ナタリー PowerPush - GLAY

TERU&JIROが語る豪雨の函館ライブ

豪雨の2日目で吹っ切れた瞬間

──ちなみにお2人が印象に残ってる場面ってどこですか?

TERU 俺はやっぱり「口唇」の出だしの失敗が……(笑)。

JIRO ドラムのTOSHIのカウントとボーカルからスタートする曲なんで、TOSHIとTERUだけがクリックを聴いてるんです。だからほかのメンバーは知るよしもない。カウントが鳴れば当たり前に入ったんですけど、入らないから(笑)。お客さんも笑っちゃってたし。

──それはいい意味での印象的な場面なんでしょうか……。

TERU もちろんいい意味です(笑)。あとは「Eternally」の大サビで花火が上がったところじゃないですかね。あれは自分たちでも感動したし、ファンの子たちも喜んでくれたんじゃないかなって。「Eternally」は深い愛情の歌だし、函館ライブのテーマソングでもあって。GLAYとファンの子たちやスタッフの関係性を表現しているような瞬間だったと思いますね。

JIRO 僕はやっぱり印象的だったのは、2日目になっちゃうんですよね。1日目もよかったんですけど、2日目の吹っ切れ方がここ数年で一番すごいライブだった。

──自分の中のリミットを超える瞬間があったと。

TAKURO(G)

JIRO そうですね。2日目はWOWOWの生中継も入っていて、オープニングからきっちり演奏しなきゃなっていう意識がいつも以上に強かったんですよ。でもどんどん雨が強くなって。「Winter,again」を演奏してるときにTERU、TAKURO、HISASHIがずぶ濡れになって前にいるわけですよ。そのあとが「サバイバル」だったんですけど、「これは雨に濡れなきゃいけないよなあ」って3人の背中とファンの顔を見ながら思って。そこで花道に飛び出していったんですよね。さらに「ROCK'N'ROLL SWINDLE」で僕が弾くキメのフレーズがあったんですけど、雨に打たれてたらハンパなく間違えて(笑)。そこで「ビシッと決めてやんないとな」って感じだったんですけど「もう知らない!」ってなって、そのままの勢いで演奏を続行したらどんどん楽しくなっていった。映像で確認してもいい表情してるんですよね。

──なるほど。

JIRO それまでは「テレビに映ってる。全国放送だ」って意識した顔だった。もちろん笑顔なんですけど、途中から「楽しんでます!」っていう表情に変わってるんですよ。「どんなことがあっても、目の前のこいつらは楽しませて帰るぞ!」っていう気持ちになったんですよね。

TERUの「いいね!」がないとダメ

──函館ライブのセットリストはアルバムメドレーが中心になっていて、GLAYの歴史を総括するような内容だったと思うんです。ナタリーにレポートを掲載したところ(参照:「新しい歴史を作ろう」GLAY名曲連発の函館ライブ初日 / GLAY、ファンと逆境乗り越えた豪雨の凱旋ライブ2日目)、セットリストに対する反響が大きくて。セットリストはどなたが中心になって考えたんですか?

JIRO 僕ですね。いつも僕がセットリストとか構成を考えて、みんなにプレゼンするんですよ。とにかく函館ライブは、何がなんでもソールドアウトさせたい。成功の基準の1つがソールドアウトだったんで、それを考えたときに「TAKUROさん、アルバムメドレーっていうのをやってみたいんだけど、どう思う?」って聞いたら、「いいねえ」みたいな返事だったんでTERUとHISASHIにもメールして。それが2012年の春先くらいだったかな。2人とも速攻で「いいね!」って返ってきて。とにかくTERUに「いいね!」って言わせないとダメなんですよ。

──その理由は?

JIRO GLAYって僕らが演奏でTERUにパワーを送って、自信を持って歌ってもらわないと始まらないんです。メドレーとなると構成も複雑だし、歌詞もバラバラなものをつなぎ合せなきゃいけないんで「これはTERUさん、けっこう大変かもしれないな」って思ったんだけど快諾してもらえたんで。そこから構想を考えて……。

──メドレーに組み込む曲の基準はありました?

