音楽ナタリー Power Push - 岸田教団&THE明星ロケッツ

今をどう生き抜くか、3rdアルバムに込めたメッセージ

戦場で「童貞のまま死ねるか!」って叫んでる曲

──ちなみに、作詞の割り振りって、どうやってるんですか?

岸田 曲次第ですね。だいたいまず僕が書いてみて、「書けねえな」って思ったらパッて投げちゃう。曲の求める世界観が自分に合ってない曲はichigoさんに任せるっていう。

──そのときに、岸田さんからichigoさんへオーダーみたいなものは?

岸田 その曲に俺が大したこだわりを持ってないときは丸投げですけど、基本、オーダーはあります。このアルバムだと、5曲目の「nameless survivor」はわりと細かく指示を出したかな。

左から岸田(B)、ichigo(Vo)。

ichigo いや、細かいっていうよりは、世界観がはっきりしてた。「なんかお前、世界の問題と目の前の女の問題をごっちゃにしてない?」みたいな歌詞を書いてくれって言われて、それがすごくわかりやかったんですよね。映画とか海外ドラマでよくあるパターンというか。

岸田 そうそう。

ichigo 例えば世界に危機が迫っているのに、物語にはヒロインがいて、そこに必ずロマンスが生まれるわけじゃないですか。その世界観って岸田には向いてないんですよ。岸田はそこでロマンスを発生させない人なんで。

──「世界が大変なのにおまえらチューしてる場合じゃねえだろ」と。

ichigo そうそうそう。岸田はヒロインが人質にとられてても、(銃を構えるポーズで)パーンっていくほうだもんね。「だって世界のほうが大事でしょ?」って。

岸田 うん。その瞬間、人質取ってる悪者は立ち止まってるわけでしょ? 大チャンスだよ。

ichigo こういうやつなんです。まあでも、極端に言うと「nameless survivor」は、戦場で「童貞のまま死ねるか!」って叫んでるだけの、すごくパーソナルな曲なんです(笑)。

この曲が一番、アルバムでやりたかったことが色濃く出てる

──「nameless survivor」は曲調自体もエモいのですが、ichigoさんのボーカルもとても気持ちが乗っているように思いました。

ichigo(Vo)

ichigo もともと岸田が作った曲の世界観と、私の歌詞がうまくハマったのもあるし。あと、やっぱり岸田が書く歌詞って、必ずしも歌う人間にとって歌いやすい歌詞ではなかったりするんですけど、この曲は私が歌いやすいように、私が書きたかったことを書けた。だから「やってみたら、全部うまくいったな」みたいな曲だと思ってます。

岸田 完成するまでわからなかったことがたくさんあってね。自分としては、シンプルな曲で大きな流れを作るっていうことをやりたくて。最終的に、アレンジも演奏のディレクションも含めてうまくできたかなと。それこそ海外ドラマっぽい、無駄な大作感を出せた。

──おっしゃる通りシンプルな曲なのに、すごくドラマチックな印象を受けます。

岸田 そう聴かせるために、細かくフレーズで規定するんじゃなくて、曲全体で強弱の波を作ることを意識したんです。曲が複雑だともっとチマチマした感じに聞こえちゃって、ダイナミズムが失われちゃうんですよね。

ichigo だから歌詞も「世界」とか「どう生き抜いたらいいんだろう」とか、わりと大仰な言葉を選んで。結果、アルバム全体のテーマをダイレクトに伝えるような歌になりましたね。

岸田 そうだね。この曲が一番、曲も詞もひっくるめて、今回のアルバムでやりたかったことが色濃く出てるね。

サブカル野郎ホイホイなガレージロック

──個人的に、僕は7曲目の「life logistics」がすごく好きなんですけど……。

岸田 きた! この曲が好きな人は、僕はサブカル野郎だと思ってます。

──マジですか。

岸田 元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケさんと、元BLANKEY JET CITYの照井利幸さんがやってたROSSOってバンドがあったじゃないですか。あのバンドの持ってる、ポップだけどクローズなバンドサウンドで、SUM41がやりたかったんですよ僕は。だからサビになると西海岸感が出てくるんですけど、ギターはビンテージのグレッチで録ってみたり、全体的にちょっと粗く聞こえるえるようにミックスしたり。

