音楽ナタリー PowerPush - グランド・セフト・オートⅤ

増子直純「ここがヤベーよ『GTA V』」インタビュー

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増子直純インタビュー

「GTA」シリーズを始めるんだったからここから

──増子さんは「GTA」の大ファンだそうで。

うん。でもやり始めたのはXbox 360版の「GTA V」からなんだよね。

──意外です。

増子直純

前作の「GTA IV」も、PSP版の2本も、ソフトは全部買ってるんだけどね(笑)。洋ゲーは1つのゲームのやり込み要素がすごいから簡単には手を出せなくて。しかも、ほかに「Fallout」とか「コールオブデューティ」とかやるゲームがいっぱいあってさ。どのタイミングで「GTA」の封を開けようか、頃合いを見計らってたんだよね。ちなみにこの前「コールオブデューティ」の新しいやつ買ったけど、まだ開けてない。

──ゲーマーらしい意見ですね(笑)。なぜ「GTA V」でやり始めたんですか?

ゲーマー仲間の間ですごぶる評判がよくて。ゲームシステムやストーリー、グラフィック、あらゆる面で「今回のはヤバい。『GTA』やり始めるんだったからここからですよ、アニキ」って薦められて。「前のやつも買って持ってるんだよね」って言ったんだけど、「いや、こっからです!」って。それでようやく始めたわけだけど、本当にすごかった。ヤバい。

──具体的にどのあたりをヤバいと感じましたか?

実は昔PSPの「グランド・セフト・オート・バイスシティ・ストーリーズ」をちょっとだけやってるんだよ、俺。でもその当時はゲーム自体があまりに自由すぎて、何をやっていいかわからなくて。

──なんでもできるが故に何をしていいかわからない、みたいな。

そうそう。だから「GTA V」をやったら同じゲームとは思えなかった。自由なんだけど、ストーリーは映画並というか。その映画の中を勝手に動き回れる楽しさっていうのかな? そんなエンタテインメント、ほかにないでしょ。

どこにリアリティを求めるか?

──確かに「GTA V」の世界は徹底的に作り込まれてますよね。

そうだね。しかもその自由さがストーリーを邪魔しないじゃない? バランスがいいというかさ。銃の照準もそうだし、車の運転もそうだよね。

──どういうことでしょう?

PlayStation 4 / Xbox One用「グランド・セフト・オートⅤ」プレイ画面。

どこにゲームのリアリティを求めるかってことなんだよね。「GTA V」はそのジャッジのセンスがいい。例えば、俺はレーシング系のゲームをやらないんだよ、操作が難しすぎてさ。そこまでリアルにこだわるんだったら本物乗るわ、みたいな。でも「GTA V」は程よく難しい。運転してる感覚はあるんだけど、それがちょうどいい塩梅なんだよ。

──車種によって操作感がかなり違いますよね。

そうそう、そのへんはすごいリアルだよね。さっきタコス屋の車を盗んだら遅すぎてビビった(笑)。俺なんかはよく好きな音楽かけて、ただ車を運転したりしてるよ。

──音楽も重要な要素ですよね。車のラジオから音楽が流れるという設定自体がしゃれてます。

自分の実生活でも知ってる曲がラジオとかで流れてると、「おっ」ってなるじゃん。ゲームでそれが体験できるってホントにすごいと思うよ。俺、「GTA V」の影響でSuicidal Tendenciesとか買い直したもんね。ゲーム中にBlack Flagの「My War」がかかると、「まぁーい、うぉー!」とか絶叫したり(笑)。この前、現実世界でも聴きたくなって、InterFMに「My War」をリスクエストしたんだ。

──Punkチャンネルに入ってましたね。ちなみに今回のPS4 / Xbox One版には161曲追加になったそうです。

マジで!? (追加曲リストを観る)すごいね。おっ! D.R.I.あんじゃん。日本が舞台で「GTA」作る際は、ぜひ俺らに声かけてほしいね。曲作りたいわ。ロックチャンネルは俺らで、ヒップホップチャンネルはRHYMESTERにお願いしてさ(笑)。