JIRO あんまりGLAYのことを知らない人たちも来るんじゃないかなっていうことで、メジャーな曲は押さえたつもりです。一方で、函館までわざわざ来てくれた人たちが「よっしゃー!」って思えるレアな曲も入れていかなきゃいけなかったんで、かなり苦労しましたね。最初はメドレーに7曲くらいぶち込んでたんですけど、ワンフレーズずつになっちゃって節操ない感じだったんで、最終的に絞り込んだり。

決め手は動けるか動けないか

──メドレーを構成する中で発見した“GLAY節”みたいなものってありますか?

TERU ミディアムな曲が多いんだなっていうのは感じましたね。だから悩まされた部分もあって。ライブだし激しい曲を求められるだろうと、各アルバムの中でもそういう曲を中心に組んでいこうと思ってたんですけど意外となくて。ミディアムな曲だと、ライブでは動けないっていうのがあるんです。これじゃちょっと花道には行けないから違う曲を入れよう、みたいな意見は出ましたね。

HISASHI(G)

JIRO スタジアムとかアリーナでやってても、GLAYのライブのコンセプトとして「自分たちがみんなが肉眼で観れる距離に行く」っていうのがあるんです。メドレーを作ってるときに、もう少しミディアムな曲が多い構成にしようと思ってたんですけど、そうなると立ち位置から動けないっていうのがあって。セットリストを考えるときは、動けるか動けないかを意識するようにしてます。

──今回のライブは序盤から花道で演奏してましたよね。

TERU 出し惜しみしたくないんですよ。自分たちも好きなミュージシャンのライブに行ったときに、近くに来てくれたりするとうれしかったりするんで。ジャニーズのグループとかEXILEがそうなんですよね。ちょうどEXILEの東京ドーム公演を函館ライブの前にTAKUROと観てて。野外ライブであっても近くに行くっていうのが、メンバーのキーワードとしてあったと思いますね。

JIRO まあね、どんな特効よりも強いんで。

──JIROさんがメドレーを演奏する中で改めて気付いた“GLAY節”ってありますか?

JIRO やっぱり初期の曲は若さあふれるというか、無駄に速かったりとかするなって。あと「DARK RIVER」や「Eternally」は、すげえ貫禄あるなって(笑)。

──音楽性の変化にも気付いたと。

JIRO そうですね。基本的に「歌モノ」と「バンドサウンド」っていうのは変わってない部分ではあるんですけど、貫禄みたいのが出てきたなと。その一方で、高校時代に作ったパンキッシュな「CRAZY DANCE」みたいなのもあるし。一時期はその振り幅の広さが器用すぎるんじゃないかと思って、どうなのかなと思ってたんですけど。

──器用なのはイヤですか?

JIRO そうですね。でも、それ考えるのもナンセンスっていうか。TAKUROくんの頭の中は、もっと広いことになってるっていうか。それにどんなに曲の振り幅が広くても、TERUの声が乗るとロックになるし。HISASHIのギターが入ると、ちょっと変わったポップになるし(笑)。今はGLAYのスタイルがちゃんと確立された気がします。

ライブはファンとのガチンコ勝負

──この函館ライブの映像を観て、改めてGLAYはライブを本当に大切にしているんだなって感じました。GLAYにとってライブとは、活動の中でどんな位置付けのものなんでしょうか。

TERU ファンの子たちと本気でぶつかれる場所ですね。マンネリな姿を見せたら離れていってしまうだろうし、自分たちが本気じゃないライブを続けていたら、気持ちも離れてしまう。そういう危険性も感じながらステージに立って、毎回勝負してるんですよね。ガチンコでファンの子たちにぶつかっていって「今の俺たちはこれなんだ!」っていうのを見せられる場所だなって。

──TERUさんの中での理想のライブってありますか?

