曲に歌詞を当てはめていくのは難しかった

──カップリングの「カリソメソッド」は後藤さんが作曲して、橋本さんと福岡さんが共作の歌詞を付けていて。後藤さんはボーカルにも参加していますね。

福岡　最初は何かのカバーをやろうかという話もあったんですけど、ゴッチさんが「俺が曲を書いたほうが早いと思う」って曲を書いてきてくれて。せっかくプロデュースしてもらうし、曲を提供してもらえるなら、私たちも大歓迎ということで。

橋本　ゴッチさんの色が全面的に出ているシングルにしたかったし。

──後藤さんにこういう曲を書いてほしいというリクエストはしたんですか？

福岡　一切してないです。ゴッチさんがメールで曲を送ってきてくれて。「あとは自由にアレンジしてください」と言ってくれたので、ギターのコード感やドラムに今のチャットらしさをどう出すか絵莉子と考えてアレンジさせてもらいました。

──サウンドはかなりソリッドな仕上がりですね。

福岡　ゴッチさんが最初からベースレスで作ってきてくれたのも大きかったですね。

橋本　ギターの音もめっちゃ歪ませようと思って。アジカンのテイストに自分たちのテイストを融合させるイメージで。

──歌詞はラブソングなんだけど、新生チャットでは初めて見せるメランコリックなムードが出ています。

福岡　ゴッチさんに「どういう歌詞がいいですか？」って相談したら「切ないのがいいんじゃない？」という答えが返ってきたんです。あと「なるべく韻を踏んでくれ」と。そのキーワードを頼りに絵莉子と一緒に書きました。

橋本　そもそも自分以外の人が書いた曲に、2人で書いた歌詞を乗せるという作業が初めてだったので。構成を考えるのも大変だったし、韻を踏むのも難しくて。いつもは先にある歌詞に曲を付けるから、曲に歌詞を当てはめていくのってこんなに難しいんだなって思いました。

福岡　最近、私は先に曲があってそこに歌詞を付ける作業をちょっとずつやり始めているんですけど、こういう切ない感じの歌詞を付けるのは難しいなって思いましたね。ちょっと歌謡曲の歌詞を書くような感覚があって（笑）。サウンドはゴリゴリしているんだけど、歌は目立つ感じで、そこに切ない歌詞を乗せるツーピースバンドってほかにないと思うんですよ。でも、それがこの曲の面白さでもあって。

デュエットっぽい雰囲気が想像以上に出た

──歌詞の物語は2人でどのように共有していったんですか？

福岡　最初の4行くらいまでは、2人でなんとなく話し合いました。そこが決まったら、物語に登場する男女の関係性のイメージは自然と共有することができたので。お互い書いてきて、それを融合させるという流れでしたね。

橋本　出だしの部分を話し合った時点で、2人でイメージを共有できたのが大きかったです。それを抜きにまっさらな状態でそれぞれ書いていたら、全然違うものになったと思います。

──後藤さんは歌詞についてどんな感想を？

福岡　特に何もなかったですね（笑）。そこはサラッとしていて。

橋本　そのドライなときはドライな感じがいいんですよ（笑）。「あ、これでいいんだな」って思えるので。

──橋本さんと後藤さんのボーカルは、ツインボーカルというより、デュエット然としていて。それもすごく新鮮です。

橋本　そう、実際にゴッチさんに歌ってもらうまでは、ここまでデュエットな感じになるとは思っていなかったんですけど（笑）。デュエットっぽい雰囲気が想像以上に出たので、恥ずかしくなってちょっと歌詞をクールめに変えたりもしたんです。

──さっき福岡さんが歌謡曲の歌詞を書くような感覚って言ってたけど、その話とつながる部分ですよね。

福岡　まさにそうで。歌入れしたら、さらに歌謡曲的なデュエット感が出たなと思って（笑）。

──その歌がソリッドなロックサウンドに乗ってるっていう妙味がありますね。

福岡　そうそう、そういう部分も含めて面白い曲になったと思います。

──リスナーもカラオケに行った際にはぜひ男女でデュエットしてもらいたいなと（笑）。

橋本　ぜひぜひ（笑）。

福岡　♡と♣が表示される感じで（笑）。

アジカンがリスナーを惹きつけてる理由がわかった

──では、今回の後藤さんとの制作でどんなことを得られたと思いますか？

橋本　自信を与えてもらえた気がします。ゴッチさんがチャットを好きでいてくれている思いを今回ご一緒できたことで実感することができて。「ニューヨークに移り住んで活動したら？ 絶対うまくいくよ」って言葉をかけてもらえたこともうれしかった。自分たち以外のミュージシャンと積極的なコミュニケーションを取ることで得られるものって特別だなって思います。

福岡　現役でバリバリやっているバンドマンにプロデュースしてもらうのが初めての経験だったんです。ゴッチさんはバンドマンとして、私たちがまだ見たことのない景色を見ている人なんですよね。そういう人じゃないと言えない言葉がたくさんあったし、かなり刺激を受けました。アジカンがこれだけリスナーを惹きつけてる理由がわかった気がします。

──今のチャットは端から見ていても気持ちいいくらい、描いたアイデアやチャレンジがどんどん結実していて。引き続き「止まるって何？」みたいな感じで走り続けると思うんですけど。

福岡　そうですね（笑）。まだまだやりたいことがあるので。ホントに自分たちで描いたことがどんどん結実しているので、めちゃくちゃありがたいですよね。それだけ周りに協力してくれる人がいるわけですから。

橋本　思いついたことを後回しにするっていう発想がないんです。今すぐやろう、って感じで。まだまだ走り続けたいと思います。