ナタリー PowerPush - 石崎ひゅーい

1stシングルで日常を脱出 「ファンタジックレディオ」

石崎ひゅーいの1stシングル「ファンタジックレディオ」はポップで温かい感触を持つメロディと、どこか想像の世界を歩いているかのような言葉とが印象的な歌である。今年の7月にミニアルバムでデビューし、まっすぐな歌と飾らないキャラクターで注目を集めた彼だが、その魅力がこの曲ではまた別の形になって発揮されていると感じる。また今回は、無観客で行ったライブをシューティングした初のDVDも同時にリリース。現在は主に各地でのイベント出演と制作活動に打ち込んでいる彼だが、そうした日々の中でどんなことを思い、感じ、考えているのか。そして「ファンタジックレディオ」はどんな背景から生まれてきた曲なのか。今回も表情豊かに、人間味たっぷりに語ってくれた。

取材・文 / 青木優 インタビュー撮影 / 広川智基

キャンペーンずっとやらせてくれ

インタビュー写真

──デビューしてから、どんなふうに過ごしていますか?

デビューして、キャンペーンを初めてやらせてもらったんですよ。ライブをしないで、ラジオとかの番組に出て、ちょっとしゃべって、おいしいもの食べさせてもらって、酒飲んで寝る、みたいな。「マジ最高だな!」って思って(笑)。すごく楽しかったです。

──キャンペーンがそんなに新鮮だったんですか?

すごく新鮮でしたね。だからスタッフに言ってるんですよ、「キャンペーンずっとやらせてくれ」って(笑)。

──(笑)。取材などで質問を受ける中で、自分について気付いたことはあります?

そうですね、自分のことってあんまりよくわかってないので、それを教えてもらってるみたいな感じがありますね。デビューしてからはインタビューをやってもらって、「あ、こういうふうに自分のことを伝えればいいんだ」と勉強になってるというか。1回1回。

J-POPのチャートに潜入してぶっ壊したい

──そんな中で、例えば「もっとこんな歌を歌いたいな」と思うようになったりしてます?

ああ、「もっと自由な状態で作ってたいな」という意識は芽生えたかもしれないです。それはソロになってから考えてることではあるんですけど。いろいろな制約みたいなものは考えないで、純粋に音楽を作っていたいとは、すごく感じますね。

──それをデビュー後に、より強く思うようになったんですか?

はい。デビュー前は、もっといろいろなことをやらされると思ってたんですよ。「売れるためならなんでもやる」「売れたい」という気持ちが強かったから、例えば誰かが作った歌を歌うとか、売れそうなものを意識しようとか、思ってたんですけど。でも今は全く逆で、レコード会社や事務所から言われるのは「自由に作れ」ということなんです。そういう環境を与えてもらっているのもあるし、1stミニアルバムを出して、ソロの活動を始めて、その気持ちがどんどん強くなっていってますね。

──じゃあ今でも売れたいとか成功したいという気持ちはあります?

インタビュー写真

あ、全然あります。それは変わらずに。これは自分の夢なんですけど、J-POPといわれるチャートみたいなのがあるじゃないですか。そこで「スター・ウォーズ」のデス・スターをぶっ壊すような感覚というか……飛行機でワーッて中まで行って、中からボーン!とぶっ壊す、みたいなイメージがあるんですよね。それでいけるんじゃないか、と。僕、今の日本で支持されてる音楽がつまんないと思ってるんです。僕は1990年代前半頃の、いろんな曲が100万枚売れてた時代のJ-POPの歌がすごく好きなんですよ。人間ぽくて、ヘタだけど味があるというか。だけど今の歌は、すごく薄っぺらく感じるんですよね。だから俺は、まずその中に潜入する。そしてぶっ壊す!みたいな。

──(笑)。大きな理想ですね。でも潜入するという足掛かりはできたんじゃないですか。

うん、成功したんじゃないかなと。メジャーでデビューしたところで、飛行機に乗り込んだ感じがちょっとあるんじゃないかなと思っています(笑)。

ライブDVD / Blu-ray「キミがいないLIVE」 / 2012年11月21日発売 / EPICレコードジャパン
「キミがいないLIVE」 / [DVD] / 2000円 / ESBL-2331 / Amazon.co.jpへ
「キミがいないLIVE」 / [Blu-ray Disc] / 2000円 / ESXL-21 / Amazon.co.jpへ
収録内容
  1. ガールフレンド
  2. シーベルト
  3. 常識
  4. ナイトミルク
  5. 第三惑星交響曲
  6. 3329人
  7. ひまわり畑の夜
石崎ひゅーい (いしざきひゅーい)

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身の男性シンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、高校時代より音楽活動を開始する。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年4月から行われたRakeの全国ツアーでは12会場でオープニングアクトを務めた。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビュー。11月には1stシングル「ファンタジックレディオ」と、初のライブDVD / Blu-ray「キミがいないLIVE」を同時リリースする。自身の心情やエピソードを歌った、赤裸々な中に幻想的な表情を見せる歌詞、強い印象を与えるメロディライン、ダイナミックなライブパフォーマンスで、大きな注目を集めている。