音楽ナタリー Power Push - BUMP OF CHICKEN

結成20周年を飾る新作と20年の礎たるルーツミュージック

ハードロックを掘り下げつつサザンロックへ到達

──この4人の関係ってのは、バンドを始めるずっと前からあるわけですよね。

藤原 それはもう、石蹴りとかやってる頃からです。

──ということは、4人で共有した初めての音楽がThe Beatlesだった。

藤原 まずはそうですね。そのあと「俺たち、今一番イケてる音楽を聴いてるよね」っていう明確な意識があったのは、きっとGreen Dayだと思います。それが高1のときでした。で、何曲かコピーして、パワーコードを覚えて。最初はそういうパンクやメロコアみたいなところからバンドが始まっていった。ビートルズのときは手探りでしたけど、Green Dayをコピーしてるときは「自分たちは今メロコアをやってる」みたいな意識があったもんね。

直井 あったね。

──BUMP OF CHICKENのルーツにはそれだけじゃないものがたくさんありますよね。同時代のロックやポップスだけでなく、さっき言ったようにカントリーやブルーグラス、アイリッシュのようなトラディショナルな音楽のテイストがある。これは、どういうふうにして入ってきたものなんでしょう?

藤原 高校に入ったら周りのみんながすごく洋楽に詳しくて、小学生のときに「髪の派手なお兄ちゃんたちの音楽」としか認識してなかったハードロックをよく聴くようになるんですね。Skid RowとかAerosmithの話を4人でしたり、僕個人ではMetallicaの「Enter Sandman」とかGuns N' Rosesをがんばって弾いてみたり。そこから、ハードロックの人がやるバラードが好きだということに気付いて。古きよきアメリカの匂いっていうか、ジーパンが破れてる感じっていうのかな(笑)。「この感じ、なんだろう?」って思って。そこを追求していったら──。

──アメリカンロックのルーツにたどり着いた?

藤原 そうですね。「そうか、ブルースとかカントリーみたいなものがこういう人たちの根底にはあるんだ」って、なんとなく匂いで感じたというか。あと当時の僕はメロコアやブリットポップも大好きだったし、それを掘り下げていく作業みたいなものも楽しいからやっていたんです。「ネオアコというものがあるんだ」「ポール・ウェラーって実はこういう人だったんだ」みたいな。その中で一番大きかったのがザック・ワイルドが組んだPride & Gloryっていうバンドですね。彼が「自分のやりたいのはサザンロックっていうジャンルだ」と明言してくれたので、「ああ、俺が好きなのはサザンロックだったんだ」って思って、そこを掘っていったんです。Lynyrd Skynyrdとか、The Mamas & the Papasとか、The Allman Brothers Bandとか。

──ザック・ワイルドの影響が大きかったんだ。

藤原 ザック・ワイルドも僕のヒーローなんです。僕のギターのスタイルが今のスタイルに落ち着いているのも、彼のおかげかもしれないですね。そこからカントリー、ブルーグラス、アイリッシュと、いろんな音楽と出会っていった感じでした。

いろんな音楽がちゃんとつながってきたのは28くらいの頃

──もうその頃には4人でバンドをやってたわけですよね。みんな、どんな感じで音楽を共有していたんですか?

藤原 みんなで聴いてたのは、やっぱりGreen Dayとか、NirvanaとかThe Stone Rosesとかだったかな。

 当時はみんなお金がないんで、CDを貸し借りしてたんですよね。1人買えば全員聴くようになる。でも4人同時に盛り上がるものもあれば、そうじゃないものもあって。だから、当時も藤原くんが「こういうのあるんだぜ」みたいにアイリッシュを聴かせてくれたと思うんですけど、当時の俺は「ふーん」みたいな感じだった(笑)。

直井 でもThe Poguesとかはみんなビンビン来てたよね。

──直井さんはどんな感じでした?

直井由文(B)

直井 僕、個人的には、音楽の情報がまったくなくて。聴いてたのはアニソンだけだったんです。もうアニメが大好きで、学校から帰ったら速攻で観てましたから、中学まではアニソンしか聴いてないですね。うちは居酒屋だったから、2階の僕の部屋でずっと演歌のベースラインは聴こえてたんですけど(笑)。で、みんなと会って、升くんとか藤くんに「これがいいぜ」って教えてもらって、いろいろ聴くようになって。やっぱり、どっぷりハマったのはGreen Dayでしたね。最初に観たライブもGreen Dayだったし。そこから一気にパンクにハマって、The Pixiesとかシューゲイザーのほうに行って、みたいな感じでした。

藤原 10代後半の頃にはアイリッシュトラッドとかブルーグラスのコンピレーションとかを1人で買ったりしてたんですけど、そうやって1人で開拓してたものを改めてみんなに「ぜひ聴いてよ」って渡したのはアルバムで言うと「orbital period」の頃、20代後半くらいだったかもしれないですね。「ジャクソン・ブラウンっていう人がいてね」とか。

──そうなんですね。

 だから、不思議な感じというか。たぶん知ってはいたけれど、僕らの中でいろんな音楽がちゃんとつながってきたのは28くらいの頃だったかも。

藤原 キャリアもあったし、自分たちの楽曲の中でもやれることが増えてきたし。ニュアンスとしても、そのタイミングで聴いてもらいたいって自然に思えたんだろうと思います。

ニューアルバム「Butterflies」/ 2016年2月10日発売 / TOY'S FACTORY
初回限定盤
初回限定盤A [CD+DVD] / 4860円 / TFCC-86550
初回限定盤B [CD+Blu-ray] / 5940円 / TFCC-86551
通常盤
通常盤 [CD] / 3240円 / TFCC-86552
CD収録曲
  1. GO
  2. Hello,world!
  3. Butterfly
  4. 流星群
  5. 宝石になった日
  6. コロニー
  7. パレード
  8. 大我慢大会
  9. 孤独の合唱
  10. You were here
  11. ファイター
初回限定盤A付属DVD・初回限定盤B付属Blu-ray
-Music Video-
  1. You were here
  2. ファイター
  3. パレード
  4. Hello,world!
  5. コロニー
-Special Live 2015 at Yokohama Arena-
  1. パレード
  2. Hello,world!
  3. ハンマーソングと痛みの塔
  4. 才悩人応援歌
  5. morning glow
  6. ファイター
  7. 太陽
  8. ギルド
  9. ハルジオン
  10. embrace
  11. 虹を待つ人
  12. 乗車権
  13. supernova
  14. ガラスのブルース
  15. ray
  1. EN1. コロニー
  2. EN2. メーデー
BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集めた。その後順調にキャリアを重ねていき、2014年には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、初の東京ドーム公演などでも話題を集める。2014年12月に全国ツアー「WILLPOLIS 2014」を追ったドキュメンタリーとオープニングムービーで構成された映画「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」が全国の劇場で公開され、2015年2月にはDVD / Blu-ray化された。同年4月にはテレビアニメ「血界戦線」の主題歌「Hello,world!」と映画「寄生獣 完結編」の主題歌「コロニー」を収録した両A面シングルをリリース。結成20周年となる2016年2月、約2年ぶりのフルアルバム「Butterflies」を発表し、地元・千葉県の幕張メッセにて「BUMP OF CHICKEN結成20周年記念Special Live『20』」を開催。4月からは「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」を行う。