音楽ナタリー Power Push - J

10thアルバムがカッコいい理由

きっかけはmasasucksの復帰

──楽曲は人力というか、バンドサウンドに特化してるのが今作の特徴ですね。

J

せっかくバンドやってるんだから、バンドの一番カッコいいところを追求したくて。何かと比べれば足りないところもあるのかもしれないけど、今回はバンドだけで最高のサウンドを作りたかった。今はDAWとかで簡単にいろんなサウンドを盛り込めるし、それも否定しないけど、あえて4人で何ができるかなと。で、「カッコいいだろ?」って言えるものを作りたかった。そう意味では意地みたいなものもあったかな(笑)。

──意地ですか?

バンドをずっとやり続けてきたからこその意地だね。バンドサウンドの一番カッコいいところを追求したくてね。そういう意味で、まだまだ絶対的な答えをつかんでいない気がするからね。

──今作からmasasucksさんがバンドに戻って来たことも、バンドサウンドに特化するきっかけになりましたか?

それもきっかけになってますね。あとデモテープを作ってる段階から、俺の意識が変わってきたことも大きいかもしれない。よりシンプルに仕上げようと思うようになったんです。空間を塗りつぶすのではなく、隙間を作っておくというか。そうすることで各楽器の息吹が見えてくるんですよね。壁のようなギターを入れたりとか、音圧で勝負するんじゃなくて。それでいて、ものすごいパンチはどうやれば出せるかなと。そこを追求しました。

──それが今作の楽曲のスケール感にもつながってるんでしょうね。

masasucks(G)、ごっちん(Kazunori Mizoguchi / G)、スコット・ギャレット(Dr)、Yoshio "masuo" Arimatsu(BACK DROP BOMB / Dr)くんというバンドメンバー全員が素晴らしいプレイヤーだから実現できたんだと思う。

「LUNATIC FEST.」回想

──少し振り返って話を聞かせてもらいたいんですが、今作が出る前に「LUNATIC FEST.」がありましたよね(参照:先輩後輩セッションにX JAPAN公開REC!狂乱の「LUNATIC FEST.」初日 / LUNA SEA&GLAY同世代共演も実現した奇跡の「LUNATIC FEST.」完結)。Jさんはほかのアーティストのステージに何度も飛び入りしていて。飛び入りの数はLUNA SEAメンバーで最多だったんじゃないですか?

そうですか(笑)。9mm Parabellum Bullet、ROTTENGRAFFTY、BUCK-TICK、AIONのローディーもやらせてもらったしね。あのフェスも本当に夢のような、まさに奇跡の2日間だったと思います。自分たちが主催する初めてのフェスだったからこそ、僕たちの価値観みたいなものをみんなに感じてもらいたいと思ったしね。でも25周年の締めくくりに、俺たちが逆にとんでもないギフトをもらった気がする。あれだけすごいバンドたちが集まってくれて、ガチで演奏してくれることってなかなかないことだし、いまだにいろんな方面から「すごかった!」という感想をもらいますからね。

──ほかの出演者のステージに飛び入りしたのは、どういう気持ちから?

J

9mm Parabellum Bulletで言えば、俺たちがLUNACYでオープニングをやったにせよ、あのフェスの1発目のバンドということでプレッシャーもあっただろうから、それを和らげるために……もしくはいい意味でプレッシャーを強めるためにね(笑)。でも、9mmのステージに飛び入りしたことで、あのフェスの指針というか、「今日はこんなことも起きるぜ!」というのをオーディエンスに示せたと思う。楽しかったですね。

──なるほど。

あと、一連のLUNA SEAの活動を経て、自分がどうあるべきなのか改めて強く見えてきたものもあって。「LUNATIC FEST.」で言えば、俺たちが影響を受けてきたバンドがいまだにガンガン最前線でやってるのを観て、本当にちゃんとしなきゃいけないなって思った。

──ちゃんとしなきゃいけない、ですか?

無責任ではいられないなと。まぁ、責任ってロックから一番遠い場所にある言葉かもしれないけど(笑)。カッコよさという言葉にもつながるけど、たとえば、何が流行ってるとかこれがブームだとか、そういうところで音を作っているようでは存在意義はないなと。

──時代に風化されない歌、メロディ、楽曲を作ろうと?

うん、自分が追いかけてるものがそういう絶対的なものだから。ずっと鳴り続ける音と言うか……それを今回のアルバムでは作ることができたと思う。

いちロッカーとしてずっといたい

──あと、昨年11月に5回目を迎えたJさん主催のイベントも、アルカラ、NAMBA69、The BONEZ、FULLSCRATCH、OVER ARM THROW、AA=、TOTALFAT、[Alexandros]、RADIOTS、女王蜂と、ジャンルはバラバラですが基本的にライブハウスで活動するバンドをチョイスしてます。どういう基準なんでしょうか。

それは僕の嗅覚というか。たとえば、LUNA SEAは周りがヴィジュアル系と言ってただけで、ヴィジュアル系をやろうと思ってやり始めたバンドではないんだよ。刺激的なサウンドや、存在でありたかっただけで。今までもそんな純粋な思いを持つ、カッコいいバンドはたくさんいるよね。僕自身、ロックを聴き始めて、ロックをやり始めて、ずっと変わらない姿勢を持ち続けてきたつもり。音楽が持ってる情熱やエネルギーに相変わらず刺激を受け続けてるから。純粋にファンだったり、カッコいいと思うバンドと一緒にやりたい。それだけですよ。それには世代もジャンルも関係ないし。僕もライブハウスから出てきた人間だから、いちロッカーとしてずっといたいだけだね。

──若いバンドからも刺激を受けたい、何か忘れていた感情を思い返したいという気持ちもあります?

