音楽ナタリー Power Push - 舞台「名なしの侍」特集 堂島孝平×菜月チョビ(劇団鹿殺し)×丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)

最高に痛快な新感覚音楽時代劇

やっているのは芸術作品じゃなくて娯楽作品

──お互いの似ているところとして、「自分がこうしたい」というよりも「お客さんに喜んでほしい」ということを大事にしていると思うんですがいかがでしょう?

左から丸尾丸一郎、菜月チョビ、堂島孝平。

堂島 そうだと思います。もちろん自分のいいところを見てほしいっていうのがないとやってられないとは思いますけど、来た人全員のことを、自分の視野に入れながらそういうショーができるっていうのは自分のいいところだと思いますね。

丸尾 僕も脚本を書くときは娯楽作品を作ってるって感覚が強いですね。お芝居って、それこそ歌舞伎にしてももともとみんなで集まって酒飲みながら観てたものだと思うんですね。だから芸術作品じゃなくて、お客さんにとっての娯楽になるようにっていうのは意識していますね。

菜月 私も芸術家っていう気持ちは全然ないですね。わざわざお金出して観に行く価値があるかっていうのはすごく考えます。毎日満員電車に揺られて会社に行ってる方々が、休みの日に、会社帰りに、お金を出して来るんだぞって。その人たちに「お金出してよかった! 明日もがんばるぞ!」と思ってもらえるようにっていうのは常に考えますね。

──そうやってエンタテインメント作品を作るにあたって、ステージで心がけていることはありますか?

菜月 私の場合は、自分がお客さんだったとき楽しいと思うかどうかを考えますね。客席から観てもっとテンポよくやってくれと思えばそういう演出にするし、もうちょっとゆっくりしゃべってくれないとわからないと思えばそうするし。なので演出家というより観客っていう意識はすごくあります。本番中もずっと、もう1人の自分を客席に置いてる感覚です。

堂島 僕も考えてることが近いと思いますね。チョビさんが気にしてるように、音楽のライブもちょっとでもダラっとしたり、お客さんが付いていけない瞬間が生まれたりすると、見せたいものが崩れる可能性があるので、そこはすごく意識しますね。

──丸尾さんが書く脚本は、盛り込むエピソードもエンタメ性が高いというか、大衆性がありますよね。誰でも知ってるようなX JAPANのパロディバンドを登場させたり。

左から丸尾丸一郎、堂島孝平、菜月チョビ。

丸尾 そうですね。でありながら最後に1段階段を上れるような作品を目指してます。途中はケラケラ笑って、バカだなって思って観てもらえたらいいなと思うんですね。会社終わりだったり、休みの日にわざわざ観に来ていただくので。だけど観終わったあとにちょっとだけでも何か持って帰ってもらえるものがあるといいなと。宮崎駿監督の言葉なんですけど、「観客の間口は広く、だけど観終わったあと、知らないうちに全員が階段を1段上れているような作品がいい」っていう。

菜月 それが鹿殺しが舞台をやる意味だよね。

堂島 これは僕の持論なんですけど、知ってることを言われても人は感動しなくて、観たことないものを観たときのほうがみんな心が動くんですよ。例えば1960年代にミュージシャンがステージでギターを燃やしたみたいな話っていまだに語り草になってるじゃないですか。ああいうことに象徴されるように、「わっなんだこれ!?」って思ったことはずっと残るんですよね。そういうのを自分のショーの中でも観せていかなきゃいけなくて。お客さんが感じたことがない瞬間に連れていかなきゃ、それこそ来てもらった意味がないと思うし、「階段を上る」っていうのはそういう意味なんだと思いますね。

絶対よい作品になるなって思えるのは初めて

──エンタテインメントであることをすごく大事にしているお二方なので、間違いなく楽しい作品になるだろうと思うんですが、現時点での手応えはいかがでしょう?

菜月 私もそう思ってるんですよ(笑)。心配性なので、いつもだったら本番直前までずっと不安なんですけど、今回は堂島さんっていう、音楽劇をやるにあたってすごく頼もしい方に来ていただいてるから。絶対よい作品になるなって思えるのは初めてなので楽しみです。

丸尾 最近僕は直感を信じるようになっていて、その直感の通りに行動するとだいたいうまくいくんですよ。今回は公演を組んだときから「これはうまくいく」と思っていて。自分が思い描く最高の素材がすべて集まっているので、必ず観たことのないような新しい、かつエンタテインメント性のある力強い作品を提示します。

堂島 僕はいろんな仕事をやらせてもらってきましたけど、舞台っていうのは未知の領域に近いので、がんばりますって言ってもまだがんばり方がわからないんですよ。ただ自分のこれまでやってきた音楽のやり方で言うと、楽曲を提供するときと似てるのかなと思っていて。

