音楽ナタリー Power Push - Galileo Galilei

“終了”という名の始まりを前に

1970年代ロックに見る「音楽しかない」というパワー

──親交の深いPOP ETCもThe Morning Bendersから改名して再スタートを切ったバンドですが、彼らにも相談をしたんですか?

雄貴 (POP ETCのクリス・チュウがプロデューサーを務めた)「ALARMS」を作っている頃からずっと相談していて、クリスにはそのたびに止められてました。ことあるごとに「寂しい。俺はGalileo Galileiが好きだ」「本当にやめるの?」って言ってくれて……。彼らもバンド名を変更してすごく苦労していたから心配だったんじゃないかな。でも今のところ、話せばみんなわかってくれるし、僕らとしても「何で?」と言われても困ってしまうというか。どちらかというと、今はGalileo Galileiという名前で続けていることのほうが寂しくもあるんですよ。だからこそ今回の「Sea and The Darkness」は今までとは雰囲気の違う、ダークなアルバムになったんじゃないかな、と思います。

──ではそのアルバムの話を聞かせてください。作り始めたのはいつ頃のことだったんですか?

雄貴 最終的にアルバムには入ってない曲もあるんですけど、「See More Glass」ができあがってすぐに、芸森スタジオ(北海道札幌市のスタジオ)に集まってセッションで曲を作ったり、自分たちの自宅スタジオ・わんわんスタジオで作曲する機会があって。そのあたりからこれまでとは別のテイストのアルバムにしよう、というアイデアがあったんです。「See More Glass」は「もう一度J-ROCKっぽいものに向き合ってみよう」という作品だったけど、それとは別。邦楽 / 洋楽とかではない……実はまだ自分たちでもよくわかっていないんですけど、当時はライブをすごくやるようになってきた時期だったこともあって、「音楽を作る」「フレーズを思いつく」ということに対して、それまでとは別のアプローチがあることがわかってきたというか。あと「ALARMS」と「See More Glass」でクリスにプロデュースしてもらったことで、ソングライティングや制作の進め方がより古典的なものになってきて。

──それはシングル「クライマー」のリリースタイミングでも話してくれていましたね(参照:Galileo Galilei「クライマー」インタビュー)。

雄貴 1970年代の音楽に一番「音楽」のパワーを感じたんです。男らしさがあって、メッセージも本当に生々しい感情から出てきていて。SNSで垂れ流されるような種類のものとは違って「俺たちには音楽しかない」という感じがあるというか。自分たちがもうそういうことを考えていないから言えるんですけど、例えば「インディーポップ」をやるにしても、「インディーだから歌も演奏もちょっと下手でいいじゃん」っていうのは、俺はガチじゃないと思うんです。もっとまじめにやりたいし、やるなら人生を賭けて取り組みたいし、誰も行けていないところに行きたい。これってジャンルの話ではなくて、エレクトロをやっている人でも、EDMをやっている人でも、そのパワーを持っている人と持っていない人がいると思うんですよ。自分にとっては、そういうパワーが特に詰まっていると感じられたのが1970年代の音楽だったんです。あと、これは最近変わってきたことなんですけど、もう1つは自分たちの音楽で自分たちの人間性を表現して、あわよくばそれを聴いている人たちに肯定してほしい、と思うようになってきていて。その人間性っていうのが、どんなに面倒くさいものであっても、暗いものであっても、それを素直に表現できて、肯定してもらえるかもしれないところが音楽のすごいところだと思ってるんです。

「これが俺です」と初めて言い切れるアルバム

──そうして、今回ダークな要素がアルバムに入ってきたということですか?

雄貴 最初はまったく方向性が定まっていない状態で歌詞を書いていたんですけど、半分ぐらいできあがってから、自然とダークなものになっていたことに気付いたんです。今回のアルバムにちょっと重たい空気や孤独を感じてもらえるなら、それは俺らの人間性が出た結果なんです。もともと3人とも孤独なタイプだと思うし、なおかつ、音楽シーンにおいても友達が少なくて、孤独な気持ちがずっとあったし。

──じゃあむしろ、これまでずっとあったけれども表現しきれていなかった内面を表現した、という感じですか。

雄貴 そうですね。思えばこれまでの作品には、自分たちのことを表現しようと思って書いた曲はなかったんです。だから、これまでは褒められても悪いと言われても、傷付きはするけど、正直自分の胸には刺さってこなかった部分もあったというか。でも今回のアルバムは、ディスられたらけっこう怒るかもしれない(笑)。

佐孝仁司(B)

──(笑)。そういう雄貴さんの変化は、横で見ていたお2人も感じましたか?

