ナタリー PowerPush - 喜多村英梨×小松未可子

キタエリ×みかこしの「神ない」サウンド解体新書

喜多村英梨インタビュー

喜多村英梨の音楽に改めて自信やプライドを持てる曲

──以前(参照:喜多村英梨「RE;STORY」インタビュー)喜多村さんは、自身も出演しているアニメのテーマソングを歌うときは「アーティスト」ではなく「声優アーティスト」というスタンス。去年のアルバム「RE;STORY」で見せた、ハードロックやヘヴィメタルのマナーに則ったサウンドが一番肌に合うものの、その音がタイアップ先の作品に似合わないのであれば我を張りたくはない、とおっしゃっていましたよね。

喜多村英梨

そうですね。例えば「Happy Girl」(アニメ「パパのいうことを聞きなさい!」オープニングテーマ)みたいなガーリーでかわいらしい曲って、私の意思だけではきっと作り出せない曲だと思っていて。でも声優という仕事をしているから、そういう曲も歌わせていただける。そういう挑戦をさせてもらえることは声優冥利に尽きることだと思っていて。それに私自身、メタルしか聴かないわけじゃないですし、「Happy Girl」みたいな文字通り「超ハッピー!」な感じのアイドルポップも大好きなので、アニメの演者として、ボーカリストとして結果楽しく歌っちゃいます(笑)。

──ただ、今回の「Birth」の表題曲はこれまでのタイアップ曲とはちょっと違う。「神さまのいない日曜日」というアニメのオープニングテーマでありながら、キタこし対談での小松(未可子)さんの言葉の通り、ノンタイアップ曲で見せるキタエリサウンドの進化版。速くて重くて、ちょっとダークで耽美的。だけど装飾過剰ではない。スムーズで、すごく洗練されたヘヴィロックになっています。

正直な話をしてしまうと、そういうふうに聴いていただきたい一心で作った曲なんです。これまでの曲ももちろん自信作なんですけど、喜多村英梨の音楽というものに対して改めて自信やプライドを持てる曲を作りたい。そう思っていたところにちょうど「神ない」のタイアップのお話があって。「神ない」ってまさに私のフィールドの中にある作品、私の好きなものに共通するキーワード「退廃感」が似合う作品だったんです。幻想的でありつつ、どこか刹那的。音楽に例えるならメジャーコードというよりもマイナーコードというか(笑)。私が当たり前のように好きになれる世界が繰り広げられている、ある意味ホームのような作品だったので、曲を作り始めた頃から「『神ない』の世界観に寄り添いつつ、でも新しい喜多村英梨の音楽を見せられる曲というものを作れるんじゃないかな」と思っていました。

──そして実際に新しい喜多村英梨の音楽、キタエリサウンドを作ってしまった、と。勝因はなんだと思います?

今回シングルの制作期間が、6~7月のツアーの打ち合わせやリハーサルや、同じサウンドチームで作っていた別の楽曲のレコーディング時期と重なっていたんですけど、それも大きな理由の1つなんだと思います。

──スケジュールを聞くぶんには慌ただしすぎて、じっくりシングルを制作できないような気もしますけど(笑)。

いや、実はそれが逆で。声優というお仕事もありますし、普段レーベルの方やクリエイターの方とスケジュールが合わないことも多いんですけど、今回はレコーディングスタッフや作詞・作曲の山口(朗彦)さんや編曲の河合(英嗣)さんといつもお会いしている状態だったので。ツアーの打ち合わせや別の曲の準備と並行して「Birth」の打ち合わせやレコーディングのための時間をしっかり作れたんです。

「神ない」のオープニング曲が授けたチャンス

──その時間をかけた打ち合わせはどんな内容に?

