ナタリー PowerPush - 川田まみ

“青臭い大人”の挑戦が生んだ新機軸

次の光に向かって進むために魔法を解く

──「川田まみの真髄」に気付いてからは音楽が楽しくなったと言っていた通り、今回チャレンジしてみた新しい制作法は……。

楽しくやれてますね。今まではシンガーとアニメっていう関係ではなく、人対人。川田まみとキャラクターが真っ正面から向き合っていたからもうガッチガチだったんですよね。身体中の筋肉という筋肉に力が入ってて。でも、今回は音や言葉について、もっとフラットに「楽しいじゃん」って思えて。少し肩の力が抜けたから楽しめたんでしょうね。

──ただサウンド同様、詞も挑発的ですよね。タイトルが「Break a spell」=魔法を解け。「東京レイヴンズ」は陰陽道や呪術をテーマにしたアニメなのに勇気があるなあ、って(笑)。

それもむしろ作品に対してフラットだったから書けた詞なんだと思ってますね。春虎たちは確かに陰陽師になるためにがんばってはいるんだけど、特に2クール目に入ってからは陰陽師っていう自分たちの家系に翻弄されていたりもするわけですし。だからそこから解き放たれて、次の光に向かって進んでいってほしいなっていう思いがあって、魔法を解いてみました(笑)。以前だったら翻弄される主人公の苦悩を歌っていたんじゃないかなあ。

札幌拠点のボーカリストの残雪観

──カップリングの「remaining snow」は自称"青臭い"「Break a spell」から一転。ちょっとオールドスクールなディスコっぽいリズムに、I've一流のセンチメンタルなメロディが乗った大人っぽいダンスチューンに仕上がっています。

いやいやいや全然そうじゃないんですよ! これはこれで大人のテイストに憧れている青臭い女が歌ってるのがこの曲なので(笑)。この曲を作るとき(作編曲の)C.G mixに「ライブの中盤に似合うちょっとさわやかでノれる1曲がほしい」ってオーダーをして、C.G mixの持ち味である歌謡曲っぽいテイストのメロディとアレンジを作ってもらったんですけど、それに私が歌詞を乗せたあとが大変で! 歌ってみながら、ああでもないこうでもないってすごい試行錯誤しながら、気持ちいいテンポを探りまくって、ようやくできあがったっていう(笑)。

──川田さんにしては珍しくラブソング、それもポジティブなことを歌っていたから「あっ、なんか川田さんが大人になった」って思ってたんですけどね(笑)。

書いてる本人は実はテンパってました(笑)。おっしゃる通り、これまでは自分との闘いというか「よし、未来につながる光をつかんだ!」っていうことをテーマに作詞していたから、特に自分が歌うラブソングってどう書いていいかわからなかったんですよ。いざ書き上がってみても「これ歌うんだよな?」って思ったら、急に照れちゃったりもして。でも今回はせっかく普段の私の曲にはないこういう楽曲をもらったんだからということで「じゃあ普段やらないちょっと切ない系のやついっちゃおうか」みたいな感じで書き始めたものの、最初はまあこんがらがってましたね。

──どうやって解きほぐしました?

この詞は札幌で完成させたんですけど、まさに書いていたときに雪が降ってたんですよ。で、その雪をら見ていたら「2月26日リリースだし、雪をモチーフに冬っぽくもあり、ちょっと春っぽさも出した詞を書いてみようかな」って気になって。それからはわりとリラックスしながら書けた気がします。ただ、ホントに大人の余裕みたいなものはなかった……(笑)。

──でもこの詞って余裕というか、川田さんらしさが刻印されている気はしました。「remaining snow」、要は残雪に明るい希望を見る感じは北海道の人ならではなのかなって。雪のあまり降らない地域の人間にしてみると、降った日の次の日に残った雪のほうが厄介ですし、その残雪を見ると「まだ寒いんだなあ」って気がしますから。

そうかもしれませんね。北海道の私のイメージする残雪っていうのは、3月下旬くらいに、アスファルトが見えて、少し歩きやすくなったとき、道の脇に残ってる雪のことなんですよね。雪解けっていうすごく前向きなイメージと重なるものなんです。ただ単純に前向きかって言われるとそうでもなくて。道の真ん中には雪が溶けるくらいの陽が当たってるし、これから木々が青く生い茂る予感もあるんだけど、日陰になっている道の端っこにはちょっと汚れたグレーの雪が残っている。それはそれでちょっと悲しげだったりはしますし。そこを恋愛っていうテーマに重ねてみたんですけどね。雪の降る地域の方に共感してもらえるとうれしいし、あんまり降らない地域の人には「こういう雪の捉え方もあるんだなあ」って思ってもらってもいいですよね。

川田まみワンマンライブ決定!(自分の中でだけ)

──バンドがネクストステージに足を踏み出して、クラブイベントという新たな活動の拠点もできた。そしてチャレンジャブルな新曲も作った。さて次は何をしましょう?

何も決まってません!

──あはははは(笑)。

「リスアニ!LIVE」みたいなフェスやクラブイベントももちろん楽しいんですけど、個人的には川田まみをドーン!とお見せする機会、やっぱりワンマンライブをしっかりやることが大切だなと思っていて。だから今年はそれをやれたらいいな、と。ただ今言った通り、何も決まってないので、ここを通して、ファンの皆さんと関係者の皆さんに伝えられたらいいなって思ってます(笑)。「私はライブがしたいんだ」と。

──了解いたしました!(笑)

よろしくお願いしますっ!

ニューシングル「Break a spell」 / 2014年2月26日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / GNCV-0034
初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / GNCV-0034
通常盤 [CD] 1260円 / GNCV-0035
CD収録曲
  1. Break a spell
  2. remaining snow
  3. Break a spell(instrumental)
  4. remaining snow(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • Break a spell PV
  • PV Making
  • TV Spot -in stores now ver.-
川田まみ(かわだまみ)

2月13日生まれ、北海道出身の女性シンガー。学生時代から歌手を志し、2001年に島みやえい子の推薦でI'veのオーディションに参加し合格。同年11月に発表された「風と君を抱いて」で歌手デビューを果たす。2004年6月にリリースされた「I've Girls Compilation 6『COLLECTIVE』」収録曲「IMMORAL」「eclipse」で高評価を受け、2005年2月に中沢伴行プロデュースによるシングル「radiance / 地に還る~on the Earth~」でソロデビューした。以降、さまざまなアニメのテーマソングを手掛け、独特の繊細なビブラート、透き通るように伸びやか、かつ力強い歌声で幅広い層からの支持を獲得。2012年8月に通算4枚目のアルバム「SQUARE THE CIRCLE」をリリースし、2013年2月には初のベストアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」、ニューシングル「FIXED STAR」を立て続けに発表した。そして2014年2月、アニメ「東京レイヴンズ」後期エンディングテーマ「Break a spell」をリリースする。