──あのギターの音色と歪ませ具合、絶妙です。

岸田(B)

岸田 実はマスタリングもこの曲だけ全然違ってて。ほかの曲はわりとクリアにマスタリングする方向なのに、この曲はわざと汚す感じにして、90年代のロックバンドを意識しつつ、かつガレージパンク的なサウンドを打ち出したくて。

──そう、一聴してガレージパンクっぽいなって。僕はそのへん通ってきたので。

岸田 「そういうのが好きな人って、いるよね」って思ってやりました(笑)。サブカル野郎ホイホイなガレージロックを。

──まんまと釣られたわけですね(笑)。

ichigo 逆に、私は難しかったですね。そのジャンルは通ってなかったので。たぶん、通ってきた人ならすぐできるニュアンスだったんだろうなって思うんですけど。

岸田 そうそう。要は、ミッシェルに憧れてバンド始めた人たちならすぐさまできる。

ichigo だから「ミッシェルみたいな感じ? あんな声出せないよ?」ってなって。

岸田 「違うんだよ、ニュアンスだから!」みたいな。そのへん通ってる人だったら、俺がこっそりフラワーカンパニーズの「深夜高速」の歌詞を持ち込んでたり、要はサブカル的なロックバンドの流れを強く打ち出してるっていうのをわかってくれるはずだと信じてた。

──サビの「今日も 生きていても良い そんな日がくるといいな」ですね。

岸田 サビはSUM41の「No Reason」に、「深夜高速」の歌詞を乗せた感じ! っていうイメージ(笑)。

ichigo わかんない!

岸田 こういうカラーって、このバンドのキャリアの中で見え隠れしていたものではあるんです。ただそれは、例えばドラムはハイファイにハードロックしてるのにギターの音だけガレージ感があるみたいな、あくまで楽曲の一要素にとどまっていたんです。その一要素を拡大した曲を作りたいなと思って。

──まさにアルバムだからこそできた曲。「絶対シングルA面にならないけど、すっげーいい曲だ!」って思いました。

岸田ichigo はははは!(笑)

3rdアルバム「LIVE YOUR LIFE」2017年3月22日発売 / ワーナー・ホーム・ビデオ
「LIVE YOUR LIFE」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / 品番:1000640261
通常盤 [CD] / 3024円 / 品番:1000640260
「LIVE YOUR LIFE」アナログ盤
アナログ盤 / メロンブックス限定 / 3456円 / 品番:1000642675
CD / アナログ盤 収録曲
  1. 希望の歌
  2. GATE~それは暁のように~
  3. zero-sum game
  4. GATE II ~世界を超えて~
  5. nameless survivor
  6. 天鏡のアルデラミン
  7. life logistics
  8. EGOISTIC HERO
  9. Ruler
  10. Blood on the EDGE
  11. vivid snow
  12. LIVE MY LIFE
アーティスト盤 DVD収録内容
  • LIVE MY LIFE Music Video
  • Blood on the EDGE Music Video
  • 天鏡のアルデラミン Music Video
  • GATE II ~世界を超えて~Music Video
  • GATE~それは暁のように~Music Video
  • LIVE YOUR LIFE TV-SPOT
岸田教団&THE明星ロケッツ ワンマンツアー2017
  • 2017年7月28日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2017年7月30日(日)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2017年8月4日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2017年8月5日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
岸田教団&THE明星ロケッツ
(キシダキョウダンアンドジアケボシロケッツ)

岸田(B)、ichigo(Vo)、はやぴ~(G)、みっちゃん(Dr)からなる4人組のロックバンド。同人ゲーム「東方Project」のアレンジCDやオリジナル楽曲を制作して活動していたリーダーの岸田が、ライブイベントに出演するため2007年に結成した。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の主題歌を含むシングル「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」でメジャーデビュー。2011年6月に1stアルバム「POPSENSE」、2014年12月に2ndアルバム「hack/SLASH」を発売した。2015年3月に東京・Zepp Tokyoにてワンマンライブを開催したのち、2016年1月に「GATE II ~世界を超えて~」、7月に「天鏡のアルデラミン」とコンスタントにシングルを発表。同月には東京・日比谷野外大音楽堂にて単独公演を成功させた。2017年3月に3枚目のオリジナルフルアルバム「LIVE YOUR LIFE」をリリースする。