ナタリー PowerPush - 藤井隆 Like a Record round! round! round! in 富士急ハイランド

本気の洋楽イベントが富士急進出!藤井隆の音楽ルーツを探る

“標準録画”で保存されたティーンの記憶

藤井隆

──「Like a Record round! round! round!」のメンバーは同じ“洋楽”のくくりでもそれぞれ少しずつ棲み分けが違っていますよね。比較的広範囲なRGさん、アメリカンロック的な鬼奴さん、そして藤井さんはニューロマ系、1980年代ヨーロッパ系の少し陰のある音楽というか。

そうですね、はい。

──藤井さんがそのあたりの洋楽や80年代アイドルについて話すのを聴いていると、知識として積み重ねたものではなく、当時の記憶を色濃く残したまましゃべっている感じがするんですよ。

あー、当たってます。記憶が当時のままで止まってるというか、ティーン以降の情報が自分の中のハードディスクに存在していない感じ。いまだに小学校5年生の夏の記憶とか、あの番組であの人が言ってたコメントがよかったとか、あの人が来日したときはこうで、お客さんが着ていた服はこうだったとか……ティーンの頃でデータは止まってるし、さっきはハードディスクなんてしゃれたことを言いましたけど、ビデオですね(笑)。何回も頭の中で巻き戻すし。これ以上掘り返すとすり切れるぐらい、そこの記憶ばっかり使ってる感じです。

──わかります(笑)。でもビデオ的な残り方じゃなく、それこそデジタルなハードディスクのように鮮明に記憶が残っている方なんじゃないかと思うんですよ。

標準で録ってるんですよ(笑)。

──それ、もう世代的にわかんない人もいるかもですね(笑)。ちょっとそのあたりの原体験について教えていただけますか?

我が家は特に裕福な家庭ではないんですけど、本やレコード、あと食器と果物はわりと豊富にある家だったんですよ。レコードは自分が生まれる前のものからあったんですが、レコードプレイヤーの使い方を教えてもらって何度も聴いてたのは、伊東きよ子さんの「花と小父さん」(1967年発売)です。そのレコードをかけてた風景は今でも鮮明に覚えてます。子供の頃からちょっとマイナー調志向というか、アニメのテーマ曲でもエンディングのほうが好きみたいなところがあって。「花と小父さん」は物悲しい内容の歌なんですけど、その世界観がはっきりと好きでしたね。

──兄弟の影響はありますか?

ありますあります。兄が7つ上で、さらに親戚に9つ上のお兄ちゃんと10こ上のお姉ちゃんがいて。僕だけ歳が離れてるから、3人とは文化が全然違うんですよ。僕1人だけ遅れてるから「それはなんだ、あれはなんだ」って食い付いて。親戚のお姉ちゃんは本を教えてくれて、お兄ちゃんは大貫妙子さんとかEPOさんとか。それでうちの兄は兄で洋楽を教えてくれたし。で、自分で初めて買ったレコードは戸川純さんの「玉姫様」(1984年発売)ってアルバムでした。

──なぜその「玉姫様」に惹かれたんでしょうか。

「夜のヒットスタジオ」(フジテレビ系音楽番組)で歌う戸川さんを観てショックを受けて。同じ頃に戸川さんがドラマに出ていらして……「北関東逆境会」っていうセリフをすごく覚えてるんですけど、それで戸川さんのことは知ってたんです。そのドラマの人が羽根を背負いながらスモークにまみれて歌っている姿がすごくショックで、翌日すぐアルバムを買いました。

中学生時代の楽曲を収めた幻のレコード

──藤井さんのルーツには「80年代アイドル」もあると思うんですけど、アイドルはどのあたりがルーツなんですか?

藤井隆

アイドルで誰、というのは実はあんまりなくて、結局は松本隆さんなんです。松本隆さんが手がけられている曲を通じて、アイドルというものを見ていたというか。松田聖子さんはもちろん好きでしたけど、聖子さんご本人に対する興味は、むしろ1995年以降の活動に触れてからのほうが大きくて。アイドルとして誰かをずっと追っかけて、というのは実はあまりないんですよ。中学の頃はCMディレクターになりたくて、広告系の情報誌を読んでるとアイドルたちのCM撮影の裏側みたいな特集がありますよね。それを読みながら「石田ひかりさんはボックスコーポレーションかー」とか(笑)、そういうのはデータとして頭に残ってるんですよ。

──やっぱりデータの蓄積され具合が異常ですよね(笑)。ちなみに当時はCMディレクター志望だったということですが、それだけ小さい頃から音楽に興味があったのなら、自分も歌手になりたいみたいな気持ちは芽生えなかったですか?

