音楽ナタリー Power Push - BURNOUT SYNDROMES

“青春文學ロックバンド”が届けたい歌

2~3ツイートにいかにドラマを発生させるのか

──「ハイキュー!!」のオープニングテーマは、これまでスキマスイッチやSPYAIRなどそうそうたるアーティストが担当してきました。その役割にBURNOUT SYNDROMESが選ばれた要因はなんだと思いますか?

熊谷 僕は今まで小説や映画、マンガを題材にして曲を書くことが多かったので、そういう作品を愛する心を人一倍持ってるところだと思いますね。自分の好きな作品のよさを知ってほしいなっていうのが僕の原動力の1つなんです。だから今回、アニメに見合う曲を作るのはすごくやりがいがありましたね。

──BURNOUT SYNDROMESは“青春文學ロックバンド”というキャッチコピーを掲げて活動されていますが、皆さんそれぞれ好きな小説はありますか?

石川大裕(B, Cho)

石川 僕が一番心に残っている作品は、子供の頃に読んだミヒャエル・エンデさんの「モモ」ですね。その中に“時間とは音楽である”というような一節が出てくるんです。難しくて未だに理解できてないんですけど(笑)、すごいきれいやし、好きな言葉です。

廣瀬 僕は太宰治の「斜陽」や「人間失格」が好きですね。この2作はもともと熊谷が好きな小説なんですけど、熊谷が書く歌詞は小説から影響を受けているものも多くあるので、どういう部分から持ってきたんだろう?と思って読んだのがきっかけです。

──実際に歌詞に反映されている小説ってあるんですか?

熊谷 村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」は「文學少女」(2015年リリースの2ndアルバムの表題曲)の歌詞の一節に使用させてもらっています。この小説は100%中99%がドロドロしているような作品なんです。酒! 女! 暴力!っていう感じで。でも最後の1Pで主人公が空を見て「限りなく透明に近いブルーだ」って気付く、溜めてたものがバッと弾けるような瞬間がありまして。何かメッセージがあるというよりかは、その瞬間のカタルシス自体を、村上さんは読み手に味わってほしいのかな?って思ったんです。それって音楽にも通ずる部分があるんじゃないかなって。言葉にできない部分を伝えるために、歌詞だけじゃなくて音とか楽器とか、展開があるんだろうなっていうのをこの小説を読んで思いましたね。

──そこまで小説がお好きだと、小説家になろうという選択肢はなかったのでしょうか。なぜ音楽で表現したいと思うのですか?

熊谷 小説には原稿用紙60枚分ぐらいの文字が詰め込まれているじゃないですか。それに対して楽曲の歌詞は400文字いかないぐらいだと思うんですよ。Twitterでいう2~3ツイート分ぐらいだと思うので。そこでいかにドラマを発生させるのかっていうのは小説にはできないことであって、僕がやりたいことなんですよね。

──それはいつ頃気付いたのですか?

熊谷 実は最近なんです。「FLY HIGH!!」を書くにあたって、やっぱりたくさんの大物アーティストが担当している「ハイキュー!!」のオープニングテーマっていうプレッシャーもありましたし、「音楽にしかできないことはなんだ」「うちにしかできないことってなんだ」ってすごく考えさせられた時期があったんです。でもそうやって考えてみると、やれることってそんなに多くないんじゃないかなって思ったんですよ。そうなると、やっぱり得意技で戦うしかないのかなっていう。

──ご自分の得意技ってどんなところだと思いますか?

熊谷 メロディと歌詞が一番盛り上がるところを一致させるということだと思いますね。それが一致した瞬間に、自分としては音楽というよりかは、文学になるのかなあっていう感じがしていて。その瞬間がカタルシスであると思うんですけど、これを狙って作り出せたらって思いますね。

BURNOUT SYNDROMESは分業バンド

──BURNOUT SYNDROMESは2010年に「閃光ライオット」で準優勝を獲得されました。大会に出て得たものはなんだと思いますか?

石川 同年代のバンドと出会って「みんなこんな歌を作んねや」って刺激になりました。あとたくさんの人に聴いてもらえる喜びみたいなものもそのとき初めて知って、もっとたくさんの人に聴いてもらいたいなって思ったんですよね。「閃光ライオット」がきっかけになって、2012年には無料CD「リフレインはもう鳴らない」を1万枚作って、タワーレコードさんとかヴィレッジヴァンガードさんとかに置いてもらって、全国に配布しました。おかげさまでその曲は、今でもワンマンライブとかでやるとたくさんの歓声が上がるような曲に育っていて。

──コンテストに対してはどのような姿勢で挑んでいたのでしょうか?

