットのアートワークが象徴しているように、そこにはこれまで支えてくれたすべての人への感謝の思いと、これからも“タイムレス”な楽曲を生み出し続けていくという強い決意が鮮やかに詰め込まれている。

コブクロとしての新たなマイルストーンとなりうる傑作を作り上げた今、小渕健太郎と黒田俊介の2人は何を思うのか? じっくりと話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき

僕らは聴き手の人生を書き下ろしている

──約2年半ぶりのアルバムの仕上がりについて率直な感想から聞かせてください。

コブクロ

小渕健太郎 今回のアルバムは、いろいろな方面からの依頼で書き下ろさせていただいた曲が、今までで一番多いんですよ。

──全15曲中、11曲にタイアップが付いていますからね。

小渕 そう。なので、それぞれいただいたテーマに合わせて曲を作る過程で、コブクロというものを客観的に見ながら楽しめた感覚があったんです。自分たちから何が出てくるかを、ビックリ箱のように楽しんでいた感じがあるというか。結果的にアップテンポの曲がすごく多くなったということもあり、自分たちで聴いていてもにぎやかさを感じる面白いアルバムになったんじゃないかなって思うんですよね。

黒田俊介 「陽だまりの道」や「Twilight」「42.195km」なんかはもうはるか前から歌ってる気がするし、半分以上の曲はすでにライブでもやってますけど、制作の後半にはけっこう異色な感じの曲がポコポコと生まれてきたんですよ。「tOKi meki」とか「SNIFF OUT!」「Tearless」みたいな。そういう意味ではこの2年半の僕らの趣味嗜好みたいなもの、チャンネルの行き来がちゃんとあって、それを反映したアルバムになってるような気はしてて。結果、トータル的に彩りの鮮やかな内容になったかなって思いますね。

──コブクロとしての軸はブレさせることなく、多彩なサウンドでさまざまな景色を見せてくれていますよね。

小渕 僕らの歌詞っていうのは、自分の言いたいことであるのはもちろんなんだけど、それ以上に聴いてくれるファンの人たちに向けて書き下ろしてる感覚が強いんですよ。聴き手の人生を書き下ろしているというか。そこは昔も今もずっと変わらないところなので、サウンド的には逆に思い切り遊べるところがあると思うんです。「SNIFF OUT!」みたいにロカビリーっぽくバーンと振り切ってみたり、「未来」のようにか細い、小さな小さなアコースティックの曲を作ったり、「SUNRISE」みたいにゴスペルクワイアを呼んでドカーンとやってみたりっていうことができるんですよね。

なぜかEDMに

──今回、黒田さんが作詞作曲を手がけた唯一の曲「Tearless」もかなり衝撃的なアレンジですもんね。ビックリしました。

小渕 黒田の曲は今まで、ギター1本でデモテープを作ってくる感じだったんですけど、今回の「Tearless」はね、自分のパソコンで完全に打ち込んで仕上げてきたんですよ。どこにそんな能力があったのかって驚いたんですけど。

黒田 あははは(笑)。暇だったから。丸々3カ月くらいずっとPCの中でカチャカチャやってたんですよね。そうしたら最後はEDMになったっていう(笑)。

──取っ掛かりは違った雰囲気だったんですか?

黒田 最初は全然違いました。エレキギターのフレーズものみたいなイントロから始まる曲で。それをガチャガチャやってたらなぜかEDMに。

小渕 もうね、レコーディング中もうるさいんですよ。「これってEDMなのかな? デジタルロックじゃないのかな? テクノじゃないよな?」みたいな。「カテゴリーなんてどうでもいいわー!」っていうね(笑)。まあでもホントに黒田はコブクロとして新しいものを作ってきたなあと思って。僕が作るものとは確実に毛並みが違うというか。黒田の曲は絶対にコブクロにも寄らないし、小渕テイストにも寄らないんですよ。だから僕は安心して自分の好きなことができるんですよね。

