ナタリー PowerPush - IsamU

社会経験が生きたリアルな詞世界 ミステリアスな新鋭に迫る

デビューが決まっても普段と全く変わらない日常

──就職をしてからデビューに至るまではどのくらいの期間だったんですか?

3、4年ですね。

──短くはない時間ですよね。

そうですね。その間は毎年、年末とか自分の誕生日とかっていう節目のたびに、この先どうしようって思い悩んではいました。音楽と仕事、それぞれちゃんとやってるつもりでしたけど、もしかしたらどっちも中途半端になっちゃってないかなっていう不安もありましたし。そんな中でも音楽を諦めることはしなかったですけど、これが例えば30歳という大きな区切りまでに何も形になっていなかったら、また違った考え方をしていたかもしれないです。

──そんなIsamUさんにとって大きなチャンスが巡ってきたのは2011年でしたね。

はい。共通の知人を介してWEAVERの杉本(雄治)さんと会って話してるうちに、僕の曲をカバーしていただけることになったんです。で、WEAVERのミニアルバム「ジュビレーション」に入ってた「負けんな!」や、ツアー会場限定CDに「facing you」を提供させてもらって。そこから自分でも歌ってみませんかというお話をいただき、今回のデビューに至るわけなんですけど。グラついてた気持ちが崩れる前に固まってよかったなってほんとに思いますね(笑)。

──念願のデビューが決まったときに気持ちはいかがでした?

ようやくここまで来たなっていう気持ちはありましたね。でも現実感は思ったほどなくって。デビューが決まったら自分の生活がものすごく大きく変化するのかなっていう妄想をしてたんですけど、実際は普段と全く変わらない日常で。それこそ去年、「Only」が配信された日も普通に会社で仕事してて。こそこそっとiTunesのページ開いて「あ、出てる」って見たりしてましたから(笑)。

──あははは(笑)。杉本さんとコラボしたときは加藤イサム名義でしたが、デビューにあたってはIsamUという表記に変更されたんですね。

はい。イサムっていうのは自分が生まれたときにあった名前の候補からとりました。それをローマ字にしたのは、“I”と“U”という文字が入っていたから。自分の歌詞の中には僕や君、あなたや私っていう一人称、二人称が多く出てくるので、意味がちゃんとあるんじゃないかと。あとは今回のアルバムタイトルにもなっている「I am the same as you(似た者同士)」という自分の中から出てきたメッセージから文字を抜き出してIsamUになっているという意味もあります。自分でもうまくまとまったなと思います(笑)。

幸せになりたい、幸せを信じたい

──全10曲が収録されたデビューアルバムを聴かせていただきましたが、どれもが非常に共感できる内容でありつつも、ドキッとさせられる独特な視点を持っていますよね。

今回の曲は学生時代、20歳から23歳くらいに作った曲がほとんどなんですけど、考え方のベースはずっと変わってないんだなっていうのは改めて思いましたね。今の自分からすると青いなって思うところもありますけど。

──その年齢で作られた曲たちにしては、物事に対する考え方がすごく大人だったりもしますよね。

すごくひねくれた性格でもあるので(笑)、キレイごとだけ歌うことをしないからかもしれないですね。そこは曲作りを始めた頃からずっと一貫してる部分で。そんなに世の中うまくいかないよねっていうところをつい入れたくなってしまうんですよ。それが性分なんでしょうね。

──なるほど。でも冷めた感じは全くないですよね。

ああ、そうですね。完全に幸せにはなりきれないけど、幸せになりたい、幸せを信じたいみたいなところが土台にあるからかもしれないです。

──そういう歌詞の書き方は誰かから影響を受けている部分もあります?

槇原(敬之)さんやミスチルの桜井(和寿)さん、スガシカオさんですね。わかりやすい言葉を使って、ちゃんとストーリーを追っていける感じの歌詞は槇原さんから影響を受けてますし、ドキッとする言葉遣い、「うわ、そこ言っちゃうんだ」っていうところは桜井さんやスガシカオさんから影響を受けてると思います。

──ではメロディに関して自分の特徴だと思う部分は?

メロディはJ-POPであることを意識してることですかね。キャッチーでちゃんと盛り上がりがあってっていう部分は大事にしてます。あとはタカタカタカタカっていう細切れなリズム感、言葉の走らせ感っていうのは、中学時代にすごく好きだったクレイグ・デイヴィッドに影響を受けたところかもしれないですね。

デビューアルバム「I am the same as you」 / 2013/01/16発売 / 1980円 / A-Sketch / AZNT-2
1stフルアルバム「I am the same as you」
収録曲
  1. 負けんな!
  2. 100回泣くこと
  3. 代々木公園
  4. Drive
  5. インソムニア
  6. Only
  7. 蝙蝠
  8. 引っ越し
  9. ハッピーエンド
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IsamU(いさむ)

1985年生まれの男性シンガーソングライター。アーティスト名は「I am the same as you.(似た者同士)」という言葉から作られた造語で、「人と人の距離を縮め、いつでもあなたの傍にいたい」という思いが込められている。2011年にWEAVERの杉本雄治のソロミニアルバム「facing you」に加藤イサム名義で楽曲を提供したことを機にデビューのチャンスをつかみ、2013年1月に満を持してアルバム「I am the same as you」でA-Sketchからデビューを果たす。