ナタリー PowerPush - 秀吉

草食系ニューカマーが素朴で力強い新作を語る

群馬発、インディーズシーン要注目の3ピースバンド、秀吉。素朴な人柄がにじみ出た楽曲の世界観と、ボーカル・柿澤秀吉の柔らかく力強い歌声には、思わず耳を持っていかれる。

今回ナタリーでは、2ndミニアルバム「コンサート」のリリースに伴い、バンドの結成から今作の制作に至るまでの経緯を掘り下げるべく、インタビューを敢行。次世代のギターロックバンドを牽引しそうな彼らの声に耳を傾けてほしい。

取材・文/川倉由起子 インタビュー撮影/中西求

2週間くらい、モテた気がします(笑)

インタビュー写真

──バンドを結成したいきさつは?

柿澤(Vo,G) まずは僕とベースの町田が小・中学校と一緒で。小学生の終わりくらいから音楽に興味を持ち始めて、中学に入ると先輩が文化祭とかでバンドをやるじゃないですか。そういうのにすごく触発されたんです。

町田(B) 僕も最初に楽器を持ったのは中1か中2くらいでした。

柿澤 で、なりゆきで町田とバンドを始めて。最初はひたすらコピーをやってて、中3で初めて文化祭のステージに立ったんですよ。

──ほう! そのときのエピソードは?

町田 当時、ニックっていう外人の先生がいたんですけど、彼が僕らのステージを観て(肩をすくめて“?”のジェスチャー)こうやってました。「こんなんは音楽じゃないよー」みたいな。あんなベタな外人を見たのも初めてでしたけど(笑)。

──自分たちの手ごたえは?

柿澤 ちょっとモテなかったっけ?

町田 うーん、ちょっとモテたくらいでしたね。

柿澤 誰々が好きって言ってるみたいな噂程度ですけど、2週間くらいモテた気がします(笑)。

このバンドなら上を目指せるんじゃない? って

──高校入学後にドラムの濱野さんが加入するんですよね?

柿澤 高校ではオリジナルをやってて、その時に濱野くんがやってたバンドと対バンしたりしてたんです。で、当時の僕らのバンドは、ドラムがちょっと違うなって思ってたんですけど、あるライブの1週間前に彼が音信不通になってしまって(笑)。しょうがないから2人でやろうって前日にスタジオに入ったときに、濱野くんがスタジオの店員だったんですよ。

──おお、ちょっと運命的?

柿澤 それで「やってください」ってお願いしたんです。もう、ノリで(笑)。僕らも切羽詰まってたんで、とりあえずヘルプでってお願いしてやってみたら、割と合うかも! って思ったんです。

濱野(Dr) 僕は前のバンドは解散して、当時は就職でもしようかなって感じでアルバイトをしていたんです。そんな中で声をかけられたので、半年くらいならいいよって答えて。で、一旦就職して秀吉は辞めるんですが、半年間くらいして……。

柿澤 なんか、仕事が嫌になった的な感じで……(笑)。

濱野 わはは(笑)。

柿澤 出戻りで入ってもらって。でもそのときにやったライブが結構よかったんですよね。今思えば懐かしかっただけなのかもしれないけど、当時は「コレいいんじゃない?」って。高崎FLEEZの当時の店長にも、やっぱこれだねって言われました。

町田 以前よりはるかによかったもんね。

濱野 僕がいない間のDVDを見せてもらったときも、前とは声や曲がガラッと変わってたんです。で、「ああ、これ好きだな」って思って、バンドに正式に入ろうと思って。僕が入らなきゃ他のドラムが先に入っちゃうって思ったくらいだったし、このバンドなら上を目指せるんじゃない? って。

「秀吉」という名前は、最初は2~3カ月のバンドだと思って付けたんです

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──CDデビューのきっかけは?

柿澤 それから東京のライブハウスにも出始めて、ちょいちょい(デビューの)声もかかるようになって。

町田 そんな中で、今のレーベルの方が声をかけてくださって今に至るという感じですね。

──ちなみにバンド名の由来は何ですか?

柿澤 うーん、不思議ですよね(笑)。

──あ、でも柿澤さんの下の名前っていうのはわかってますよ。

柿澤 はい(笑)。これ、最初は2~3カ月くらいのバンドだと思って適当に付けたんです。

町田 最初から変える体でね。でもそれがズルズルと……。

柿澤 何回も変えたいと思ったし「変えたほうがいいんじゃない?」って言われたこともあるし。でも、今はそのくらいのあまり好かれなさそうな名前が気に入ってるかもしれないですね。絶対、大ヒットとかしなさそうじゃないですか?

町田 この名前で売り出そうとしてくれる人ってそんなにいないと思うんですよ。

──いやいや、インパクトはすごいと思いますよ。そもそも柿澤さんの親御さんはどういう理由で命名されたんですか?

柿澤 なんかその、豊臣秀吉って農民から這い上がったじゃないですか? そういう感じで、出世していって……みたいな。

──偉大な名前ですよね。

柿澤 でも、社会の授業とかで気まずい時間はいっぱいありましたね。

──でも今は少しオイシイと思っていたり?

柿澤 うーん、オイシイ、のかな?

町田 秀くん的には自分の名前ってことで名前を覚えてもらえますよね。ただ、僕らのメリットは一切ないです! (バンド名として)別にカッコいい名前でもないし。

柿澤 ……(苦笑)。

ミニアルバム『コンサート』 / 2009年7月15日発売 / 1780円(税込) / ラストラム・ミュージック エンタテインメント / LACD-0159

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CD収録曲
  1. 夜風
  2. コンサート
  3. 虫の音
  4. くもり
  5. あさなぎ
  6. 道草の唄
秀吉(ひでよし)

群馬県で結成された3人組ロックバンド。地元を中心に精力的なライブ活動を展開し、柔らかく美しいメロディライン、しなやかさと力強さを併せ持つアレンジが高い評価を受ける。2007年に自主制作アルバム「アワイオト」をリリース。2008年11月にはデビューミニアルバム「へそのお」をリリースし、全国ツアーも開催。次世代を担うバンドとして、幅広い層から注目を集めている。バンド名の「秀吉」は、柿澤秀吉(Vo,G)の本名から命名。