対照的な田川ソロと山根ソロ

──チャレンジという意味では、5曲目の「雨道...」も手応えがあったんじゃないでしょうか？ サビのいきなりの変拍子に驚かされる、山根さんが作曲とアレンジを手がけた曲です。

山根　これはデモ音源とまったく違う感じになりましたね。僕がトラックを作るときはスタジオでいろんなミュージシャンと意見を交わしつつその引き出しを利用させてもらう感じなんですけど、この曲はデモからサビのテンポが倍になったナンバーです。自分でもビックリでした。

田川　劇的に変わったもんね。でもサビがこの曲の大きなフックになってる。

山根　あとメジャーコードが多い中で、この曲はがっつりマイナー。雰囲気的には夏の雷鳴って感じ。

池森　僕もそういう雰囲気を感じて、歌詞は危機が迫っているような恋愛の波をうまく書きたいなって思いました。サビのテンポがいきなり変わることで“君を絶対離したくない”って気持ちがより強まったし、暗いトーンになりがちなところも緩和されたのかなって。マイナーだけど、あまり暗い曲にはしたくなかったんですよね。

──そして「雨道...」に続く6曲目「Emerald Ocean」は田川さんのソロ曲ですね。

田川　これは最初に曲名が浮かんで、それありきで書いたんですが、海をバックにちょっと歯の浮くような愛のセリフが似合う感じ。リゾートホテルでの大人のひととき……というイメージですね。候補にはもっと元気な曲もあったんですが、アルバム全体のバランスを考えたときに、中間あたりに来るならこういう曲のほうがコントラストが効いていいだろうと。ホッとできるお昼寝タイムって感じです（笑）。

──おしゃれで、どこか懐かしさを感じるサウンドも印象的でした。

田川　それはすごく意識したところで。うまく80年代っぽい感じに仕上がったなって思います。

──そんな田川さんのソロと対極的な位置にあるのが山根さんのソロ「Wild Road Dreamers ～上海ロックスター Episode1.5（High School編）～」ですね。まずは“上海ロックスター”を知らない方のためにご説明を……。

山根　そうですよね（笑）。もともとはライブで田川くんのソロコーナーがあるなら自分も何かやってみようってところから始まったんです。普通にやるより新しいキャラクターを立ててやったら面白いんじゃないかと思って、上海のロックスターという人物像を作ったんですよ。彼は60歳くらいの男性で、昔はちょっとヤンチャしてたみたいな……。

──そういう背景の設定まであるんですね。

山根　はい。で、楽曲は「STAR WARS」のような感じでタイトルに“Episodeなになに”って付けて、昔を振り返るような形にしているんです。もう10年以上やってるシリーズなんですけど、曲調はバラバラで、ハードなギターサウンド、パラパラ風、ディスコっぽい感じ……といろいろやってきたんですよ。それで最新作となる今回はそのどれとも違うフォークをやってみようと。今はやさぐれたおじいさんだけど、高校時代はバイクの後ろに女の子を乗せて、ルート66みたいな荒野を走ってたんだぜ？的なイメージで書いてみました。

──ライブでも上海ロックスターは好評と聞きました。そうやって別のキャラクターに扮するメリットは？

山根　このコーナーをやるときはサングラスをかけるんですけど、そうするともう何をしてもいいっていう気分になるんです。

池森　リーダー、すごい人見知りなんですよ。でもサングラスをかけると、テレビに出ている芸人さんより面白い！

山根　そんなことないでしょ（笑）。でもサングラスがあるといつもより弾けられるっていうよさはありますね。