ナタリー PowerPush - THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION×ギターウルフ

ジョン×セイジ 日米ロックンロール頂上決戦

演奏して気持ちがいいからバンドを続ける

──今回のスプリットシングルにはロックンロールのエッセンスが詰まってると思うんですが、お2人にとっての「ロックンロールの極意」を教えてください。

ジョン・スペンサー

ジョン さっきのセイジの話にも通じるけど、普通だったらそんな高いところからジャンプしたら、怪我すると思うでしょう。でもロックンロールって一種の幽体離脱みたいなとことがあって、そういうときは何かの守護霊みたいなものに守られてると思うんだ。理性も肉体も超越したところにロックンロールの極意があるんじゃないかな。

セイジ まあ、女の子にモテたいと思えばいいんじゃない?(笑)

ジョン ああ、OK!

セイジ それがロックンロールの極意でしょ!

──お2人とも同じバンドを長く続けてますよね。しかもメンバーチェンジもほとんどない。それだけ長く続けられる秘訣は?

ジョン セイジにとってはつらい話題かもしれないけど……。

セイジ ビリーのこと?

ジョン そう。かけがえのないメンバーが亡くなったとき、バンドをもう続けられないと思ったことはない?

セイジ あー。ビリーが自分のことを一番理解してたと思うんだけど、ビリーはきっと「セイジは絶対バンドをやめねえよ」と言うと思ったんだ。周りのみんなは、やめると思ってたらしいけど。

ジョン うんうん。なるほど。

セイジ ジョンもラッセルと長いでしょ。彼はときどきアルコールで問題を起こすけど(笑)、それはジョンとしてはどうなの? もちろんナイスガイなんだけど。

ジョン うん、それはもちろん。

セイジ ビリーもナイスガイだったよ。

ジョン 確かに問題を起こすこともあったけど、演奏できないほどのことはなかったからね。

セイジ 酔っ払いすぎて演奏できないなんて、俺らはしょっちゅうだけどね(笑)。

──ジョンも、JSBXとしてアルバムを出したのは久しぶりだったんですけど。

セイジ 8年ぶり?

左からセイジ、ジョン・スペンサー

ジョン そう。8年ぶり。

──バンドをやめないで続けようと思った理由は?

ジョン 2008年に久々ライブをやったんだ。そうしたら……すごく楽しかったんだよ。楽しかったからもうちょっとやってみようか、と繰り返してるうちに、じゃあアルバム作ろうか、という話になってね。結局、バンドを始めたときと理由は同じなんだよ。楽しいから。演奏して気持ちがいいから。バンドによっては、自分のいいキャリアになるからと思って始める人もいるかもしれないけど、俺には理解できないね。

セイジ いいキャリアって?

──好きだから、というよりは仕事として、お金を稼いだり出世の手段としてバンドをやる、みたいな。

セイジ そんなやついるんだ?

ジョン いるんだよ、ときどき。

セイジ 理解できない……。

生々しい音が好きなのはロックを始めた理由と同じ

──あとお2人にお訊きしたかったのは、お2人のバンドの音源の音質についてです。ウルフもJSBXも、いわゆるクリアでクリーンなハイファイのサウンドではないですよね。そこらへんはやはりこだわりがあるんでしょうか?

ジョン 確かにある。偶然そうなってるわけでも、テクニックがないからそうなってるわけでもないよ(笑)。ああいうサウンドにあえてしているんだ。

──ダーティで、スリージーで、ヘビーで、ロウ(生々しい)で。

ジョン そうそう、そういう音が好きなんだ。バンドを始めたり、ロックンロールを始めた理由と同じだよ。弁護士に言われたからでも、レーベルに言われたからでもない。ああいう音が好きで、最高にクールだと思うからだ。

セイジ

セイジ うーん、ZZ TOPみたいな音にしてみたいと、かねてから思ってるんだけど、結局ああいう音になっちゃうんだよね(笑)。ZZ TOPみたいにちゃんとリズムが合った音にしたいんだけど。

ジョン なるほど。ビリー・ギボンズには会ったことある?

