音楽ナタリー Power Push - Equal

RYOTA×164 過去との決別と2人の野望

今年の4月まで歌い手・りょーくんとして活動していたボーカリスト・RYOTAと、VOCALOIDプロデューサーとしても名高いギタリストの164による2人組ユニット、Equalがデビューシングル「SCAPE」を8月5日にリリースする。以前より「ETA」(EXIT TUNES ACADEMY)といったイベントで共演する機会も多かった2人が新ユニットEqualの結成を発表したのは、4月に行われたりょーくんの卒業公演のステージ上。発表直後、RYOTAと164はEqualとして1曲だけ演奏し、多くを語ることなくこの日のライブを終えていた。

音楽ナタリーではデビューシングルの発売を記念して、Equalの2人にインタビューを実施。なぜRYOTAは“りょーくん”を卒業しなければならなかったのか、結成前の彼の心境や、Equalとして2人が抱く今後の目標などを聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 笹森健一

結成発表でお客さん「ポカーン」

──Equalの結成はRYOTAさんのかつての名義である「りょーくん」の卒業公演でサプライズとして発表されました。このときお2人はEqualとして突然登場して1曲だけ披露し、演奏終了と同時に幕が下りるという衝撃的なステージを見せつけ、観客を唖然とさせました(参照:歌い手・りょーくん、卒業公演で新たな一歩踏み出す)。

左からRYOTA、164。

RYOTA あのときは、「りょーくんはRYOTAとして音楽を続けていく」ってことが伝えられれば十分だったんです。だからMCで説明したりはせずに。

164 お客さんたちは「ポカーン」って感じだったよね(笑)。

──「りょーくんが歌い手を卒業する」ということは、昨年末の「ETA」(EXIT TUNES ACADEMY)で発表されていましたが(参照:ETAカウントダウン、歌い手やボカロPたちと盛大に年越し)、この頃にはすでにEqualとして活動することが決まっていたんですか?

RYOTA そうですね。具体的にEqualの結成が決まったのは卒業を発表する1年前くらい。りょーくん名義のアルバム「Re:alize」(2014年1月発表)が出てすぐの頃だったかな。

──「ETA」といったイベントでは何度も共演しているお2人が、改めてユニットを組むことになった経緯は?

RYOTA もともと、一緒にステージに立つ中でお互いに通じるものを感じ合っていて。俺は大将(164)と「これからもどんどん一緒に音楽をやっていきたい」と思っていたんです。そう思っている頃に、とあるボーカルの方がバンドを始めようとして、彼に「ギターをやらないか」ってアプローチしているというのを聞いて。「もしバンドに入ることになったら、一緒に音楽をやりにくくなるかもしれない」と思って、大将にちょっと恥ずかしい感じのメールを送って思いを伝えたんです。そうしたら、大将からもちょっと恥ずかしい感じのお返事が送られてきて。

──ある意味、164さんの取り合いがあったと。

RYOTA そうですね(笑)。大将からはOKをもらったんだけど、レーベルの担当を説得するのがちょっと大変で。担当に「俺は現状に満足してなくて、ユニットを組んでボーカルとして次のステージに行きたい」ってことを説明したら「164はそんなこと言わないはずだ」って反対されたんです。それで「今度164も入れてごはんでも行って話をしよう」ってことになり……。

164 それで「ETA」の静岡公演のときにスタッフも交えてごはんに行って。レーベルの方に「ユニットを組むって話、どう思ってるんだ?」って聞かれたんですけど、僕はもうやるつもりでいたから「やりますよ」って返事をしたんです。当事者同士ではもう決めてたことだから、食事の場まで用意してもらわなくてもよかったんですけど(笑)。

政治家みたいなMCだった

──Equalのボーカルとして活動するためとはいえ、なぜ「歌い手の卒業」「名義変更」という手続きを経なければならなかったのですか?

