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「MUSIC LIFE」特集

「MUSIC LIFE」参加ドラマーインタビュー

永井利光、松下敦、村石雅行、高橋まこと、中村達也という5人の個性的なドラマーが参加していることでも話題のGLAYの最新アルバム「MUSIC LIFE」。今回は5人それぞれのインタビューを通して、GLAYの魅力、そして「MUSIC LIFE」の聴きどころを紹介していく。

取材・文 / 大前多恵

永井利光 インタビュー

参加曲

「BLEEZE(Album Ver.)」「疾走れ!ミライ」「祭りのあと」「妄想コレクター」「MUSIC LIFE」

永井利光

──「MUSIC LIFE」はさまざまなドラマーが参加したアルバムになりましたが、永井さんはどんな作品だと捉えていらっしゃいますか?

「百花繚乱」や「Only Yesterday」は、今までのGLAYにないテイストを感じ、面白いなと思っています。リズムとしてはハネた感じが新しい領域だな、と。今まで僕がずっとレコーディングしてきた中では、「HOWEVER」がちょっとハネてるけどやっぱり違うし、ここまで思いきりハネてるリズムはなかったな、と思って。「Only Yesterday」のドラムは村石(雅行)くん、「百花繚乱」は松下敦くんですけど、すごくマッチしてて「すごいな!」と思って聴いていました。今までのGLAYのアルバムと違って、僕以外のいろんな個性的なドラマーが参加しているので、そこが一番聴き応えのあるところだと思います。

──永井さんが担当された楽曲について、詳しくお聞かせいただけますか?

まず「疾走れ!ミライ」はTERUくんが作ってきたデモの段階で、勢いがあって、テンポがけっこう速いので、スピード感を大事にしようと思いました。それは僕がこれまでずっとGLAYでやってきて一番求められていたものだったし、昔から“ビートを出す”というのは慣れたところと言いますか、十八番ですから。メロディはすごく明るいしさわやかなので、あまりダークな感じにならないように心がけましたね。「BLEEZE」もそうですけど、8ビートの広がりを大切にする、というか。ハードなロックではあるんですけど、ヘビーでダークな感じにはならないように、音色としてもテイストを明るく持っていくように気を付けました。この2曲については、それが一番大事なことでしたね。

──「祭りのあと」はいかがでしたか?

これも気持ちハネてるんですけど、温かく包み込むような感じのリズムと音色で、GLAYのお手のモノ、と言いますか(笑)。本当に“祭りのあと”のような、一息つけるような温かい雰囲気をグルーヴで出せるように、と考えていました。あまり難しいこともしないし、ハードなこともしないし。GLAYはこういう8ビートのミディアムバラードが得意ですよね。「BELOVED」も「a Boy~ずっと忘れない~」もそうだし。でも、その雰囲気を残しながらも「この曲は新しい感じで」と思っていました。「妄想コレクター」はもう、HISASHIくんの世界ですよね。「coyote, colored darkness」を彷彿とさせるような。これまでたくさんメンバーの曲をプレイしてきましたが、それぞれのキャラがあるので、デモテープを聴けば「あ、こういうテイストね」みたいなのはわかるんですよね。話さなくてもわかる、あうんの呼吸というのがあるんですよ。

──プロデューサーの亀田誠治さんとご一緒されたのは初めてですか?

はい、今回が初めてでした。現場では笑いが絶えなかったですね。真剣にレコーディングしているんだけど、場のムードが楽しいのでどんどん盛り上がって、いい方向に流れていく。そのリードの仕方がうまいんですね。プロデューサーとして素晴らしいと思います。あとは、GLAYにない音楽性をたくさん持っていらっしゃるので、いろいろと引き出してもらったんじゃないでしょうか? 「DARK RIVER」の時点からそういうテイストは感じられたので、「ああ、亀田さんが入ってけっこう変わってくる。新しい世界になっていくんだな」とは僕も思っていました。それがこうしてアルバムになって、すごくよかったと思いますね。

──ドラミングに関して何かリクエストはありましたか?

そんなにはなかったですよ。亀田さんが作ってこられたデモテープを土台に、僕は一応それに沿ってやっていました。メンバーと亀田さんと僕で、リズムを変えたこともありましたけども。例えば「BLEEZE」のAメロはTERUくんのアイデアで、歌に合わせてリズムパターンを変えています。そうやって、「これが合う」「これは合わない」といろいろ試しながらプリプロもやったので、そのときにはディスカッションをしましたけどね。

──TAKUROさんはギターリフをいろいろと弾いて、永井さんとセッションしながらこのアルバムに向けた曲作りをされていたそうですね?