まず全会一致で決まったのは「これぞアニソン!」「誰がどう聴いても『オープニングテーマだ!』って思える曲にしましょう」。「これぞ喜多村英梨!」という楽曲ではなく「喜多村英梨が王道アニソンを歌ったぜ!」という楽曲にしようということでした。Aメロ、Bメロをしっかり聴かせた上で、ガツン!とサビにつながる正統派のアニソンを作りましょう。だけど、あくまで喜多村英梨名義の楽曲。ボーカルや音色は喜多村英梨らしいものにしましょう、という話になったんです。そしてそのあと「じゃあ喜多村さん、6枚目のシングルではどんな挑戦をしましょう?」って話になったんですけど、そのとき「これはチャンスだな」って思ったんです。

──「チャンス」?

これまでの曲はほとんど自ハモで、ハモリやコーラスも全部自分で歌っていたんですけど、いつかレクイエムや賛美歌みたいに主旋律とは別のコーラスがドラマチックに重なり合う曲を作ってみたかったんです。そこに退廃感がある上に、かなり直接的に死を扱う「神ない」のオープニングテーマを、っていうお話をいただいて。今なら、そのレクイエム的、賛美歌的なコーラスと共演するっていう挑戦ができるんじゃないかって思ったんです。それでアレンジにも手を加えていただいて。例えば曲の頭の「♪Please, My god.~」っていうフレーズなんですけど……。

──CDに収録されている「Birth」ではコーラス隊が歌ってますよね。

まさにその「コーラス隊が歌っている」という感じを強く打ち出したかったので、アレンジャーの河合(英嗣)さんには、ホントにコーラスアレンジにこだわっていただきました。ただ、主旋律という網の目をかいくぐりながらドラマチックなコーラスを入れるのはやっぱり苦労もあったみたいで。仮レコーディングをしているとき、よく作詞・作曲の山口(朗彦)さんに相談をされていました。

喜多村英梨 ニューシングル「Birth」/ 2013年8月7日発売 / KING RECORDS
初回限定盤[CD+DVD] 1890円 / KICM-91460
通常盤[CD] 1200円 / KICM-1460
CD収録曲
  1. Birth
  2. Lifetime Trader
  3. Birth (Off Vocal Ver.)
  4. Lifetime Trader (Off Vocal Ver.)
初回限定盤DVD収録内容
  • Birth(Music Clip)
小松未可子 ニューシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」/ 2013年7月24日発売 / スターチャイルド
通常盤[DVD] 1500円 / KICM-91464
通常盤[DVD] 1200円 / KICM-1465
初回限定盤収録曲
  1. 終わらないメロディーを歌いだしました。 [作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)]
  2. LISTEN!! [作詞・作曲・編曲:前山田健一]
  3. 終わらないメロディーを歌いだしました。(off vocal ver.)
  4. LISTEN!!(off vocal ver.)
通常盤収録曲
  1. 終わらないメロディーを歌いだしました。
  2. ABC (終わらないサンバを刻みはじめました。 ver.)
  3. 終わらないメロディーを歌いだしました。(off vocal ver.)
  4. ABC (終わらないサンバを刻みはじめました。 ver.)
喜多村英梨(きたむらえり)
喜多村英梨

「キタエリ」の愛称で知られる声優・アーティスト。2003年に声優としての活動を開始し、出演作品は「フレッシュプリキュア!」「まよチキ!」「魔法少女まどか☆マギカ」「お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!! 」など多数。歌手としては2004年4月にデビューを果たし、2011年にスターチャイルドに移籍。3枚のシングルがヒットを記録し、2012年7月に1stアルバム「RE;STORY」をリリース。オリコン週間アルバムランキングで最高5位をマークする。同11月には4thシングル「Destiny」を、2013年1月に5thシングル「Miracle Gliders」を発表し、8月には6thシングル「Birth」をリリースした。

小松未可子(こまつみかこ)
小松未可子

1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。女優として活動しながら、2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。7月にはミニアルバム「Cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を、2013年2月13日には1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。同7月24日、3rdシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」を発表した。


2013年8月10日更新