J

ありますよ。俺自身も刺激には飢えてるしね。いつの時代も天下をひっくり返すのは若いヤツらだから。音楽シーンを変えていくのは新しい波じゃない? 当時の僕らもそうだったと思うから。

──若手のバンドに伝えたいことはあります?

いつも言ってるんですけど、もっとやっちゃえ!って。

──シンプルですけど、Jさんに言われると説得力があります。

僕自身ももっとビックリしたいからさ。誰にでもチャンスがあるし、バンドは可能性があるしね。もっといろいろやっちゃっていいんじゃない。今はカッコいいバンドだらけだし、みんなうまいんだから。

──あえて聞きますが、今のバンドや若い世代に足りないものは何ですかね?

うーん……あるとすれば、みんな仲がいいなって。なんでだろうと思う(笑)。

──Jさんの世代はバチバチですか?

っていうか、まあ音楽的に被ってるバンドはあんまりいなかったですね。まあこういうことを言うと、“うるせえオヤジ”になっちゃって隔たりができるから嫌なんだけど(笑)。だって俺が20代だった頃「何言ってんだよ、オヤジ!」と思ってたからさ(笑)。でも本当に、今しかできないものを全開でやればいいし、その中からこのシーンを全部をひっくり返すような瞬間が見られるといいなと思ってます。ちなみに何年生まれですか?

──昭和47年生まれです。

同じ世代だね。だったら80年代の音楽に洗礼を受けたでしょ? MTVやニューロマンティックのムーブメントがあって、その後にハードロックの流れがあり、それをぶっ壊したグランジがあって、さらにそれを壊したヒップホップがあり……。こんなにシーンが入れ替わる瞬間が見られるのはものすごいことだよね。楽しくなかった?

──ええ、楽しかったです。

そのときのワクワク感って、本当にとんでもないと思うから。それが日本のロックシーンでもずっと前から何度も起きてきたと思うんだよね。そしてそれは誰でも起こせることでもある。だから、もっとめちゃくちゃにやってほしいですね。

──わかりました。Jさんの今後の展望というと?

最高なアルバムが完成しました。それを引っさげた全国ツアーも始まるので、みんなにも騒ぎに来てほしいですね。一緒に熱く盛り上がりましょう。

J
ニューアルバム「eternal flames」2015年9月2日発売 / cutting edge
スペシャルボックスセット [CD+DVD+バンドスコア+写真集] 10800円 / CTZD-20034/B
「eternal flames」
CD+DVD / 4104円 / CTCD-20035/B
CD / 3240円 / CTCD-20036
CD収録曲
  1. Verity
  2. my answer
  3. I know
  4. Immortal galaxy
  5. never gonna die
  6. with you
  7. wall
  8. Rollin'
  9. dream on
  10. Jayne
  11. Believer
DVD収録内容
  • I know(Music Video)
  • Documentary Film ※スペシャルボックスセットのみ収録
J LIVE TOUR 2015 - Live On Instinct -
  • 2015年9月5日(土)宮城県 Rensa
  • 2015年9月6日(日)新潟県 新潟LOTS
  • 2015年9月12日(土)香川県 DIME
  • 2015年9月13日(日)広島県 CAVE-BE
  • 2015年9月19日(土)福岡県 DRUM Be-1
  • 2015年9月20日(日)福岡県 DRUM Be-1
  • 2015年9月23日(水・祝)北海道 cube garden
  • 2015年9月26日(土)石川県 Kanazawa AZ
  • 2015年9月27日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2015年10月3日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2015年10月4日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2015年10月10日(土)東京都 赤坂BLITZ
J(ジェイ)
J

1992年、LUNA SEAのベーシストとしてアルバム「IMAGE」でメジャーデビュー。1997年のバンド活動休止期間にシングル「BURN OUT」でソロデビューを果たす。2000年12月のバンド終幕以降、本格的なソロ活動を開始。LUNA SEA時代からソングライターとして知られる彼ならではの、パワフルでパンキッシュなロックサウンドが高い支持を得る。2003年にはソロとしては初となる東京・日本武道館でのライブを敢行。また楽器メーカーESPから発売されているJオリジナルモデルのベース販売数は累計で5万本に達し、世界でもっとも売れているアーティストモデルのベースとなっているなど、現在も次世代のベーシストに影響を与え続けている。2008年にLUNA SEAが“REBOOT”(再結成)して以降は、ソロと並行して音楽活動を展開。2015年9月、通算10枚目のオリジナルフルアルバム「eternal flames」をリリースする。