セイジ いや、ない。

ジョン でも彼がヒーローではあるんだ?

セイジ いやーそんなこともないんだけど(笑)。俺らのUSツアーのときのドライバーが、クルマの中でしょっちゅうかけるんだよね。それで、こういう音にしたいなと。

ジョン ウルフの「ジェットロックンロール」の前のアルバムってなんだっけ?

セイジ 「ジェットジェネレーション」だね。その前なら「Planet of Wolves(狼惑星)」。

ジョン すごくエクストリームでエクスペリメンタルなサウンドだよね。ストレンジでローファイな。とにかくプッシュ、プッシュ、プッシュで、ガムシャラに押しまくって前に突き進んでいくような。すごく野心的で冒険的なサウンドだと思った。でもギターウルフってアルバムによって全然サウンドが違ったりするよね。プロダクションサウンドが極端に変わるときがある。

──あえて変えてるんですか?

セイジ はっちゃくがスタジオ変えるからかな……(笑)。

ジョン なぜ変える必要があるの?

セイジ うーん……I don't know(笑)。(変えたスタジオが)安いからじゃない? アハハハ!

左からセイジ、ジョン・スペンサー
スプリットシングル「ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン VS ギターウルフ」 / 2013年1月23日発売 / [CD+DVD] / 2835円 / ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル / SICP-3723~4
スプリットシングル「ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン VS ギターウルフ」
DISC1 : CD
  1. スモーク・オン・ザ・ウォーター *
  2. シーズ・オン・イット ~ ジャック・ザ・リッパー *
  3. ガソリン子守唄 *
  4. リーヴ・ミー・アローン・ソウ・アイ・キャン・ロック・アゲイン **

*:新録曲
**:未発表曲

DISC 2:DVD(ライヴ・アット・下北沢シェルター)
ギターウルフ
  1. イナズマのメロディ
  2. オールナイトでぶっとばせ!!
  3. ドーベルマンナイト
  4. ジェット ジェネレーション
  5. ワイルド ゼロ
THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION
  1. メドレー
  • ガズークス
  • テル・ミー・ザット・ユー・ラヴ・ミー
  • スウェット
  • シャート・ジャック
  • ブルース・X・マン
  • ソウル・タイプキャスト
  • アンクリアー
  • (アウトロ)

ボーナストラック:ベルボトムス

THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION
(ざ・じょん・すぺんさー・ぶるーす・えくすぷろーじょん)

プロフィール画像

1991年にアメリカで結成された、ジョン・スペンサー(Vo, G)、ラッセル・シミンズ(Dr)、ジュダ・バウアー(G)からなるベースレスのスリーピースバンド。ブルースとパンクを融合させ、ヒップホップの要素も加えた現代的なロックサウンドで、欧米のみならず日本でも高い評価を得ている。2004年のアルバム「Damage」の発売を機にバンド名をBLUES EXPLOSIONと改名。その後活動が停滞するが、2008年からライブ活動を再開させる。2012年には約8年ぶりのアルバム「Meat And Bone」をTHE JON SPENCER BLUES EXPLOSION名義でリリースした。

ギターウルフ

プロフィール画像

1987年結成のスリーピースロックバンド。革ジャン、革パン、サングラスがトレードマークで、3コードを基本としたシンプルなロックンロールを鳴らす。ヨーロッパやアメリカでの評価が非常に高く、早くから海外でのライブ活動を行っていた。2005年にベースのビリーが心不全により急逝。同年9月に楽器未経験者のUGがメンバーとして加入した。2007年にはセイジ(Vo, G)の股関節損傷を理由にライブ活動を一時休止。2010年からライブ活動を再び本格化させた。2013年3月6日には前作「宇宙戦艦ラブ」から約2年3カ月ぶりとなるニューアルバム「野獣バイブレーター」をリリース予定。