悪党として生きる

──今作は主人公が3人います。

増子直純

登場人物が全員ヤバい(笑)。みんな自分のことしか考えてないのがリアリティを感じる。目の前のことをごまかそうとして、あとからたいへんなことになるっていう。思慮深くないっていうか、短絡的っていうか。そのへんが笑える。

──犯罪的なものもテーマの一部にはなっているんですが、根っこにアメリカ文化に対する批評性があって、しかも目線がコミカルっていう。

そうそう。そのへんが映画っぽいよね。マイケルとかもそうだけど、主人公たちの家庭環境のひどさとかもうギャグでしょ。家族がそろいもそろって最低っていう。

──プレイ中に明らかになりますが、家庭環境のひどさではトレバーが抜きん出てますよね。

あはは(笑)。もうさ、トレバー最高だよね。ゲームの主人公でうすらハゲとかあり得ないでしょ。今日被ってるこの帽子。これ、ゲームの中でトレバーが被ってるのと同じやつなんだよ。オークションで落札したの。

──トレバーは「GTA」史上屈指のクレイジーなキャラクターと言えるんじゃないでしょうか?

PlayStation 4 / Xbox One用「グランド・セフト・オートⅤ」プレイ画面。

間違いない。あんなのと絶対に関わり合いたくないよ。あとマイケルの、自分の都合しか考えない感じとかも笑えるよね。でも、そこが「GTA」の魅力の1つだと思うんだよ。あんなクレイジーなキャラたちの人生の一部をトレースできちゃうんだもん。誰だって1回くらい悪党になってめちゃくちゃやってみたいって思ったことあると思うんだよね。それが体験できる楽しさは「GTA」ならではって言えるんじゃないかな?

時間は己が作るべし

──PS4をまだ持ってない人も多いと思いますが。

俺も持ってないんだよ。今まではキラーソフトがまだなかったし、あってもPS3やXbox 360でできるやつばっかだったから。でもね、今回「GTA V」やって間違いなく買うね、俺は。もういいわ。十分待った。

──そんな違いますか?

ヤバい。全っ然違う。PS4ってさ、コントローラーにスピーカーついてんのよ。携帯への着信もコントローラーから聞こえるから臨場感がすごい(笑)。それにミッションが追加されてるからね。今回、これまたアホみたいにやると思うよ。

増子直純

──初めての人にはどうやってオススメしますか?

初めての人は、ここから「GTA」の世界を始められるのは幸せだと思うな。「GTA V」のマップはアメリカのロサンゼルスをモチーフにして作られてるんだけど、実際の道とか街並みがほぼ一緒らしいんだよ。そうなると考え方を変えれば、このソフトを買えばロサンゼルス旅行に行ったようなもんなんだよね。7000円でアメリカ行けると思えば安いもんだよね。

──ちなみに増子さんって、いつゲームやられてるんですか? かなり忙しいと思うんですが。

よくゲームやる時間がないとか言う人いるじゃない? 俺はそういう人に言いたい。時間は作るもんだから。リハとかレコーディングとかいろいろあるわけじゃない? でもそこは削れない。じゃあ何を削るかって言ったら、睡眠時間でしょ(笑)。もうさ、また眠れない日々が続くよ。

怒髪天 ニューアルバム「歌乃誉“白”」 / 2014年11月26日発売 / 2160円 / IMPERIAL RECORDS / TECI-1429
「歌乃誉“白”」
収録曲
  1. ひともしごろ
  2. バガディ・ガッタ!
  3. どっこいサバイバー
  4. 人生○×絵かきうた
  5. 明日の唄
  6. ジャガイモ機関車
増子直純(ますこなおずみ)

ロックバンド・怒髪天のボーカリスト。2014年1月には怒髪天結成30周年を記念して初の東京・日本武道館公演を開催した。4月から初の47都道府県ツアー「怒髪天、おかげさまで30周年。47都道府県勝手にお礼参りツアー “いや、なんも、おかえしだって。”」を敢行した。2015年に入ってからは新春ツアー「怒髪天 2015年新春TOUR“紅白利き歌合戦”」を1月30日に北海道・札幌市民ホール、2月11日に愛知・Zepp Nagoya、2月14日に大阪・なんばHatch、2月21日に東京・Zepp Tokyoで開催する。大のゲーム好きとしても知られている。