全っ然なかったです。多感な時期はCMディレクターか、広告写真の物撮りカメラマンになりたくて。あ、でも中学3年生のとき、「夏休みは歌詞を書きましょう、冬休みには曲をつくりましょう、そして卒業式で歌いましょう」という1年がかりの宿題があって。夏の宿題でみんなが書いた歌詞からいくつかが選ばれて、今度はそれに曲を付けるんです。その宿題がめんどくさくて、兄の友達に丸投げしたんですね(笑)。その人がサンプリングマシーンを使ってステーシーQの曲と別の何かを混ぜたオケを作ってくれて。それがまたピコピコしたカッコいい曲だったんですよ。それに僕が適当な歌を乗せて提出したら、それが見事受かってもうて(笑)。

──あははははは(笑)。

「みんな素晴らしいけど、藤井くんはすごい曲を作ってくれた」って先生にベタ褒めされて。作ってないのに(笑)。自分で作ってないって正直に言ったし、選考会では結局選ばれなかったんですけど、その先生はすっごく推してくださってるから「卒業式の前日イベントみたいなので歌いなさい」って。頼むから勘弁してくださいって言ったんですけど、仲良かった友達2人は前のめりで興奮してるし(笑)。じゃあ仮面を付けてもいいですかって言って、顔を半分隠した仮面で「とにかくイヤです」って気持ちを表現したくて(笑)。結局やったんですけど、先生は熱がこもりすぎて、その歌をレコードにしてくださったんですよ。レコードには選ばれた10曲ぐらいが入ってるんですけど、僕らのがボーナストラック扱いで(笑)。

──つまり形になって残ってるってことですよね。

去年お芝居で大阪公演をやったときに、当時の担任の先生がわざわざCDに焼いて持ってきてくださったんですよ。それは自分の中で封印こそしてないものの、完全に忘れてたことだったから、改めて見て腰が砕けました。……当時そんなに引いてたくせに、やっぱりユーロビートやし、聴いてみたら実はよくて(笑)。そうやって誰かが引っぱってくださるという環境には、昔からホント恵まれてましたね。

──藤井さんは芸人としても「俺が俺が」みたいなタイプじゃないし、何かこう用意された環境の中で最大限に輝くような印象があるんですけど、今の話を聞くと昔からそうだったのかなと。

渡りに船とか棚からぼた餅とかおんぶにだっことか、そういうテーマで生きてます。でも来る者拒まずと言えるほど腹はくくれてないから、イヤなことにはノーって言いますし。ただ、僕のことを拾ってくださる方……出会いには本当に恵まれてると思います。そこに運を使いすぎてるんじゃないかって思います。

「……SEIKOだ!」

藤井隆

──藤井さんを“アーティスト”としてナタリーで取り上げたのは、ナタリー1年目の2007年6月で、松田聖子さんとのコラボ曲についてでした。この記事ですね(参照:ナタリー - [松田聖子] 藤井隆と夏ならではのユニット結成)。

あー、2007年の女子バレー世界大会のテーマソングですよね。懐かしいなあ。

──個人的に“アーティスト藤井隆”の活動を待ち望んでいたので、今回のシングルは6年越しのうれしいニュースでした(参照:藤井隆6年ぶりシングルPVで名作サンリオ映画フィーチャー)。「She is my new town / I just want to hold you」はまさに「Like a Record round! round! round!」の流れを感じさせる、モロに洋楽的なサウンドになりましたね。しかもこのサウンドを作り上げたのが聖子さんという。

はい、そうなんです。作詞・作曲だけでなく、サウンドプロデュースやコーラスまですべて聖子さんです。イベントを通して改めて自分は洋楽が好きで、歌うことが好きなんだなと再確認できたんです。それで、僕に洋楽の新曲を作ってくださる可能性がある方、と考えたときに、「……SEIKOだ!」と思ったんですね。これは松田聖子さんじゃなくて、エスイーアイケーオーの“SEIKO”なんです。聖子さんの海外での活動、1990年代に出されているゴリゴリの洋楽指向の作品が、僕は大好きで。もちろん80年代のアイドルとしての作品も好きですよ。でも90年代の“SEIKO”の音楽が、20代の自分にはいつもフィットしてたんです。それで、どうしても聖子さんに曲をお願いしたいんです……というのをマネージャー以外の誰にも、レコード会社の人にも話す前に聖子さんにお話したんですよ。CDを出す予定も決まっていないのですが、いいですか?とお願いしたら、快く引き受けてくださって。

