DEENの夏うたフレーズ満載のサマーソング

──続いて「Te Amo」は、ボサノバテイストの心地よさを感じさせる楽曲ですね。

田川　池森のミッドレンジのボーカルを生かした曲も多いんですけど、高いキーで歌ったらどうなるんだろう？という興味があったんです。それを肩の力を抜いて揺らいでいるような雰囲気で歌ってほしかったから、ボサノバの曲を作ろうと思って。でも完全にボサノバにせず、日本人らしい切なさやみずみずしさを加えて、DEENらしい仕上がりになったと言うか。今の僕らだからこそ出せた仕上がりになったと思います。個人的にはもっといやらしい感じを出してもいいのかな？とも思ったけど、池森にはどうやら聖域があるらしくて……（笑）。

池森　別にないんですけどね（笑）。大人の2人が海で休日を過ごす歌詞になりました。

──今回のアルバムの中で、もっともインパクトの強かったナンバーが「サマーソング」でした。この曲には歌詞に過去のDEENの“夏うた”のフレーズやタイトルを散りばめていますよね。

池森　ここ最近夏をテーマにした楽曲を多く作ってきたこともあり、次の作品のアプローチを模索していたときに「これまで発表してきた夏うたのフレーズを入れてみたら新しい感じが出るのでは？」と思って歌詞を書いたところ、メロディと見事にハマったので収録しました。これで1つまた僕らの新しい扉が開いた気分です。

──ライブでも盛り上がりそうですね。

山根　そこが狙いでもあります（笑）。間奏の部分では観客の皆さんと歌のパート分けをして、合唱するイメージを描きながら作りました。

共に25年歩んできた友へ

──また本作には田川さんによるインストナンバー「Sensual Blues」も収録されています。

田川　シングル「君へのパレード♪」のカップリングにそれぞれのソロ曲を収録しているんですけど、これはそこに入っている「Sense of Nostalgia」の流れを汲みながらもう少しスパイスの効かせた仕上げにしましたね。アルバム全体の雰囲気を考えると「どうかな？」と思った部分もありますが、自分の中で湧き出たものを忠実に表現したジャズスタイルの1曲。また基本的にコード進行に変化はないんですけど、そこにいろんな表情や音像を乗せることができましたね。

──山根さんのソロ曲「Summer boy's tears」も収録されています。

山根　今回のアルバムではテンポの速い楽曲ばかりを作ってきたので、ソロでは夏の終わりの寂しさを表現したゆったりな曲にしようと思いました。また自分の歌いやすいキーでメロディを作ることができたから、のびのびとした感じで完成しましたね。

──それに続く「Oh My Friend」はずっと続く友情について歌ったバラード。聴いていると3人の絆の強さも伝わってきます。

池森　これはデモの段階から「青春」というキーワードが浮かんでいました。共に夢を追いかけた友への思いを描いた1曲ですね。

──年齢や経験を重ねた今だからこそ歌える世界なのかなと思ったんですけど、池森さんはそういうことを意識されて作詞をされますか？

池森　「最初に思い描いたストーリーにどれだけ忠実でいられるか？ いかに聴き手のイメージを膨らませることができるか？」ということを第一に考えていますね。楽曲制作は映画監督になった気分で臨んでいるので、あんまり今だから言えることを描こうとは考えてはいません。

──でもラストの皆さんがリレー形式でボーカルを取る「キズナ」は、25年間一緒に歩んできたメンバーとファンとの絆の強さを感じました。またこれからも共に未来へ進んで行こうとする今だからこそ伝えられるメッセージも含まれていますよね。

池森　25周年を記念したアルバムですし、これまでの絆を表現する楽曲として3人でパートごとにボーカルを変える曲を収録したいと思いまして。曲のテーマに関しては、おっしゃる通り。僕の発言として変えてください（笑）。

山根　3人で歌える曲を念頭に制作していたんですけど、途中で池森のキーに合わせたメロディに変えようとしたら「そのままでいい」ってことになって、最終的にはファンの皆さんとも口ずさめる楽曲になったのかなって。

田川　このアルバムの書き下ろし曲の中で唯一すでにツアーでも披露している曲なんです。まだ知られていない曲のはずなのに、皆さんからの多くの反響があって。会場があったかい雰囲気に包まれると言うか。一体感が生まれるエネルギーがありますよね。だから毎公演披露するのが楽しみな1曲です。