そうなんですよ、一緒にセッションをしてデモを録ってました。プリプロのプリプロみたいな、「楽曲としてどうか?」という段階で録音した感じですね。だから、「今回まこっちゃん(高橋まこと)、どの曲叩くの?」とTAKUROに聞いたら、「あの『BOØWYっぽく叩いてください』って永井さんに言ったヤツ(「浮気なKISS ME GIRL」)だよ!」みたいなやり取りはありましたね(笑)。昔はツアー中もライブ前のリハが終わった後の会場で、お客さんを入れる前の準備をしているときに2人でちょこっとセッションして、「いい感じだったら録音してください」とPAの人にお願いしていました。一緒にいることがツアー中は多かったので、この20年間、そういうのはけっこうやりましたよ。

──お2人の共同作業から曲の種が生まれていったんですね。ではアルバムのタイトル曲の「MUSIC LIFE」のドラムは、どんなところを意識されましたか?

この曲はけっこうテンポは速いんですけど、ゆったり聞こえるんですよね。それもGLAY特有というか、僕がやっている楽曲に多いんですけども。その逆で、けっこうスピード感はあるんだけど、実際に叩いてみるとすごく“うしろ”で叩かなきゃいけないものもあります。GLAYのコピーをしているドラムの若い子に聞くと、そういう「イメージと差があることが多い」って言いますよね。でもそれは音楽のグルーヴを作るという意味では、いいことなんです。実際に時間軸を変えることはできないけど、まるで時間軸が変わってしまうような雰囲気を与えている、ということですから。そのグルーヴを聴いているときだけ別の次元に行っている、というかね。僕はミュージシャンとしてそういう世界を作り上げたいという思いがもともとあるし、この曲は特にそうなっていますね。

──そのグルーヴ感は曲の印象を決定付けるキーとなる要素ですよね。

確かにそれはありますね。今までの自分たちのことを思い出しながら書いたような、まさしく「MUSIC LIFE」という言葉通りの面白い詞の内容じゃないですか。昔に回帰して胸がキュンとするような。でも、テンポとしてはすごく速いんですよね。そのスピード感の中に、ハードでイケイケじゃなくて、懐かしむようなキュンとするようなものが入っているからこそゆったり聞こえる、というか。ドラムを入れる段階では詞はまだできていなかったので、完成した曲を聴いて「マッチしたなぁ」と思っていますね。

──20周年にリリースされる作品にふさわしい曲だと感じます。先日「GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary」という大イベントも成功裏に終えましたが、20年近くメンバーと共に歩んで来られた永井さんの目には、今のGLAYはどう映っていますか?

僕が「GLAY EXPO」で感じたのは、「音楽を超えているな」ということですね。音楽をツールとして人と人とのコミュニケーションを図るのがライブだと思うんですが、その大本には、GLAYとお客さんという人間と人間がいるわけで。もはや音楽を超えたところでGLAYとお客さんとがアクセスできていて、つながっている、と感じたんですよ。もちろん、音楽ありきでミュージシャンでありバンドなんだから、歌い、演奏するのは当然なんですけど、それとは違う世界が見えている気がします。演奏していても、今回のアルバムを聴いていても、それをすごく感じて。もう、「そこにいるだけでいい」みたいな(笑)。GLAYがそういう存在になったような気がするんですよね。

──その域に到達したと?

そうそう。もちろん、音楽があるからこそなんですけど、そういうことを感じさせられるぐらいまで、人間としてもミュージシャンとしても、素晴らしいバンドになったな、と僕は思いますね。

──11月29日からは、最新アルバムを携えたアリーナツアーが始まります。音源とライブとで、どのような変化を付けようと思っていますか?

そこはあまり考えずに、ほかのドラマーの皆さんが叩いた素晴らしいフレーズをまずはできるだけコピーしようと思います。コピーしても結局僕のグルーヴになると思うので、無理やり寄せすぎず、カッコいいフレーズをちゃんと守りながら好きに叩いていく、という感じですね。今までも、氷室(京介)さんがLAでレコーディングした楽曲の場合、僕がまったく叩いてないアルバムは全部カバーしてライブをやっているので、それと変わらない感じですね。

──加えて、永井さん流のアレンジやアドリブが飛び出す可能性もありますか?

