ナタリー PowerPush - FOLKS

北海道を席巻中!恵庭市在住、新世代バンド

才能がなくても音楽は鳴らせる

FOLKSの地元である北海道恵庭市恵み野の風景。

──楽曲のさまざまな要素の中でこれを一番聴いてほしい、というポイントってなんですか。

郁人 いろんな音楽性とかいろんなジャンルが組み合わさってるところですね。自分たちもTwitterとかでガンガン好きな音楽も言っちゃおうと思ってて。僕らの音楽を聴いてバックボーンを感じて、いろんな音楽につながっていってくれれば、と思ってます。

──自分たちをハブにして、聴く人にいろんな音楽を聴いてほしいと。

郁人 そうです。自分たちが好きなバンドって、バックボーンが見えるバンドが多い。でもちゃんとオリジナリティのあるものになっている。それがカッコいい。流れを変えていくのって、バックボーンがちゃんとしてて、なおかつ流行りのシーンとかに属してないオリジナリティのあるバンドじゃないかと思うんです。そういうバンドになりたいし、そういう流行りの流れをブチッと切って、僕らから流れを作りたい。

──いい心意気ですね。では、FOLKSのオリジナリティとはなんでしょうか。

郁人 自分たちから情報を取っていって、いろんなものと組み合わせる力ですね。無から有を作り出すことって不可能だと思うんです。当たり前ですけど。いかに情報を素早く取って、いかに面白い組み合わせをして、新鮮に見せていくか。

──情報処理能力。

郁人 はい。僕自身は「才能」とかあまり信じてなくて。自分、才能ないと思ってるんです。ほんとに突拍子もないアイデアを出す人っていますよね。僕が思うに、絵を描く感覚で音楽をやっている人と、小説を書く感覚で音楽をやっている人がいると思うんですよ。僕たちは、どちらかといえば小説を書く、物語を作っていく感覚で音楽を作っている。絵を描く感覚で音楽を作っている人は、本当に一瞬でイメージを与えて、閃きで全部バーッと書いちゃう。イメージが全部景色として浮かんでる。僕らはそうじゃなくて、けっこう論理的に積み重ねていくタイプで。これはこうだからこことつながっているとか、これはこういうふうに構築されているからこうなる、と考えて作っていくタイプなんです。ちゃんと根拠とか背景とか理由とか、こうであるべきっていう理想を立ててやっていくタイプなので。そういう意味では「才能」がなくても情報処理のやり方とか、5人でアイデアを持ち寄って肉付けしていくことで新しいものを生み出せると思っているんです。だから1人ではやりたくなかったんです。それで自分の周りにクリエイターを増やしたかったんです。

──そうか。つまりあなたの言う「才能」っていうのは、たとえば生ギター1本の弾き語りで一瞬で何万人もの人々を惹きつけるとか、そういう「才能」のことですね。

FOLKSの地元である北海道恵庭市恵み野の風景。

郁人 そうです。僕はそれ、今の自分では絶対に不可能だと思ってるんですよ。そうじゃない人でも、音楽を鳴らせるっていうのを体現したい。僕はそうじゃなかったけど、5人のメンバーの力を合わせることで、こうやって音楽を鳴らすことができて、いろんな人たちに聴いてもらってる。しかも胸を張れる音楽ができてる。本当にそういう人を増やしたいし、共感してほしい。そして今はそういう人が名を馳せることができる時代だと思います。大企業のカリスマ社長でなくても、社員の少ないベンチャー企業でも、スピードとアイデアと共有っていう概念でどんどん広げていける。それは今の時代だからできるんじゃないかなと思ってるんです。100年に一度そういう「才能」がある人が出てくるかもしれないけど、僕らはそうじゃない。

──つまり生ギター1本ではFOLKSの音楽の意は伝わらない。

郁人 伝わりづらい……かもしれないですね。ギター1本では自分の考えてる世界観を表現できないと思います。アコースティックやるんだったら1本ではやらない。それなりのセットを組みたいし。うん……僕たちの楽曲はギター1本では表現できないですね。

──曲の作り方も、誰かが弾き語りのデモテープを持ってきてそれに肉付けして……というやり方ではなさそうですね。

郁人 今はそれはないです。まず世界観、背景や舞台を決めて、物語の人物の関係性を決めて。この人物はこの世界観の中でどう動いていくか、って考えていくので。例えば「Replica」だったら、夏の終わりの恵庭の風景があるけど、その中で俺は何を感じたのか、というようなことをまず考える。

アレンジ大好き、歌詞は課題

──歌詞に関してはどうです?

郁人 歌詞を書こうと思って書くというより、すごく悲しかったことや、あるいはすごく楽しかったこと、すごく感情が動いたときに書くので、個人的な体験から膨らませてますね。そのときの風景を浮かべて曲を作って、それに対して歌詞を書く、というやり方です。全部体験そのままかといえばそうではないですけど、それがきっかけで感情が動いて、そこから広げていく形です。

──私が聴いてて感じたことなんですが、今、強いてFOLKSの課題を挙げるとすると歌詞ですかね。

郁人 そうですね(苦笑)。根本的に音楽作りの中で一番何が好きかっていったら、アレンジなんで。

──わかります(笑)。

郁人 で、一番優先順位が低いのは何かって言ったら、歌詞(苦笑)。音楽って、聴く人それぞれの解釈があるべきだと思うんで、アレンジを作って、そのアレンジが言葉のイマジネーションを広げる材料になればいいと思っていて。だからあまり説明しすぎずにワードの強さとか比喩とか、そういうもので想像させる歌詞を書きたいと、そういう理想はあります。

FOLKSの地元である北海道恵庭市恵み野の風景。

──でも日本のシーンの中で広く受け入れられようと思ったら、歌詞ってとても大事ですよね。一般的なリスナーはサウンド全体というより歌と歌詞を聴いてる人が多いから。

郁人 はい、そうですね。ただ僕はサウンド全体がどういう構造になっているか、ということしか聴いてなかったんです。洋楽ばっかり聴いていたせいかもしれないし。なので最近、多くの人たちに届くためにはどうしたらいいのか考えてます。でも歌詞ばかり重視される風潮もどうかと思うんです。音楽の楽しみ方って、それだけじゃないから。ただそこにつながるきっかけとして、もっともっと歌詞のクオリティを上げていくべきだとは思います。

──FOLKSの力で、みんなの耳を変えられるといいですね。

郁人 そうですね!

メジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」/ 2014年2月12日発売 / Ki/oon Music / KSCL-2354
[CD] 2310円 / KSCL-2354
収録曲
  1. Everything is Alone
  2. Two young
  3. FOREVER
  4. Good-bye, friends
  5. River
  6. You're right
  7. Replica
FOLKS(ふぉーくす)

2013年1月に結成された岩井郁人(Vo, G)、岩井豪利(G, Vo)、高橋正嗣(Programming, Syn, Cho)、野口一雅(B, Cho)、小林禄与(G, Syn, Per, Cho)からなる5人組。メンバー全員が楽曲制作を行い、ライブではサポートドラムを加えた6人編成でパフォーマンスを行う。2013年3月に初ライブを開催し、同月に自主制作盤「Take off」をリリース。一般公募枠で「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」にも初出演し、北海道内で着実にその名を広める。2014年2月にキューンミュージックよりメジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」を発表。なお岩井郁人と岩井豪利は兄弟で、メンバー全員が北海道恵庭市にある新興住宅地「恵み野」に住んでいる。