佐孝 特に変化は感じなかったですね。もちろん、これが世に出てみんなが聴いたら「どうしたんだろう?」って思うだろうな、ということはわかるんですけど(笑)。

──実際、収録曲「ブルース」の「そうだ、このアルバムはクソだ / 嘘だよ」という歌詞を最初に聴いたときは本当に驚きました。

雄貴 そのフレーズはすごく自然に出てきたものだったんです。最初2人に投げたデモの段階ではその部分は入っていなかったんですけど、アレンジしているうちに曲の後半の演奏が盛り上がってきたから、その勢いに任せて歌ったら自然に出てきたものだったというか。今回はそうやって歌詞ができあがることが多かったんですよ。

ニューアルバム「Sea and The Darkness」 / 2016年1月27日発売 / SME Records
「Sea and The Darkness」
期間限定通常盤 [CD+DVD] 3600円 / SECL-1835~6
通常盤 [CD] 3200円 / SECL-1837
CD収録曲
  1. Sea and The Darkness
  2. カンフーボーイ / Kung Fu Boy
  3. ゴースト / Ghost
  4. ウェンズデイ / Wednesday
  5. ベッド / Love Song
  6. 鳥と鳥 / Bird Cage
  7. 燃える森と氷河 / Different Kinds
  8. 日曜 / Her Surprise
  9. 恋の寿命 / Limit of Love
  10. 嵐のあとで / Aftermath
  11. ユニーク / Unique
  12. ブルース / Blues
  13. 青い血 / Blue Blood
  14. Sea and The Darkness II(Totally Black)
<ボーナストラック>
  1. クライマー(re-master ver)
  2. ボニーとクライド(re-mix, re-master ver)
期間限定通常盤DVD収録内容
  1. 恋の寿命 -Music Video-
  2. 嵐のあとで -Neue Vox Session-
  3. クライマー -Music Video-
  4. カンフーボーイ with POP ETC
Galileo Galilei "Sea and The Darkness" Tour 2016
  • 2016年3月1日(火)北海道 苫小牧ELLCUBE
  • 2016年3月4日(金)岡山県 IMAGE
  • 2016年3月6日(日)広島県 CAVE-BE
  • 2016年3月8日(火)香川県 DIME
  • 2016年3月12日(土)熊本県 熊本B.9 V2
  • 2016年3月13日(日)福岡県 DRUM Be-1
  • 2016年3月15日(火)石川県 vanvan V4
  • 2016年3月18日(金)大阪府 Music Club JANUS
  • 2016年3月19日(土)京都府 磔磔
  • 2016年3月21日(月・祝)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2016年3月23日(水)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2016年3月25日(金)静岡県 Sunash
  • 2016年3月27日(日)東京都 LIQUIDROOM
  • 2016年3月28日(月)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2016年3月30日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2016年4月1日(金)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2016年4月3日(日)宮城県 darwin
  • 2016年4月6日(水)東京都 LIQUIDROOM(※追加公演)
  • 2016年4月10日(日)北海道 札幌PENNY LANE24

※アルバム「Sea and The Darkness」にLIQUIDROOM公演チケット先行予約用のフライヤー封入。

Galileo Galilei(ガリレオガリレイ)
Galileo Galilei

尾崎雄貴(Vo, G)、佐孝仁司(B)、尾崎和樹(Dr)を中心に2007年に北海道・稚内にて結成。2010年2月にミニアルバム「ハマナスの花」でメジャーデビューを果たす。その後「青い栞」「サークルゲーム」などでヒットを記録し、2013年10月にはPOP ETCのクリストファー・チュウをプロデューサーに迎えて制作されたアルバム「ALARMS」を発表。邦楽ファンのみならず洋楽ファンからも支持を集める。2014年2月には東京・渋谷公会堂での初ホールワンマンを行い成功を収めた。同年10月にはクリストファー・チュウプロデュースのミニアルバム「See More Glass」を発表。2015年には3月に「恋の寿命」、6月に「嵐のあとで」という2枚のシングルを立て続けに発売し、10~11月にはPOP ETCも参加したツアー「"broken tower tour" 2015」を実施し、12月には表題曲がアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」のエンディングテーマに採用されているシングル「クライマー」をリリースする。そして2016年1月に4thアルバム「Sea and The Darkness」を発表。春から実施される全国ツアーをもってGalileo Galilei名義での活動を“終了”することが発表された。