黒田 ムリに寄せようとすると大事故が起きるからね(笑)。

小渕 そうそう(笑)。だから黒田は好きなことをやってくれと。この曲はその真骨頂だと思いますね。

──斬新さは感じますけど、アルバム通して聴くと違和感はまったくないですし。

黒田 だったらよかったですけど。

小渕 面白かったのは、「Tearless」のような今までにないテイストの曲をしっかり受け止めてくれたのが、このアルバムの中で最初にできた曲「陽だまりの道」だったんですよ。この2曲を並べてみると、曲の世界観も詞の世界観もうまくつながった気がしたし、「陽だまりの道」に関してもまた違う聴き方ができるなって。そういう意味で今回のアルバムは、「陽だまりの道」が大きな器のような存在になっていて、その上にいろんな曲が乗ったアルバムなのかもなっていう印象が僕にはあるんですよね。

ニューアルバム「TIMELESS WORLD」2016年6月15日発売 / Warner Music Japan
「TIMELESS WORLD」
初回限定盤 [CD+DVD] 4860円 / WPZL-31195~6
通常盤 [CD] 3240円 / WPCL-12389
CD収録曲
  1. SUNRISE
  2. 未来試聴
  3. 何故、旅をするのだろう
  4. tOKi meki
  5. SNIFF OUT!
  6. サイ(レ)ン
  7. hana試聴
  8. 星が綺麗な夜でした
  9. Twilight
  10. Tearless
  11. 陽だまりの道
  12. 42.195km
  13. 奇跡試聴
  14. NO PAIN, NO GAIN feat. 布袋寅泰
  15. STAGE
初回限定盤DVD収録内容
  • 慶應義塾大学第57回三田祭前夜祭ライブ映像
ツアー情報
KOBUKURO LIVE TOUR 2016“TIMELESS WORLD”supported by Ghana
  • 2016年8月27日(土)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
  • 2016年8月28日(日)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
  • 2016年9月10日(土)広島県 広島グリーンアリーナ
  • 2016年9月11日(日)広島県 広島グリーンアリーナ
  • 2016年9月21日(水)愛知県 日本ガイシホール
  • 2016年9月22日(木・祝)愛知県 日本ガイシホール
  • 2016年10月1日(土)愛知県 日本ガイシホール
  • 2016年10月2日(日)愛知県 日本ガイシホール
  • 2016年10月8日(土)愛媛県 ひめぎんホール
  • 2016年10月9日(日)愛媛県 ひめぎんホール
  • 2016年10月24日(月)東京都 日本武道館
  • 2016年10月25日(火)東京都 日本武道館
  • 2016年11月2日(水)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2016年11月3日(木・祝)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2016年11月9日(水)新潟県 新潟県民会館
  • 2016年11月10日(木)新潟県 新潟県民会館
  • 2016年11月19日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2016年11月20日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2016年11月26日(土)福岡県 マリンメッセ福岡
  • 2016年11月27日(日)福岡県 マリンメッセ福岡
  • 2016年12月5日(月)宮崎県 宮崎市民文化ホール
  • 2016年12月6日(火)宮崎県 宮崎市民文化ホール
  • 2016年12月17日(土)大阪府 京セラドーム大阪
  • 2016年12月18日(日)大阪府 京セラドーム大阪
コブクロ

1998年、路上ライブをしていた小渕健太郎と黒田俊介が出会い結成。2000年3月に梅田バナナホールで初ワンマンライブを敢行し、2001年シングル「YELL~エール~」でメジャーデビュー。2005年に発売したシングル「ここにしか咲かない花」「桜」がロングヒットを記録する。2006年5月には初の日本武道館公演を大成功に収め、続いてリリースしたシングルコレクションアルバム「ALL SINGLES BEST」は300万枚を超える大ヒットに。その後も数々のヒット曲やコラボ作を発表し、活動の幅をさらに拡大させるが、2011年8月に小渕が発声時頸部ジストニアを患っていること、黒田も持病の腰痛や喉の疲労が悪化したことから、療養期間に入る。そして2012年4月に活動再開を発表。2015年12月発売のシングル「未来」は映画「orange -オレンジ-」の主題歌として話題になった。2016年6月には約2年半ぶりのアルバム「TIMELESS WORLD」をリリース。