RYOTA

RYOTA 棘のある言い方で誤解を招くかもしれませんけど、ニコニコ動画の「歌ってみた」界隈ではアイドルのように見られていたと思うんです。ファンとの関係性やペンライトを振ってライブを観るのもアイドルのそれに近いですし。でもEqualではもう完全にバンドシーンまっしぐらなサウンドで、ライブも汗だくでもみくちゃになって盛り上がるっていうのをやりたくて。「今までのキャリアとはまったく違うシーンでやってく」ということの意思表示のようなものが必要だと思ったんです。

164 僕は幸いなことに名前に「P」が付いていなかったので、そのまま164って名前ですけど。そもそも僕がこの業界で活動したきっかけはVOCALOIDでしたけど、ギタリストとしての活動とか楽曲提供とか、ボカロに関わらない仕事のほうが今は割合が高いので。名だたるギタリストのサインが並んでるGibson Brands Showroom TOKYO(楽器メーカー・Gibson Brands, Inc.のショールーム)の壁にも「164」って書かせてもらってるので、このままギタリスト・164でもいいかなって(笑)。

RYOTA 「りょーくん」のファンがEqualをいいと思ってくれるかどうかは、正直わかりません。付いて来てくれるならうれしいけど、そうじゃないとしてもそれは仕方なくて。

──ファンとの接し方の話をすると、Equal結成後、りょーくんのTwitterアカウントが「RYOTA」に更新されましたが、その後RYOTAさんは全然つぶやかなくなりましたよね。これは意図的に?

RYOTA 意図的にっていうより、もともと、Twitterでマメにつぶやく人間じゃなかったというだけなんです(笑)。りょーくんのときはキレイなところしか見せないように振る舞っていて、Twitterはある意味“りょーくんというキャラクター”が存在してた感じで。

164

164 ライブのMCとか、政治家みたいだったもんね。

RYOTA ハハハ(笑)。スタッフも俺の大雑把なところというか素の部分は知ってたから、ライブの打ち合わせで「ここのMCは“りょーくん”でお願い」とか言われて。そうすると俺、「本当に今日は来てくれてありがとうございます」「これからも応援よろしくお願いします」「それでは聴いてください」くらいしか言うことがなくなっちゃうんです。

164 そうそう。

RYOTA 自分の人間性が出せないことに対してこれまで窮屈な思いをしてきたから。最近は羽が生えたみたいに自由に振る舞ってます(笑)。

──ちなみにユニットを組むことになってからお2人の関係性は変わりましたか?

RYOTA あんまり変わってないかも。同じ現場が増えたから、どんどん仲良くなっていると思うけど、レコーディングのときのやり取りとかはこれまで通りな気がする。大きく変わったのは、大将のことを「うちのギター」って言えるようになったことですね(笑)。贅沢だなと思ってます。

164 いやいや、恐縮でございます。

──164さんは以前のインタビューで「ギタリストとしてやっていきたい」と話していました(参照:164「THIS IS VOCAROCK」インタビュー)。声をかけられた側だったとはいえ、ご自身にとっても今回のユニット結成は願ってもないことだった?

164 やっぱりギタリストとして在りたいという思いはずっと変わらないので。「Equalのギターです」って言えることがすごくうれしいんです。

ニューシングル「SCAPE」2015年8月5日発売 / EXIT TUNES
限定盤 [CD+DVD] 1728円 / QWCE-00475
通常盤 [CD] 1296円 / QWCE-00483
CD収録曲
  1. SCAPE
  2. mask
  3. Introduction(限定盤のみ)
  1. I'm here(通常盤のみ)
限定盤DVD収録内容
  1. SCAPE
  2. Documentary of SCAPE
  3. Documentary of Equal
ライブ情報
Equal「デビュー記念 Free Live "SCAPE" at STUDIO COAST」
  • 2015年8月8日(土)東京都 新木場STUDIO COAST
    OPEN 15:00 / START 16:00
Equal「Equal LIVE TOUR 2015 -Introduction-」
  • 2015年11月4日(水)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
    <出演者>
    Equal / and more
  • 2015年11月5日(木)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
    <出演者>
    Equal / and more
  • 2015年11月15日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
    <出演者>
    Equal / and more
Equal(イコール)
Equal

ボーカリスト・RYOTAと、VOCALOIDプロデューサーとしても名高いギタリスト・164の2人からなるユニット。RYOTAがりょーくん名義で2015年4月に開催したライブツアー「LAST LIVE TOUR 2015 -Re:set-」の東京公演にて、Equalの結成を発表した。8月にデビューシングル「SCAPE」をリリースし、東京・新木場STUDIO COASTにてフリーライブを実施。また11月には東名阪を回る対バンライブツアー「Equal LIVE TOUR 2015 -Introduction-」を開催する。