それはツアーに出てからのことでしょうね。今はまだリハーサルで忠実にコピーしている段階ですが、それはそれで楽しみです。新曲をキーボードのSEIさん(永井誠一郎)を入れた6人でやったときどんなグルーヴになるか?というのは、ライブの楽しみですし。そこはまた別物だと思って聴いてもらえればな、と思います。

──永井さんが今後のGLAYに対して期待するのはどんなことですか?

人にいろんなことを与えられる存在になってきて──もちろんもともとそうなんですけども、それが神々しい段階まで来ていると思うんですね。だから、もっともっと自由にGLAY自身を思いっきり表現して、みんなで楽しんでほしいなと思います。僕もGLAYに対して自分のドラムをどれだけ表現できるか、これからもガンガンやっていこうと思うし。だから、安心して自分をさらけ出していいんじゃないかな?と思いますね。音楽を表現するんじゃなくて、自分を表現して音楽を演奏する、みたいな。もしかしたら僕は、今までもずっとそちら側にGLAYを引っ張ろうとしていたのかもしれないですね。まだミュージシャンとしての実績がない若い頃は、メンバーのみんなも不安だったと思うんだけど、「大丈夫だよ、これでいい」と僕が言うこともあったし、演奏面でもどんどん触発して、セッションをして遊んだりもしたし。僕の役割はたぶん今後も変わらないと思うんですけど、僕が引っ張ったら「もっとこっちもあるよ?」とメンバーからも言われそうな気がしますね。そうしたらもっと広がるし、面白いですよね。今回ドラマーがたくさん参加しているのも、自由な方向に飛び出している表れですし、GLAYがどんどんオープンな感じになってきている、と感じます。僕が「そうなってほしい」という方向に行っているんじゃないかな?と思いますね。

──永井さんが導いて来られた、という面もあるんですよね。

付き合いが長いから、見ていて変化に気付くというのはありますよね。そういうときは、僕もやっぱりうれしいし。お互いに成長して、陰な方向に入って行かず広がっていった、その集大成がこのアルバムだと思いますね。10年前のアルバムは、それまでの10年間で築き上げた、楽曲であり、演奏やアレンジもまさしく“GLAY”そのものでした。だから「GLAYです!」という代名詞のような感じがしたんですけど、「MUSIC LIFE」は先を予感させるGLAYが詰まっている、と思いますね。

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「MUSIC LIFE」参加ドラマーインタビュー
ニューアルバム「MUSIC LIFE」 / 2014年11月5日発売
「MUSIC LIFE」
2CD豪華盤 BALLADE BEST☆MELODIES / 3996円 / ポニーキャニオン / PCCN-00017
2CD豪華盤(G-DIRECT限定)BALLADE BEST☆MEMORIES / 3996円 / loversoul music & associates / LSCD-0018
1CD盤 / 2700円 / ポニーキャニオン / PCCN-00018
CD収録曲
  1. BLEEZE(Album Ver.)
    [作詞・作曲:TERU / ドラム:永井利光]
  2. 百花繚乱
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:松下敦]
  3. Only Yesterday
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:村石雅行]
  4. 疾走れ!ミライ
    [作詞・作曲:TERU / ドラム:永井利光]
  5. 祭りのあと
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:永井利光]
  6. 浮気なKISS ME GIRL
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:高橋まこと]
  7. 妄想コレクター
    [作詞・作曲:HISASHI / ドラム:永井利光]
  8. Hospital pm9
    [作詞・作曲:TAKURO]
  9. DARK RIVER
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:村石雅行]
  10. TILL KINGDOM COME
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:中村達也]
  11. MUSIC LIFE
    [作詞:TAKURO / 作曲:JIRO / ドラム:永井利光]
GLAY(グレイ)

函館出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催。この人数は単独の有料公演としては、日本のみならず全世界での史上最多動員記録となっている。その後も数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」を設立。メジャーデビュー20周年を迎えた2014年9月20日には、宮城で大型ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary」を敢行した。同年11月5日、1年10カ月ぶりとなるオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリース。

永井利光(ナガイトシミツ)

1964年生まれ。6歳からドラムを叩き始め、高校卒業後に上京。1983年に武田鉄矢のバックドラマーとしてプロデビューする。これまで氷室京介、西城秀樹など数多くのアーティストのサポートを担当し、1995年より現在までGLAYのサポートを務めている。


2014年11月26日更新