──聖子さんと藤井さんという、華やかな芸能界で活躍されている2人が組んで作ったサウンドとは思えないですよね。抑揚を極限まで抑えた、ある意味キャッチーさをまったく度外視したような曲で(笑)。お茶の間で流れて老若男女がワーッと楽しめる曲ではないですよね。でも今はこれがやりたかったと。

デモをもらったときはうれしかったですよ。聖子さんに会って「僕はこういう音楽が好きなんです」ってお話させていただいて、実際に40曲ほど好きな曲をリストアップしたものをお渡ししたんですけど、デモを聴いてみたら僕が望んでいることを完璧に拾い上げてくださってることがすぐにわかって。本当にお忙しい方なのに、リストアップした曲を全部聴いてくださって……この曲のこの部分とこの部分、みたいなことじゃなく、全体のお色味を合わせるというか、温度や湿度などのエッセンスを40曲から抽出してくださったような。しかも1曲だけのお願いだったのに「この2曲でどうぞお選びください」と言って2曲くださったんです。それが今回の2曲で。

──藤井さんが6年ぶりの音楽活動で、ここまでガチなものをぶつけてきて、しかもそれを作ったのが聖子さんという、身震いするような状況ですよ。

いやあ、こんなに気分のいいインタビューはないです(笑)。もっとお話しましょう。

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Like a Record round! round! round! in 富士急ハイランド

開催日時:2013年8月28日(水)16:00~(予定)

場所:山梨県 富士急ハイランド園内 マッドマウス前特設ステージ

料金:無料
※入園には別途富士急ハイランド入園料が必要

出演:藤井隆 / レイザーラモンRG / 椿鬼奴

※イベント当日は午後から藤井隆、レイザーラモンRG、椿鬼奴が園内にサプライズで出没予定。

※本イベントは、雨天決行 (荒天の場合は中止) です。
雨天の場合でもイベントは実施致しますが、スケジュールが大幅に変更となる場合もございますのであらかじめご了承ください。イベントの中断・中止・延期に伴う、富士急ハイランド入園料の払い戻しや会場までの旅費等(キャンセル料含)の補償は一切致しませんので、ご了承ください。

Like a Record round! round! round! in 富士急ハイランド プレミアムバスツアー開催

富士急ハイランド営業概要

営業時間

8月10日~8月15日:7:00~22:00
8月16日~8月31日:8:30~21:00

※9月以降、時期により開園・閉園時間が異なるので、オフィシャルサイトで要確認。

休園日

8、9月は無休

※10月以降についてはオフィシャルサイトで要確認。

料金

入園料:大人・中高生 1300円 / 子供 700円
フリーパス:大人 5000円 / 中高生 4500円 / 子供 3700円

交通

▼車
・新宿から中央自動車道で約80分、河口湖ICに隣接
・東京から東名高速道路・御殿場IC、東富士五湖道路経由で約90分

▼バス
・新宿から中央高速バスで約100分、富士急ハイランド下車
・東京駅から東名高速バスで約150分、富士急ハイランド下車
(バスは要予約)

▼電車
・JR中央本線大月駅で富士急行線に乗り換え富士急ハイランド駅下車、大月駅から約50分

藤井隆(ふじいたかし)
藤井隆

1972年3月10日生まれ、大阪府出身。1992年に吉本新喜劇オーディションを経て、お笑い芸人として吉本興業入り。2000年にシングル「ナンダカンダ」で歌手デビューし、同年「NHK紅白歌合戦」に初出場する。数々のシングルのほか、2002年発売のアルバム「ロミオ道行」、2004年発売のアルバム「オール バイ マイセルフ」などで高い評価を得ながらも、2007年8月発売のシングル「真夏の夜の夢」以降はしばらくアーティストとしての活動を休止。2013年6月にニューシングル「She is my new town / I just want to hold you」で6年ぶりにアーティスト活動を再開した。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。