菜月丸尾 へえ。

左から菜月チョビ、堂島孝平、丸尾丸一郎。

堂島 楽曲提供の場合、自分にしか思い付かないことを自分じゃない人にやってもらうんですよね。今回は曲の提供ではないけど、自分の体を提供してるというか、自分でよければやりますっていう感じがすごくあるんですよね。「俺は役者のときはこうなんだ!」みたいなのがまったくないので、自分にやれることは全部やりたいと思ってますね。

丸尾 堂島さんはバク転できるくらい運動神経いいから殺陣のシーンも楽しみですね。

菜月 そうだね。あとは堂島さんが「燃えたい」っておっしゃってたので、そこも楽しみにしていてほしいですね。堂島さんの燃えっぷり(笑)。

堂島 燃えたい……ですね(笑)。

劇団鹿殺し「名なしの侍」 / 2016年7月16日(土)~24日(日) 東京都 サンシャイン劇場 2016年7月28日(木)~31日(日) 大阪府 ナレッジシアター
劇団鹿殺し「名なしの侍」
イントロダクション

「最強は誰だ」
時は戦乱の世。幾多の武将が名を馳せる中、月見草のように闇に咲く名も無き侍たちがいた。強さとは何か? 死ぬべき時はいつか? 生きる意味とは? はぐれ雲に問い続ける刃の光。流れた血のあとに、月の涙が零れ落ちる。
合戦の騒乱を生バンドに乗せ、足軽が管楽器を吹く。嘆きのギター、進軍のベース、生きる鼓動がドラムに乗り移る。劇団鹿殺しが挑む「新世代パンク時代劇」参上!

出演者

菜月チョビ / 丸尾丸一郎 / オレノグラフィティ / 橘輝 / 鷺沼恵美子 / 浅野康之 / 近藤茶 / 峰ゆとり / 有田杏子 / 椙山さと美 / メガマスミ / 木村さそり / 玉城裕規 / 鳥越裕貴 / 谷山知宏(花組芝居) / 堂島孝平
piggy(G / ex. pocketlife)、奥泰正(B / THE WELL WELLS)、辰巳裕二郎(Dr / 花団)
池田海人 / 石川湖太朗 / 長田典之 / ちゃこ / 中島ボイル / 前川孟論 / 矢尻真温

チケット

5月14日(土)23:59まで「名なしの侍」特設サイトにて特典付き2次先行販売実施中。
5月15日(日)10:00より前売り券&学生券の一般発売がスタート。

堂島孝平(ドウジマコウヘイ)
堂島孝平

1976年2月22日大阪府生まれのシンガーソングライター。1995年2月にシングル「俺はどこへ行く」でメジャーデビューを果たす。1997年には7thシングル「葛飾ラプソディー」がアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のテーマソングに起用され全国区で注目を集めた。ソングライターとしての評価も高く、KinKi Kids、藤井フミヤ、山下智久、Sexy Zone、太田裕美、THE COLLECTORS、アイドリング!!!、住岡梨奈など数多くのアーティストへ楽曲提供したりサウンドプロデュースしたりしている。また西寺郷太(NONA REEVES)と藤井隆とのアイドルユニット・Smalll Boysとして活動しているほか、佐野元春の「SOMEDAY」再現ライブのバンドメンバーとして参加するなど、多彩なミュージシャンたちとセッションワークを行っている。2014年5月末で閉館となった東京・吉祥寺バウスシアターのクロージング作品の1つとして劇場公開された「さよならケーキとふしぎなランプ」では俳優として主演を務め、フジテレビ系「オモクリ監督~O-Creator's TV show~」では映像監督として出演した。デビュー20周年を迎えた2015年2月には、東京・中野サンプラザホールにて記念公演「堂島孝平 活動20周年記念公演 オールスター大感謝祭!」を、ゆかりのゲストを多数招いて華々しく開催。同年12月には通算17枚目となるオリジナルアルバム「VERY YES」をリリースした。2016年7月、劇団鹿殺しの舞台「名なしの侍」に俳優としてゲスト出演する。

劇団鹿殺し(ゲキダンシカゴロシ)
劇団鹿殺し

2000年、関西学院大学在学中に菜月チョビと丸尾丸一郎によって旗揚げされた劇団。2005年に活動の拠点を大阪から東京に移し、当時7名だった劇団員による2年間の共同生活や年間1000回以上の路上パフォーマンスで話題を呼ぶ。あわせてコンスタントに公演を実施し、2010年発表の「スーパースター」は、第55回岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートされた。2014年1月にはCoccoを主演に迎え、初プロデュース作品として「ジルゼの事情」を手がける。この公演は演劇界のみならず音楽界でも話題を呼び、同年9月に東京・サンシャイン劇場で再演された。2015年6月、石崎ひゅーいを招いた「彼女の起源」では生バンドを取り入れた舞台に挑戦して成功に収める。2016年7月、堂島孝平をゲストに「名なしの侍」を東京・サンシャイン劇場と大阪・ナレッジシアターで上演。