ナタリー PowerPush - ハルカトミユキ

鋭く時代を切り開く23歳ユニットの素顔

私の書く歌詞は音があるからこそ成立する

──そうした日常の違和感を曲に変換しつつ、ハルカトミユキの曲はまったく救いがないわけではないですよね。

ハルカ(Vo, G)

ハルカ そうですね。例えば実体験にもとづいた1曲目の「ドライアイス」は、大切な人が絶望的な状況に置かれて、日に日に事態が悪化しているのに助けられない、声をかけられない自分の無力さを歌っているんです。答えはまだ見つかってなくとも、ごまかしの希望とは違う本当の希望がどこかにあるんじゃないかということを歌っていますし。

──2曲目の「ニュートンの林檎」も歌っていることは重たいですけど、皮肉めいたタッチがクッションになっていますよね。

ハルカ ホントの原因は他にあるはずなのに、「いじめられているほうが悪い」とか「いじめられてもがんばっている人もいるのに自殺した、その人に原因がある」っていうことを平気で言う人がいるじゃないですか。そういう人のことを皮肉っぽく書いたんです。皮肉な、ひねくれたという意味では、3曲目の「POOL」の場合、ひねくれた末にまっすぐになっちゃったという感じ(笑)。

──確かにハルカさんの歌詞は、ひねくれたタッチに特徴がありますよね。4曲目の「グッドモーニング、グッドナイト」もひねくれ、卑屈な思考が全開です(笑)。

ハルカ ははは(笑)。これは対人関係がテーマで、表面的なものと実際に心の中で思ってることが違ってて。周りのことを考えずにネガティブなことをそのまま口にしてしまったら、対人的にはダメ人間なんだろうけど、自分は常にポジティブなわけでもなければきれいな人間でもないよっていうことを歌っています。でも、こうして曲について話していて思ったのは、私の書く歌詞は音があるからこそ成立するものばかりですね。

──5曲目の「未成年」もそうですよね。

ハルカ そうですね。子供の未熟な視点から大人に対して歌っている曲というか、大人になれない大人の曲。実社会ではなかなか許されないことかもしれないけど、こういう気持ちは音楽の中でこそ成立するし、聴く人にも同じように感じてもらえるんじゃないかなって思いますね。

バンドではない自由度の高さ

ハルカ(写真左)、ミユキ(写真右)

──音楽的には「ドライアイス」のようなエモーショナルなバンドサウンドがあったり、「グッドモーニング、グッドナイト」のようなフォークチューンがあったりと、アレンジの幅は広く取られていますよね。

ハルカ やっぱりフォークの要素は残しておきたいし、曲それぞれ、一番ふさわしいアレンジを考えて、それが結果的にいろんなタイプの曲になったらいいなと思いますね。

ミユキ ただバンドアレンジを施すと、ともすればバンドサウンドが先立ってしまうので、そこでハルカトミユキの個性をどう出していくか。2人のボーカルのハーモニーや不協和音的な部分を出せば出すほど、私たちらしさは色濃くなるのかなって思いますね。それと同時に私たちはバンドではないので、その自由度の高さは今後も生かしたいと思ってます。

──しかし、普段なかなか口にできないことを歌い叫び、たまったフラストレーションや不協和音をステージで発散するハルカトミユキは、音楽という表現と出会えて救われた2人というか。もし音楽と出会えてなかったら、今頃何をやっていると思います?

ミユキ (笑)。ヤバいですよねー。

ハルカ 大学出て、そのまま働いていたとしたら、今頃は屍のようになっているか、それともクビになっているか(笑)。この歌詞をそのまま行動に移したら、きっと大変なことになるでしょうから(笑)、このまま子供っぽい部分を捨てずに言葉を書きつつ、広く聴いてもらえる、そんなアーティストになれたらなって思いますね。

初ワンマンライブ「ドライ・バニラアイス」

2013年3月28日(木)東京都 WWW
完全招待制

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ハルカトミユキ

立教大学の音楽サークルで知り合った1989年生まれのハルカ(Vo, G)とミユキ(Key, Cho)によるユニット。ライブを中心とした活動を展開し、2012年11月に初の全国流通音源となるミニアルバム「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」をリリース。静謐さと激しさをあわせ持つサウンド、刺激的な歌詞で大きな注目を集め、iTunes Storeが選ぶ2013年期待の新人アーティスト「ニューアーティスト2013」にも選ばれる。2013年3月、2ndミニアルバム「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」をリリースする。