石川 「閃光」には周りのスタッフさんに勧められて出場したんです。その頃のことを思い出すと、すごく自分勝手に音楽やってたなあと思いますね。お客さんを楽しませるどうこうじゃなくて、「俺らの歌を聴いてくれ」っていう感じだったし、「優勝して100万欲しいぜイエイ!」みたいな考えで行動していたので。

廣瀬拓哉(Dr, Cho)

廣瀬 僕はけっこう負けず嫌いなんですよね。「閃光」に応募したときも「絶対負けない! 絶対優勝してやる!」と思って。準優勝で悔しい思いをしました。

熊谷 うーん、僕は物を作ってれば満足な人間なんで、正直そういったコンテストとかにあまり興味があるわけじゃないんです。うち実家が紙器を作る箱屋なんですよ。そういう職人の家に生まれたので、自分も何か作ってるときが一番楽しいですし、それで別にいいというか。自分はバンドの中だと工房の職人みたいな存在だと思っていて。うちのバンドは分業なので。

廣瀬 そうですね。僕はこの2人を支える役割です。

石川 僕はお客さんを笑顔にさせる役割だと思いますね。

──石川さんはライブでヘッドセットマイクを使用されていますが、それは「ビジュアル面で注目されたい」という思いからですか?

石川 それもありますね。使用することになったきっかけは2015年に宮崎県で行われたフェス「UMK SEAGAIA JamNight 2015」に出たときに、ゴールデンボンバーさんと競演したことなんです。ゴールデンボンバーさんって、ギターも、ベースも、ドラムも演奏してないじゃないですか。でも絶対に会場を盛り上げるし、お客さんを楽しませようっていう気合いがひしひしと伝わってきまして。それを可能にしている自由さは何かな?って考えたときに、何にも縛られないことなのかなって。僕はベースを弾かないといけないので、僕にとってはマイクスタンドをなくしてしまうことが自由を手に入れることなのかなって思ったんですよね。

──ゴールデンボンバーのお客さんを楽しませようという精神に共感したんですね。

熊谷和海(G, Vo)

石川 というか、すごく憧れましたね。ライブハウス慣れしてないお客さんに対して急に「手挙げろ!!」って言っても難しいのかなって。少しでも軽い気持ちでライブを観てもらえるようにヘッドセットマイクを付けました。っていうか「付けろ」って言われたんですよ。

熊谷 俺が付けろって言いました(笑)。昔テーマパークで働いてたことがあったんですけど、その中でやってるショーの出演者がヘッドセットマイクを付けていたんですよ。それで「盛り上げるにはこれじゃないかな?」って思って「新しいアイテムを取り入れてみれば?」っていう提案をしました。でも別に意外性を狙ったわけではないんですよね。

石川 うん。イロモノになりたいわけではないんです。単純にそれをやることでパフォーマンス力が上がればなっていう。しかも付けてすぐのライブがすごくいい感じに盛り上がったんですよ。昔からのお客さんたちには笑われましたし、もちろん賛否両論あったんですけど(笑)。でも“ヘッドセットの人”として覚えてもらえれば全然いいかなっていう。

メジャー1stシングル「FLY HIGH!!」 / 2016年3月2日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [CD+グッズ] 1620円 / ESCL-4598~9
通常盤 [CD] 1200円 / ESCL-4600
初回限定盤 収録曲
  1. FLY HIGH!!
  2. エアギターガール
  3. サクラカノン
  4. FLY HIGH!!(アニメバージョン)
  5. FLY HIGH!!(Instrumental)
通常盤 収録曲
  1. FLY HIGH!!
  2. エアギターガール
  3. サクラカノン
Release Anniversary Tour~君を何処へだって連れて行く~ 東名阪ファイナルシリーズ
  • 2016年6月25日(土)東京都 GARRET udagawa
  • 2016年6月27日(月)愛知県 池下CLUB UPSET
  • 2016年6月28日(火)大阪府 心斎橋CLUB DROP
BURNOUT SYNDROMES 全国ツアー(タイトル未定)
  • 2016年11月16日(水)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2016年11月25日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO

※公演スケジュールは後日追加の予定

BURNOUT SYNDROMES(バーンアウトシンドロームズ)
BURNOUT SYNDROMES

2005年に結成された熊谷和海(G, Vo)、石川大裕(B, Cho)、廣瀬拓哉(Dr, Cho)による関西在住の3人組ロックバンド。“青春文學ロックバンド”というキャッチコピーで活動しており、熊谷による日本語の美しさを大切にした文学的なリリックで支持を集める。2010年に開催された音楽コンテスト「閃光ライオット」では準グランプリを獲得。2012年に無料CD「リフレインはもう鳴らない」を全国各地のCDショップやライブハウスなどで1万枚配布する。2014年にはタワーレコード限定シングル「LOSTTIME」、初の全国流通アルバム「世界一美しい世界一美しい世界」をリリースし、2015年5月にいしわたり淳治プロデュースのもと2ndアルバム「文學少女」を発表。2016年3月にはテレビアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」第2クールのオープニングテーマを表題曲としたシングル「FLY HIGH!!」でEPICレコードジャパンからメジャーデビューを果たした。