TERU 自分が最高に気持ちいい声で歌える、その瞬間が俺にとっての幸せだっていうのは体が覚えてるんですよね。そうするためにどういう努力をするべきか考えるようになって。毎回100点とはいかないまでも、99点、98点を取れるようなライブを続けていくしかない。あとは1人でも多く笑顔にしていきたいなと思うようになりました。

──昔は違ったんですか?

TERU 違いましたね。ちょっと天狗になってたときもあったみたいで(笑)。デビュー当時とか、平気でライブを途中で放棄してましたから。あの頃の自分に言いたいですね、調子に乗るなと(笑)。

──自分のカッコいいところを見せたいという思いが先行してた?

TERU そう。自分が考える「ロックバンドのボーカリストはこうあるべきだ」っていうのを追いかけてた。カリスマ的な存在であるべき、みたいな。でも「GLAY EXPO '99 SURVIVAL」のあとくらいかな、ファンの子たちに支えられてるというのを実感して、もっともっと笑顔を引き出すライブをしたい、みんなが楽しめる空間を作りたいっていう方向に変わりましたね。

──JIROさんにとってライブとは?

JIRO 全国各地に僕らのことを熱心に応援してくれる人たちがいるから、そこに会いに行く感じですね。たまには僕らに付き合って大都市に来てください、みたいな感じ(笑)。

──今年は「僕らを観に函館に来てください」だったと(笑)。

JIRO そうそう。その恩返しをしに、今度は僕らが会いに行くよ、みたいな。その繰り返しですね。その関係性がいいから、ライブやりたくなるんじゃないですかね。

──いい曲を作ったら届けに行きたくなるというのはあります?

JIRO いや、僕の場合は逆かもしれないな。まずはライブをしたくて。でも曲がないと飽きるよねっていう。だから僕の場合は「こんな感じの曲がライブに入ってきたらいいな」って考えながら曲を作ってます。

──なるほど。最後に函館ライブは今後も続けていかれるそうですが、第1回を踏まえて次回の構想など……。

TERU 4年後にやる予定というくらいですね。みんなに約束をしちゃったんで(笑)。その前に「GLAY EXPO」があるんですけど。あと今後は函館だけじゃなくて、本州や九州、四国でそれぞれの場所で違うライブをやるっていうのもいいですよね。そういう夢をみんなで持っていたら、いい人生を歩めるなって。

ニューシングル「DIAMOND SKIN / 虹のポケット / CRAZY DANCE」/ 2013年11月27日発売 / loversoul music & associates
CD+DVD 1800円 / PCCN-00011
CD+DVD 1800円 / PCCN-00011
CD 1200円 / PCCN-00012
GLAY CHRISTMAS SHOW 2013 ACOUSTIC MILLION DOLLAR NIGHT
GLAY(ぐれい)

函館出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年、シングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催。この人数は単独の有料公演としては、日本のみならず全世界での史上最多動員記録である。その後も数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2008年8月には初のアメリカライブをサンフランシスコとロサンゼルスで行った。2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」を設立し、2012年7月の長居スタジアムライブにてデビュー20周年に向けた7大サプライズを発表。この一環として、12月にシングル「JUSTICE [from] GUILTY」「運命論」を、2013年1月にオリジナルアルバム「JUSTICE」「GUILTY」を2枚同時リリースした。2月からは約25万人を動員する全国アリーナツアーがスタート。その後、5月からは香港、台北にてアジア公演を、7月には函館・緑の島野外特設ステージにて野外ライブ「GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1」を開催した。11月には函館ライブの模様が収められたDVD / Blu-rayと、通算49枚目となるトリプルAサイドシングル「DIAMOND SKIN / 虹のポケット / CRAZY DANCE」が同時発売。12月から10年ぶりのアコースティックライブを、GLAY初となるツアーという形で行うことが決定している。